[PC17] メタ認知能力を育成する試み(7)
メタ認知評価基準に基づく教師による評価からの検討
Keywords:メタ認知、算数文章題、評価
著者らは,メタ認知の存在を子どもに直接教授し意識させること(メタ認知の意識づけ)と算数の問題をメタ認知的思考をしながら解く練習(メタ認知訓練)を通して,メタ認知ひいては問題解決能力の育成を目指した実践研究を行ってきた(吉野・島貫, 2012北教大紀要; 2015教心総会など)。これらの研究では,メタ認知得点や問題解決の得点などに介入授業の効果が認められた。メタ認知得点とは,文章題解決後の個別インタビューやワークシートへの回答をメタ認知的観点から得点化したものであるが,メタ認知について十分理解した研究者が得点化を行う必要があり,教育実践で使いにくいという問題があった。そこで,著者ら(吉野・島貫,2017/2018日心)は,現場の教員が簡単に子どものメタ認知を評価できるメタ認知能力評価基準を作成した。本研究は,このメタ認知評価基準で児童のメタ認知を測定した上で,メタ認知の教授と訓練の効果について検討する。
方 法
対象者 公立小学校6学年2クラス71名(実験群35名,統制群36名)。事前調査欠席2名と事後調査欠席1名については,適宜分析から除いた。
材料 1.メタ認知評価基準:「求めなければならないものに線を引いたり抜き出したりしようとする」「問題が解けない時に自分がどこが分からないのか言うことができる」など8項目について,両群の担任教師が自クラスの児童を3段階(0/1/2点)で評価した(16点満点,吉野・島貫(2018)を修正)。2.事前・事後調査課題:「単位量あたり」領域の過剰情報文章題で,問題理解・立式・計算・解答の段階毎に問に答えさせる(問題解決得点:8点満点)。また,各問で「なぜそのように考えたか」を記述させメタ認知得点(15点満点)として得点化した。3.「頭の中の先生」モデルのビデオ:頭の中の先生の使い方を具体的に理解してもらうためのもので,モデル(大学生)が実際の算数文章題を発話思考しながら解く様子のビデオである。4.「頭の中の先生」プリント:算数の問題を解くときに必要なメタ認知的思考の例をまとめたものである。5.参考ノート例:例題のノート記述例4つを作成・配布した。右側に「頭の中の先生」記述欄を設けてあり,問題を読んだ時や立式段階で注意・思考したこと(の例)が記述されている。
介入授業 介入授業は第2著者が行った。1.オリエンテーション授業(1時間):メタ認知(頭の中の先生)の存在を理解させ,意識づけるための授業である。まず,簡単に「頭の中の先生」について説明した上で,「頭の中の先生」モデルのビデオを見せた。次に「頭の中の先生」プリントを配布し,ノートの右側に「頭の中の先生」の言葉を書く欄を設けさせ,例題を解かせた。最後に,例題の参考ノート例を配布し,真似したいと思う点を探すように求めた。2.メタ認知訓練の授業(8時間):例題を解きながら「頭の中の先生欄」にメタ認知的思考を書く訓練を行った。問題の解決中は,授業者がメタ認知的思考を促す机間指導を行った。授業後にノートを回収し,良いノート記述例をクラス便りで紹介した。なお,介入時期に授業で扱う問題や授業時数は両群で同一であった。
結果と考察
担任のメタ認知評価点と事前調査の各得点との相関は,問題解決得点が.31,メタ認知得点が.30であり,先行研究と比べるとやや低かった。事前・事後調査の問題解決得点とメタ認知得点について群×時期の2要因分散分析を行った結果,時期の主効果が問題解決得点で有意(F(1,66)=5.4, p<.05)となり,両群とも事後調査の得点が上昇した(事前8.15→事後8.7点)。メタ認知得点については交互作用が有意(F(1,66)= 9.9, p<.005)となり,統制群の得点に変化がなかったのに対し,実験群では得点が有意に上昇した(Figure左)。担任のメタ認知評価に基づいて実験群を上位・下位群に分け,問題解決得点とメタ認知得点の変化について分析したところ,問題解決得点については上位下位群の主効果が有意傾向であった(F(1,31)=3.2, p<.10)が,事前事後の差は有意ではなかった。メタ認知得点については事前事後の主効果が有意(F(1,31) =7.0, p<.05)であり,上位下位群ともに介入授業の効果が同程度あることがわかった(Figure右)。担任によるメタ認知評価基準とメタ認知訓練の授業がより使いやすくなるよう,さらに改善したい。
方 法
対象者 公立小学校6学年2クラス71名(実験群35名,統制群36名)。事前調査欠席2名と事後調査欠席1名については,適宜分析から除いた。
材料 1.メタ認知評価基準:「求めなければならないものに線を引いたり抜き出したりしようとする」「問題が解けない時に自分がどこが分からないのか言うことができる」など8項目について,両群の担任教師が自クラスの児童を3段階(0/1/2点)で評価した(16点満点,吉野・島貫(2018)を修正)。2.事前・事後調査課題:「単位量あたり」領域の過剰情報文章題で,問題理解・立式・計算・解答の段階毎に問に答えさせる(問題解決得点:8点満点)。また,各問で「なぜそのように考えたか」を記述させメタ認知得点(15点満点)として得点化した。3.「頭の中の先生」モデルのビデオ:頭の中の先生の使い方を具体的に理解してもらうためのもので,モデル(大学生)が実際の算数文章題を発話思考しながら解く様子のビデオである。4.「頭の中の先生」プリント:算数の問題を解くときに必要なメタ認知的思考の例をまとめたものである。5.参考ノート例:例題のノート記述例4つを作成・配布した。右側に「頭の中の先生」記述欄を設けてあり,問題を読んだ時や立式段階で注意・思考したこと(の例)が記述されている。
介入授業 介入授業は第2著者が行った。1.オリエンテーション授業(1時間):メタ認知(頭の中の先生)の存在を理解させ,意識づけるための授業である。まず,簡単に「頭の中の先生」について説明した上で,「頭の中の先生」モデルのビデオを見せた。次に「頭の中の先生」プリントを配布し,ノートの右側に「頭の中の先生」の言葉を書く欄を設けさせ,例題を解かせた。最後に,例題の参考ノート例を配布し,真似したいと思う点を探すように求めた。2.メタ認知訓練の授業(8時間):例題を解きながら「頭の中の先生欄」にメタ認知的思考を書く訓練を行った。問題の解決中は,授業者がメタ認知的思考を促す机間指導を行った。授業後にノートを回収し,良いノート記述例をクラス便りで紹介した。なお,介入時期に授業で扱う問題や授業時数は両群で同一であった。
結果と考察
担任のメタ認知評価点と事前調査の各得点との相関は,問題解決得点が.31,メタ認知得点が.30であり,先行研究と比べるとやや低かった。事前・事後調査の問題解決得点とメタ認知得点について群×時期の2要因分散分析を行った結果,時期の主効果が問題解決得点で有意(F(1,66)=5.4, p<.05)となり,両群とも事後調査の得点が上昇した(事前8.15→事後8.7点)。メタ認知得点については交互作用が有意(F(1,66)= 9.9, p<.005)となり,統制群の得点に変化がなかったのに対し,実験群では得点が有意に上昇した(Figure左)。担任のメタ認知評価に基づいて実験群を上位・下位群に分け,問題解決得点とメタ認知得点の変化について分析したところ,問題解決得点については上位下位群の主効果が有意傾向であった(F(1,31)=3.2, p<.10)が,事前事後の差は有意ではなかった。メタ認知得点については事前事後の主効果が有意(F(1,31) =7.0, p<.05)であり,上位下位群ともに介入授業の効果が同程度あることがわかった(Figure右)。担任によるメタ認知評価基準とメタ認知訓練の授業がより使いやすくなるよう,さらに改善したい。