日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PC] ポスター発表 PC(01-66)

2019年9月14日(土) 15:30 〜 17:30 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号15:30~16:30
偶数番号16:30~17:30

[PC03] 3因子で捉える教師が評定する生徒の協調性

小学生と中学生,高校生の比較

登張真稲1, 名尾典子2, 首藤敏元3, 大山智子4 (1.文教大学, 2.文教大学, 3.埼玉大学, 4.帝京科学大学)

キーワード:協調性、教師評定、3因子

問  題
 登張他(2014,名尾他,2016)は,教師が生徒の協調性を評定する項目を含む質問紙を作成し,小中高等の教師対象に調査を実施した。親が自分の子どもの協調性を評定する質問紙も作成され,それを用いた調査結果から協力志向,協調的問題解決,調和・同調の3因子で児童の協調性を捉える親評定・児童用多面的協調性尺度が作成された(登張他,2018)。また,登張他(2019)は,大学生と高校生を対象に,協調的傾向等の自己評定を求めた複数の調査の結果をもとに,協力志向,協調的問題解決,調和志向の3因子で青年の協調性を捉える多面的協調性尺度を作成した。
 本研究では,教師対象調査のデータを分析し,教師が捉える生徒の協調性も,同様の3因子で捉えることができるかどうか検討する。さらに,その結果に基づいた尺度を作成し,小学生と中学生と高校生の得点を比較する。
方  法
協力者:小学校教師61,中学教師21,高校教師14,その他7,計103名(男性52,女性51名)。
測度:教師が生徒の協調性を評定する17項目。「全くいない」~「大勢いる」の5件法。
調査時期:2013年7-8月。
結  果
 教師が生徒の協調性を評定した17項目について,因子数を3に指定して因子分析(最尤法,プロマックス回転)を行ったところ,青年用尺度や親評定・児童用尺度と同様の3因子を抽出することができた。しかし,一部の項目は,負荷量が最も高い因子が親評定・児童用尺度や青年用尺度と異なっていた。また,類似した内容の項目があった。そこで,それらの項目を省いた12項目で分析しなおした(Table 1)。
 この結果をもとに,4項目ずつの教師評定・協力志向尺度(α=.82)と協調的問題解決尺度(α=.80),調和・同調尺度(α=.73)を作成した。調和・同調尺度は,親評定・児童用尺度同様,調和志向尺度に含まれる項目と同調・追従を表す項目の両方を含んでいる。3尺度の得点を用いて,学校段階を要因とする一元配置分散分析を行った(Table 2)。それによると,学校段階の主効果は,協力志向尺度では有意でなかったが,協調的問題解決尺度と調和・同調尺度では有意で,どちらも,小学生が中学生・高校生より低かった(ps<.01)。
考  察
 教師が捉える生徒の協調性も,親評定・児童用尺度や青年用尺度同様,3因子で捉えうることが明らかとなったが,データによって,最も負荷量が高い因子が異なる項目があった。親や青年自身と教師では,一部の項目の持つ意味合いが若干異なるのかもしれない。本研究は,協力者の数も少なく,小学校教師と中学校教師と高校教師が同じ基準で生徒の協調性を評定しているかどうかも明らかではないが,協調的問題解決と調和・同調傾向は,中学生以降高くなることが示唆された。