[PC11] 小学1年生の小学校の満足度と幼児期の小学校への期待
兄弟の関連,園舎環境から
キーワード:幼児、進学、期待
問題と目的
これまでの研究から,ほとんどの年長幼児が小学校への進学を楽しみにしていることが示されている(大島,2016)。さらに大島(2018)では,幼稚園修了直近の年長幼児の小学校への期待が非常に高いこと,さらに小学生の兄弟がいない幼児の方がいる幼児に比べて小学校への期待が高いことが示唆され,小学校の様子がわからない方が小学校への期待が高くなる可能性が示された。本研究では小学校について知ること,また小学校について知っていることが子どもの小学生活の満足度,および小学校生活への期待に影響するかを2つの調査から検討する。
調査1
大島(2018)において,小学校への進学期待の調査協力児の小学校生活の満足度を測定することで,小学校について知った中での小学校の満足度,小学校に入って驚いたことについての兄弟の有無との関連を検討する。
方 法
調査時期と協力児: 2018年7月小学1年生56名(男児26名,女児30名)
調査内容:個別の面接調査調から小学校の楽しさ(0-3点),小学校に入って驚いたことの有無についての質問を行った。参加にあたり本人の同意を得,回答したくない質問には回答しなくてもいいことを確認した。
結果と考察
小学校の楽しさ:56名中52名(92.9%)がとても楽しい,4名(7.1%)が少し楽しいと回答しており,全ての調査協力児が小学校の生活を楽しんでいた(M=3.93,SD=.26)。また,幼稚園時の小学校への期待の高さと,小学校の満足度には有意な関連は見られなかった(r=.01,n.s.)小学生の兄弟の有無による楽しさの得点に差は示されなかった(有:M=3.91,SD=.28,無:M=3.95,SD=.22;t(54)=.53, n.s.)。幼児期の小学校への期待では兄弟の有無により期待の大きさに差が見られたが(大島2018),小学校生活ではその満足度に兄弟の関連は見られず,生活していく中で事前に兄弟による情報があったかどうかは影響しなくなることが示された。
小学校で驚いたことの有無:驚いたことの有無には小学生の兄弟の有無で回答に偏りがあり(χ2(1)=4.40, p<.05,Table1),小学生の兄弟がいない児童の方が,小学校で驚くことがあったと回答した。入学直後については兄弟の有無による差があると言えるだろう。
調査2
大島(2018)で調査対象とした次の学年の年長児に対し小学校に対する期待について質問した。第2調査の対象となる幼児は幼稚園園舎建替のため1年間,進学先となる小学校の中の仮園舎で園生活を送っており,昨年度の対象児よりも小学校について理解が深いことが予測された。
方 法
調査時期と協力児:A幼稚園の2018年,2019年の年長児(2018年については大島(2018)と同一データ),2018年56名,2019年55名,共に2月下旬。
調査内容:個別面接調を行ない,小学校に対する期待(1-4 点)について尋ねた。参加にあたり本人の同意を得,回答したくない質問には回答しなくてもいいことを確認した。
結果と考察
小学校を楽しみにしているかの期待得点についてTerm1,Term2の時期,小学生の兄弟の有無を独立変数とする2要因の分散分析を行なった(Table2)。その結果,有意な主効果は見られず,時期×小学生の兄弟の有無に有意な互作用が見られる傾向が示された(F(1,107)=2.97,p<.10)。単純主効果の検定を行ったところ,Term1では示されていた小学氏の兄弟の有無による期待得点の差が,Term2では見られなくなっていた(p<.05)。また,Term1とTerm2では兄弟なしの幼児の期待の得点に差のある傾向が見られた(p<.10)。Term1では小学生の兄弟がいる幼児よりも小学生の兄弟がいない幼児の方が小学校に対する期待が高く,兄弟がいない幼児の期待得点がTerm1よりもTerm2の方が低かったことから,小学校の中で幼稚園生活を送ることで,小学生の兄弟がいない幼児も小学校の様子を理解することで期待が過剰に高くはなくなったことが示された。
まとめ
調査1調査2において,仮園舎で生活していた園児に小学校へのより幼児の進学に対する期待が非常に高い理由の一つとして小学校の様子を知らないことが挙げられることが示唆された。
これまでの研究から,ほとんどの年長幼児が小学校への進学を楽しみにしていることが示されている(大島,2016)。さらに大島(2018)では,幼稚園修了直近の年長幼児の小学校への期待が非常に高いこと,さらに小学生の兄弟がいない幼児の方がいる幼児に比べて小学校への期待が高いことが示唆され,小学校の様子がわからない方が小学校への期待が高くなる可能性が示された。本研究では小学校について知ること,また小学校について知っていることが子どもの小学生活の満足度,および小学校生活への期待に影響するかを2つの調査から検討する。
調査1
大島(2018)において,小学校への進学期待の調査協力児の小学校生活の満足度を測定することで,小学校について知った中での小学校の満足度,小学校に入って驚いたことについての兄弟の有無との関連を検討する。
方 法
調査時期と協力児: 2018年7月小学1年生56名(男児26名,女児30名)
調査内容:個別の面接調査調から小学校の楽しさ(0-3点),小学校に入って驚いたことの有無についての質問を行った。参加にあたり本人の同意を得,回答したくない質問には回答しなくてもいいことを確認した。
結果と考察
小学校の楽しさ:56名中52名(92.9%)がとても楽しい,4名(7.1%)が少し楽しいと回答しており,全ての調査協力児が小学校の生活を楽しんでいた(M=3.93,SD=.26)。また,幼稚園時の小学校への期待の高さと,小学校の満足度には有意な関連は見られなかった(r=.01,n.s.)小学生の兄弟の有無による楽しさの得点に差は示されなかった(有:M=3.91,SD=.28,無:M=3.95,SD=.22;t(54)=.53, n.s.)。幼児期の小学校への期待では兄弟の有無により期待の大きさに差が見られたが(大島2018),小学校生活ではその満足度に兄弟の関連は見られず,生活していく中で事前に兄弟による情報があったかどうかは影響しなくなることが示された。
小学校で驚いたことの有無:驚いたことの有無には小学生の兄弟の有無で回答に偏りがあり(χ2(1)=4.40, p<.05,Table1),小学生の兄弟がいない児童の方が,小学校で驚くことがあったと回答した。入学直後については兄弟の有無による差があると言えるだろう。
調査2
大島(2018)で調査対象とした次の学年の年長児に対し小学校に対する期待について質問した。第2調査の対象となる幼児は幼稚園園舎建替のため1年間,進学先となる小学校の中の仮園舎で園生活を送っており,昨年度の対象児よりも小学校について理解が深いことが予測された。
方 法
調査時期と協力児:A幼稚園の2018年,2019年の年長児(2018年については大島(2018)と同一データ),2018年56名,2019年55名,共に2月下旬。
調査内容:個別面接調を行ない,小学校に対する期待(1-4 点)について尋ねた。参加にあたり本人の同意を得,回答したくない質問には回答しなくてもいいことを確認した。
結果と考察
小学校を楽しみにしているかの期待得点についてTerm1,Term2の時期,小学生の兄弟の有無を独立変数とする2要因の分散分析を行なった(Table2)。その結果,有意な主効果は見られず,時期×小学生の兄弟の有無に有意な互作用が見られる傾向が示された(F(1,107)=2.97,p<.10)。単純主効果の検定を行ったところ,Term1では示されていた小学氏の兄弟の有無による期待得点の差が,Term2では見られなくなっていた(p<.05)。また,Term1とTerm2では兄弟なしの幼児の期待の得点に差のある傾向が見られた(p<.10)。Term1では小学生の兄弟がいる幼児よりも小学生の兄弟がいない幼児の方が小学校に対する期待が高く,兄弟がいない幼児の期待得点がTerm1よりもTerm2の方が低かったことから,小学校の中で幼稚園生活を送ることで,小学生の兄弟がいない幼児も小学校の様子を理解することで期待が過剰に高くはなくなったことが示された。
まとめ
調査1調査2において,仮園舎で生活していた園児に小学校へのより幼児の進学に対する期待が非常に高い理由の一つとして小学校の様子を知らないことが挙げられることが示唆された。