[PB62] 講義中の問題行動によって青年の発達はどのように変わるのか?
短期大学部1年次から2年次にかけての2年間にわたる縦断調査による検討
Keywords:青年、発達、問題行動
問題と目的
私語をすることが行為者である学生自身にとって,どのような影響を及ぼすのかを明らかにする研究が必要である。授業中の私語という問題行動を続けることが,その学生の発達に,どのような影響を及ぼすのかを明らかにする研究である。大学生活をどう過ごすのか,その過ごし方は,青年の発達に影響を及ぼす(都筑ら,2016)。学生生活を通じて,どのような態度で授業に望んでいるのかによって,大学生の発達は異なってくると推察される。本研究では,大学生活を通じて講義中の私語の経験頻度が高い学生や経験頻度の低い学生を比較しながら,大学生活への適応感,青年期の発達,将来の進路に対する意識がどのように変化していくのかを明らかにする。
方 法
1.調査協力者と手続き
短期大学部保育科に属する学生を対象にし,授業時間内に調査を実施した。保育者養成系の短期大学部の学生を対象とした理由は2つある。1つ目は,過密な時間割で構成された授業をこなす必要があり,学生が大学の授業に対してどんな姿勢で臨むのかが重要だからである。2つ目は,大学で学んでいることが将来の進路と直結しているため,大学の授業に臨む姿勢の違いによって,卒業後の進路に対する意識も異なると考えられる。1年次と2年次に2回にわたる縦断調査を実施した。1回目の調査は2013年9月であった。2回目の調査は2015年1月であった。2回の調査に回答があり,1回目と2回目の回答データを紐付けすることが可能で,回答に不備のあった調査票を除外すると217名中137名(男性5名,女性132名)が分析対象となった。
2.調査内容
大学生の講義中の私語に関する項目(出口・吉田,2005)計7項目を用いた。大学生の学校生活に対する充実感に関する項目(奥田・川上・坂田・佐久田,2010)計12項目を用いた。青年の心理的自立に関する項目(山田,2011)計15項目を用いた。大学生用ハーディネス尺度(森・東條・鈴木,2005)計9項目を用いた。青年期の目標意識尺度(都筑,1999)計20項目を用いた。保育者を志望する動機に関する項目(長谷部,2006)計15項目を用いた。保育者効力感に関する項目(三木・桜井,1998)計4項目を用いた。
結果と考察
分析1 出口・吉田(2005)の大学生の授業中の私語経験に関する2因子をもとに,私語タイプを抽出した。1年次と2年次の2回にわたる調査から得られた授業中の私語得点に対して,クラスター分析(ward法)を行った。4つの群が抽出された。4つの群ごとに,講義内容に関係のある私語得点と講義内容に関係のない私語得点のzスコアを図示した(Figure1)。
分析2 1年次から2年次へと大学生活を過ごす過程における私語タイプによって,大学生活への適応感や青年期の発達,将来の進路に対する意識にどのような違いが見られるのかを検討した。具体的には,年次(2)×私語タイプ(4)を独立変数とし,大学生活充実感,心理的自立,ハーディネス,目標意識,保育者志望動機,保育者効力感を従属変数とし,2要因の分散分析を行った。
心理的自立における情緒的コントロールとハーディネス におけるチャレンジにおいて交互作用が見られた。交互作用が見られた結果をTable1,Table2に示した。1・2年次私語継続群は,情緒的コントロールが低下することが明らかとなった。また,1・2年次私語継続群,2年次私語上昇群,講義内容に関する私語低群は,1年次から2年次にかけてチャレンジが低下することが明らかとなった。私語の経験頻度が上がることで,青年期の心理的自立やハーディネス などの発達が抑制される可能性が示唆された。講義内容の私語低群は,友人関係の満足が低い群でもあった。講義内容に関する私語が顕著に低い場合は,同年代との対人関係や環境の変化に柔軟に対応する部分に困難さを抱えている可能性が示唆された。
私語をすることが行為者である学生自身にとって,どのような影響を及ぼすのかを明らかにする研究が必要である。授業中の私語という問題行動を続けることが,その学生の発達に,どのような影響を及ぼすのかを明らかにする研究である。大学生活をどう過ごすのか,その過ごし方は,青年の発達に影響を及ぼす(都筑ら,2016)。学生生活を通じて,どのような態度で授業に望んでいるのかによって,大学生の発達は異なってくると推察される。本研究では,大学生活を通じて講義中の私語の経験頻度が高い学生や経験頻度の低い学生を比較しながら,大学生活への適応感,青年期の発達,将来の進路に対する意識がどのように変化していくのかを明らかにする。
方 法
1.調査協力者と手続き
短期大学部保育科に属する学生を対象にし,授業時間内に調査を実施した。保育者養成系の短期大学部の学生を対象とした理由は2つある。1つ目は,過密な時間割で構成された授業をこなす必要があり,学生が大学の授業に対してどんな姿勢で臨むのかが重要だからである。2つ目は,大学で学んでいることが将来の進路と直結しているため,大学の授業に臨む姿勢の違いによって,卒業後の進路に対する意識も異なると考えられる。1年次と2年次に2回にわたる縦断調査を実施した。1回目の調査は2013年9月であった。2回目の調査は2015年1月であった。2回の調査に回答があり,1回目と2回目の回答データを紐付けすることが可能で,回答に不備のあった調査票を除外すると217名中137名(男性5名,女性132名)が分析対象となった。
2.調査内容
大学生の講義中の私語に関する項目(出口・吉田,2005)計7項目を用いた。大学生の学校生活に対する充実感に関する項目(奥田・川上・坂田・佐久田,2010)計12項目を用いた。青年の心理的自立に関する項目(山田,2011)計15項目を用いた。大学生用ハーディネス尺度(森・東條・鈴木,2005)計9項目を用いた。青年期の目標意識尺度(都筑,1999)計20項目を用いた。保育者を志望する動機に関する項目(長谷部,2006)計15項目を用いた。保育者効力感に関する項目(三木・桜井,1998)計4項目を用いた。
結果と考察
分析1 出口・吉田(2005)の大学生の授業中の私語経験に関する2因子をもとに,私語タイプを抽出した。1年次と2年次の2回にわたる調査から得られた授業中の私語得点に対して,クラスター分析(ward法)を行った。4つの群が抽出された。4つの群ごとに,講義内容に関係のある私語得点と講義内容に関係のない私語得点のzスコアを図示した(Figure1)。
分析2 1年次から2年次へと大学生活を過ごす過程における私語タイプによって,大学生活への適応感や青年期の発達,将来の進路に対する意識にどのような違いが見られるのかを検討した。具体的には,年次(2)×私語タイプ(4)を独立変数とし,大学生活充実感,心理的自立,ハーディネス,目標意識,保育者志望動機,保育者効力感を従属変数とし,2要因の分散分析を行った。
心理的自立における情緒的コントロールとハーディネス におけるチャレンジにおいて交互作用が見られた。交互作用が見られた結果をTable1,Table2に示した。1・2年次私語継続群は,情緒的コントロールが低下することが明らかとなった。また,1・2年次私語継続群,2年次私語上昇群,講義内容に関する私語低群は,1年次から2年次にかけてチャレンジが低下することが明らかとなった。私語の経験頻度が上がることで,青年期の心理的自立やハーディネス などの発達が抑制される可能性が示唆された。講義内容の私語低群は,友人関係の満足が低い群でもあった。講義内容に関する私語が顕著に低い場合は,同年代との対人関係や環境の変化に柔軟に対応する部分に困難さを抱えている可能性が示唆された。