[PC16] 児童における「叱られること」への認知に関する検討
「教師との接触度」に着目して
Keywords:叱られること、場面想定法、小学生
問題と目的
教師の『叱ること』,子どもの『叱られること』については,(1)子どもにおける『叱られること』への認知,(2)『叱られること』への認知に影響する要因,(3)『叱り言葉』と子どもの認知との関連性,(4)教師における『叱ること』への認知など,叱り手である教師や叱られ手である子どもの認知が検討されている(竹内,1995)。
学校という場に目を転じてみれば,さまざまな教師に対して,児童はそれぞれ関係を築いている。では,それらの関係の違いは,『叱られること』の児童の受けとめに影響するのだろうか。本研究では「教師との関係」を「児童が教師と接触する頻度(以下,接触度)」とし,接触度の違いが,「叱られること」に対する児童の受けとめに影響するのかどうかを調べることを目的とする。具体的には,叱り手が[担任の教師(接触度高)][専科の教師(接触度中)][他学年の教師(接触度低)]の場面を設定し,各場面での児童の言語反応と認知(受容度・反省度)を検討する。
方 法
対象者 中国地方の公立小学校5年生3学級88名(男子49名,女子39名),6年生3学級73名(男子43名,女子30名)。
手続き 2018年11月中旬に,朝学習の時間などを利用して,クラス単位で実施された。
質問紙の構成 質問紙は(1)フェイスシート,(2)練習問題,(3)問題1,(4)問題2から構成され,全部で7ページであった。(3)と(4)では,ある小学校で[教師]によって児童が叱られるという場面が呈示された。このとき,[教師]と児童との接触度を対象者が理解しているかどうかがまず確認された。その後,場面に登場する児童が対象者自身だとした上で,「叱り手の叱り言葉に対する受けとめ(外言反応・内言反応)(自由記述)」,「叱り言葉への受容度(5件法)」,「『叱られたこと』への反省感情の度合い(5件法)」について考えるよう教示がなされた。
結 果
言語反応 [教師]による叱り言葉に対し「どのように答えるか(外言反応)」と「心のなかでどのように感じるか(内言反応)として得られた記述全319件について,遠藤ら(1989)のカテゴリーを利用して,①受諾反応,②主張反応,③反発反応,④受け流し反応,⑤その他に分類した。χ2検定の結果,「叱られたこと」に対する言語反応の分布において,関係の違いによる影響は見られなかった(外言反応:χ2(6)=4.93, n.s. ,内言反応:χ2(8)=6.53, n.s.)。
受容度 叱り言葉に対する受容度(どのくらい受け入れることができるか)をTable 1に示す。この受容度を従属変数として,関係の違い(接触度:高/中/低)を要因とする分散分析を行ったところ,有意な差が認められた(F(2)=6.17, p<.01)。下位検定の結果,[担任の教師(接触度高)]の場合,[他学年の教師(接触度低)]よりも受容度が高いことが示された(p<.01)。
反省度 『叱られたこと』への反省感情の度合い(自分が悪かったと思う程度)をTable 1に示す。この反省感情の度合いを従属変数として,関係の違い(接触度:高/中/低)を要因とする分散分析を行ったところ,有意な差が認められた(F(2)=9.30, p<.01)。下位検定の結果,[担任の教師(接触度高)]及び[専科の教師(接触度中)]の場合,[他学年の教師(接触度低)]よりも反省感情の度合いが高いことが示された(いずれもp<.01)。その一方で,[担任の教師]と[専科の教師]の間では有意な差が見られなかった。
考 察
児童と教師の接触度の違いは,児童における『叱られること』への言語反応には影響しないが,受容度や反省度に影響することが明らかとなった。特に,接触度の低い[他学年の教師]は,児童の受容度や反省感情を引き出しにくいのに対し,[専科の教師]による『叱り』は,[担任の教師]と同程度の受容度や反省度で受けとめられる可能性が示された。[担任の教師]と[専科の教師]に共通するのは「授業で児童と関わる」という点である。これより,「叱る」「叱られる」といった人間関係を児童との間で結ぶ上で,「授業で関わること」は重要な点であると言える。
教師の『叱ること』,子どもの『叱られること』については,(1)子どもにおける『叱られること』への認知,(2)『叱られること』への認知に影響する要因,(3)『叱り言葉』と子どもの認知との関連性,(4)教師における『叱ること』への認知など,叱り手である教師や叱られ手である子どもの認知が検討されている(竹内,1995)。
学校という場に目を転じてみれば,さまざまな教師に対して,児童はそれぞれ関係を築いている。では,それらの関係の違いは,『叱られること』の児童の受けとめに影響するのだろうか。本研究では「教師との関係」を「児童が教師と接触する頻度(以下,接触度)」とし,接触度の違いが,「叱られること」に対する児童の受けとめに影響するのかどうかを調べることを目的とする。具体的には,叱り手が[担任の教師(接触度高)][専科の教師(接触度中)][他学年の教師(接触度低)]の場面を設定し,各場面での児童の言語反応と認知(受容度・反省度)を検討する。
方 法
対象者 中国地方の公立小学校5年生3学級88名(男子49名,女子39名),6年生3学級73名(男子43名,女子30名)。
手続き 2018年11月中旬に,朝学習の時間などを利用して,クラス単位で実施された。
質問紙の構成 質問紙は(1)フェイスシート,(2)練習問題,(3)問題1,(4)問題2から構成され,全部で7ページであった。(3)と(4)では,ある小学校で[教師]によって児童が叱られるという場面が呈示された。このとき,[教師]と児童との接触度を対象者が理解しているかどうかがまず確認された。その後,場面に登場する児童が対象者自身だとした上で,「叱り手の叱り言葉に対する受けとめ(外言反応・内言反応)(自由記述)」,「叱り言葉への受容度(5件法)」,「『叱られたこと』への反省感情の度合い(5件法)」について考えるよう教示がなされた。
結 果
言語反応 [教師]による叱り言葉に対し「どのように答えるか(外言反応)」と「心のなかでどのように感じるか(内言反応)として得られた記述全319件について,遠藤ら(1989)のカテゴリーを利用して,①受諾反応,②主張反応,③反発反応,④受け流し反応,⑤その他に分類した。χ2検定の結果,「叱られたこと」に対する言語反応の分布において,関係の違いによる影響は見られなかった(外言反応:χ2(6)=4.93, n.s. ,内言反応:χ2(8)=6.53, n.s.)。
受容度 叱り言葉に対する受容度(どのくらい受け入れることができるか)をTable 1に示す。この受容度を従属変数として,関係の違い(接触度:高/中/低)を要因とする分散分析を行ったところ,有意な差が認められた(F(2)=6.17, p<.01)。下位検定の結果,[担任の教師(接触度高)]の場合,[他学年の教師(接触度低)]よりも受容度が高いことが示された(p<.01)。
反省度 『叱られたこと』への反省感情の度合い(自分が悪かったと思う程度)をTable 1に示す。この反省感情の度合いを従属変数として,関係の違い(接触度:高/中/低)を要因とする分散分析を行ったところ,有意な差が認められた(F(2)=9.30, p<.01)。下位検定の結果,[担任の教師(接触度高)]及び[専科の教師(接触度中)]の場合,[他学年の教師(接触度低)]よりも反省感情の度合いが高いことが示された(いずれもp<.01)。その一方で,[担任の教師]と[専科の教師]の間では有意な差が見られなかった。
考 察
児童と教師の接触度の違いは,児童における『叱られること』への言語反応には影響しないが,受容度や反省度に影響することが明らかとなった。特に,接触度の低い[他学年の教師]は,児童の受容度や反省感情を引き出しにくいのに対し,[専科の教師]による『叱り』は,[担任の教師]と同程度の受容度や反省度で受けとめられる可能性が示された。[担任の教師]と[専科の教師]に共通するのは「授業で児童と関わる」という点である。これより,「叱る」「叱られる」といった人間関係を児童との間で結ぶ上で,「授業で関わること」は重要な点であると言える。