[PB63] 小学校高学年「総合的な学習の時間」におけるカリキュラム開発プロセス
授業者と研究者の協働による単元計画の開発に注目して
キーワード:カリキュラム開発、総合的な学習の時間、アクションリサーチ
問題と目的
新学習指導要領にみられるように,現在,学校教育の一体的な教育課程改革が進んでいる。本研究の対象である「総合的な学習の時間(以下「総合学習」)」の教科のねらいは,横断的・総合的な学習を通して,自己の在り方・生き方を考えながら,課題を発見し解決するための資質・能力を育成することである。これまでの総合学習の実施・展開における課題として,総合学習と各教科等との関連の明示に関する学校間の格差,総合学習の「課題設定」「情報収集」「整理・分析」「まとめ・発表」の学習プロセスで「整理・分析」「まとめ・発表」への取組が十分でない点があげられる(中央教育審議会,2018)。
これらの課題に対して,学校全体で育成すべき資質・能力に対応したカリキュラムマネジメントの発揮が期待されているが,学校全体を包括的に点検・改善することは容易ではない。
以上の問題意識から,本研究では,小学校5,6年生の総合学習に限定し,1年間の体系的な学習設計を可視化することを研究課題とした。授業者と研究者の協働で検討することを通じて,総合学習の単元間の関連性や子どもの学習成果をどのようにして把握するかという観点から,本研究では,前述した4つの学習プロセスの調和を意識した設計を検討することが目的である。
方 法
対象:小学校5,6年生の総合学習の年間時数(70時間)のうち30時間の単元設計を対象とした。
期間:設計期間は2018年11月~12月,実践期間は2018年12月~2019年2月であった。
手続き:授業者と研究者でこれまでの学習履歴を踏まえて,アクションリサーチ(McIntyre ,2008)の立場から,探究課題の同定,学習成果把握,まとめの手法に関して協働的に協議した。
結果と考察
1 単元の概要
単元は「未来開墾―A(地域名)らしくを美味しく―」であり,目指す子どもの姿は,「目的を達成する道筋を描きながら活動の価値を見出す子ども」,そのねらいは,地域の課題や価値を子どもに問うことを通じて「自己の生き方」を考えることであった。学習の目的は「『Aの未来を食で元気にする』ために,どんなことができるか」であった。
2 単元開発プロセスと課題
単元開発は以下の手順で行った。まず,単元で活用できる時数に対して,学習の目的を達成するために子どもが身につけるべき力を抽出した。その結果,「多面的に考える力」「(自信をもって)表現する力」の2つが挙げられた。
次に学習目標と身につけるべき力を踏まえて,それを実現するための方法を検討した。具体的には,能動的な学習のための学習環境(REALs)の観点(Grabinger & Dunlap,1995)から課題意識を高めるゲストティーチャー,子どもの体験が伴う場の設定に関するものであった。そのうえで,単元の全体構成の流れに対して「課題設定」「情報収集」「整理・分析」「まとめ」の対応を整理し,それぞれの取組みで子どもに何ができるようになるのかを検討し,学習成果物のイメージを共有した。
最後に,学校外協力者への調整,子どもの思考や取組みに必要な時数を実現可能性の観点から再検討し,時数の調整を行った。
以上を踏まえ,子どもの学習履歴を踏まえた学習活動を設計に組み込むことで,探究課題の認識が促され,体験的活動の意義づけや価値づけの助けになることが示唆された。
一方で,子どもの体験的活動を組み込む単元開発は授業者への負担増の要因となる可能性もあることから,総合学習の単元開発支援のシステム化は課題であるといえる。
新学習指導要領にみられるように,現在,学校教育の一体的な教育課程改革が進んでいる。本研究の対象である「総合的な学習の時間(以下「総合学習」)」の教科のねらいは,横断的・総合的な学習を通して,自己の在り方・生き方を考えながら,課題を発見し解決するための資質・能力を育成することである。これまでの総合学習の実施・展開における課題として,総合学習と各教科等との関連の明示に関する学校間の格差,総合学習の「課題設定」「情報収集」「整理・分析」「まとめ・発表」の学習プロセスで「整理・分析」「まとめ・発表」への取組が十分でない点があげられる(中央教育審議会,2018)。
これらの課題に対して,学校全体で育成すべき資質・能力に対応したカリキュラムマネジメントの発揮が期待されているが,学校全体を包括的に点検・改善することは容易ではない。
以上の問題意識から,本研究では,小学校5,6年生の総合学習に限定し,1年間の体系的な学習設計を可視化することを研究課題とした。授業者と研究者の協働で検討することを通じて,総合学習の単元間の関連性や子どもの学習成果をどのようにして把握するかという観点から,本研究では,前述した4つの学習プロセスの調和を意識した設計を検討することが目的である。
方 法
対象:小学校5,6年生の総合学習の年間時数(70時間)のうち30時間の単元設計を対象とした。
期間:設計期間は2018年11月~12月,実践期間は2018年12月~2019年2月であった。
手続き:授業者と研究者でこれまでの学習履歴を踏まえて,アクションリサーチ(McIntyre ,2008)の立場から,探究課題の同定,学習成果把握,まとめの手法に関して協働的に協議した。
結果と考察
1 単元の概要
単元は「未来開墾―A(地域名)らしくを美味しく―」であり,目指す子どもの姿は,「目的を達成する道筋を描きながら活動の価値を見出す子ども」,そのねらいは,地域の課題や価値を子どもに問うことを通じて「自己の生き方」を考えることであった。学習の目的は「『Aの未来を食で元気にする』ために,どんなことができるか」であった。
2 単元開発プロセスと課題
単元開発は以下の手順で行った。まず,単元で活用できる時数に対して,学習の目的を達成するために子どもが身につけるべき力を抽出した。その結果,「多面的に考える力」「(自信をもって)表現する力」の2つが挙げられた。
次に学習目標と身につけるべき力を踏まえて,それを実現するための方法を検討した。具体的には,能動的な学習のための学習環境(REALs)の観点(Grabinger & Dunlap,1995)から課題意識を高めるゲストティーチャー,子どもの体験が伴う場の設定に関するものであった。そのうえで,単元の全体構成の流れに対して「課題設定」「情報収集」「整理・分析」「まとめ」の対応を整理し,それぞれの取組みで子どもに何ができるようになるのかを検討し,学習成果物のイメージを共有した。
最後に,学校外協力者への調整,子どもの思考や取組みに必要な時数を実現可能性の観点から再検討し,時数の調整を行った。
以上を踏まえ,子どもの学習履歴を踏まえた学習活動を設計に組み込むことで,探究課題の認識が促され,体験的活動の意義づけや価値づけの助けになることが示唆された。
一方で,子どもの体験的活動を組み込む単元開発は授業者への負担増の要因となる可能性もあることから,総合学習の単元開発支援のシステム化は課題であるといえる。