[PC25] 協同的な学習意識を育むスキルトレーニングの開発(6)
トレーニング終了後のスキル定着の検討
Keywords:協同学習、傾聴スキル、学習観
問題と目的
発表者らは,協同学習の効果を高めるための方法として,特に傾聴のスキルの向上を狙ったスキルトレーニングのプログラムを設計した(解良・中山,2016),また,これまで,このプログラムの導入期間における変化を扱った一連の検討を行い,プログラムがスキルの向上や他者との学習についての認識の肯定的な変化に対して一定の効果をもつことを明らかにしてきた。しかし,スキル教育プログラムの効果を議論する際には,介入前後の変化だけでなく,介入を終えた後にもスキルが定着し,使用され続けているかという点も検討されるべき重要な論点となるだろう。
そこで本発表は,開発したプログラムの実施から一定期間後の介入対象者らのスキルや認識について検討し,また,対照群となる未介入のグループとの比較を行うことから,プログラムについて検討することを目的とした。
方 法
使用した尺度 (1)傾聴スキル 巽他 (2010) から引用したQuestionnaire to Assess the Attitude of Active Listeningから,2下位尺度(傾聴,主張)計6項目を用いた。 (2)協同認識 協同作業認識尺度(長濱ら,2009)のうち,「協同効用」と「個人志向」の2因子15項目を用いた。(3)関係的学習観 Galitti et al.(1999)による Attitudes Toward Thinking and Learning Survey(ATTLS)のConnected Knowing items10項目(「関心」「視点取得」の2下位尺度)を用いた。
測定時期 (1)介入群 協同認識,関係的学習観は介入をしていた授業期間の第1回(10月初),第9回(11月末),第15回(2月初)に加え,事後調査として授業終了から半期経過後(約9ヶ月後)である翌年度10月末の4回測定した。傾聴スキルは毎回の授業で測定していたが,他の変数と同時期のスキル得点を分析対象とした。 (2)対照群 介入群と同一のカリキュラムで学んでいる未介入の集団を対照群として調査対象とした。介入群の事後調査と同時期の10月末に測定した。
結 果
介入群におけるスキルと認識の変化 介入群における事後調査までのスキル平均値および認識(協同認識,学習観)の平均値をTable 1と2に示した。「協同効用」については,介入後の水準が維持されていたが,全体傾向としては,得点は介入期間中には肯定的な変化を示したが,事後調査では,スキルは介入の開始時点以下の水準に,認識は介入開始当初の水準に低下していた。
対照群との比較 授業終了から約9ヶ月後の事後調査における介入群と対照群のスキルと認識の平均値をTable 3に示した。「視点取得」以外のすべての変数で,介入群の方が協同的な学習に対してポジティブに作用するスキルや認識をもっていることが示された。
考 察
介入群における事後評価が介入当初よりも低かったのは,事後調査では日常生活での行動や認識が評価されたのに対し,介入時期の評価対象が注意事項や意図などを説明されながら行う授業に関わっての行動・認識であったことも影響していると考えられる。しかし「協同効用」が維持されたことや,全体的に対照群よりも高い得点であったことは,プログラムが一定の持続的効果をもつことを示唆する結果であると考えられる。
発表者らは,協同学習の効果を高めるための方法として,特に傾聴のスキルの向上を狙ったスキルトレーニングのプログラムを設計した(解良・中山,2016),また,これまで,このプログラムの導入期間における変化を扱った一連の検討を行い,プログラムがスキルの向上や他者との学習についての認識の肯定的な変化に対して一定の効果をもつことを明らかにしてきた。しかし,スキル教育プログラムの効果を議論する際には,介入前後の変化だけでなく,介入を終えた後にもスキルが定着し,使用され続けているかという点も検討されるべき重要な論点となるだろう。
そこで本発表は,開発したプログラムの実施から一定期間後の介入対象者らのスキルや認識について検討し,また,対照群となる未介入のグループとの比較を行うことから,プログラムについて検討することを目的とした。
方 法
使用した尺度 (1)傾聴スキル 巽他 (2010) から引用したQuestionnaire to Assess the Attitude of Active Listeningから,2下位尺度(傾聴,主張)計6項目を用いた。 (2)協同認識 協同作業認識尺度(長濱ら,2009)のうち,「協同効用」と「個人志向」の2因子15項目を用いた。(3)関係的学習観 Galitti et al.(1999)による Attitudes Toward Thinking and Learning Survey(ATTLS)のConnected Knowing items10項目(「関心」「視点取得」の2下位尺度)を用いた。
測定時期 (1)介入群 協同認識,関係的学習観は介入をしていた授業期間の第1回(10月初),第9回(11月末),第15回(2月初)に加え,事後調査として授業終了から半期経過後(約9ヶ月後)である翌年度10月末の4回測定した。傾聴スキルは毎回の授業で測定していたが,他の変数と同時期のスキル得点を分析対象とした。 (2)対照群 介入群と同一のカリキュラムで学んでいる未介入の集団を対照群として調査対象とした。介入群の事後調査と同時期の10月末に測定した。
結 果
介入群におけるスキルと認識の変化 介入群における事後調査までのスキル平均値および認識(協同認識,学習観)の平均値をTable 1と2に示した。「協同効用」については,介入後の水準が維持されていたが,全体傾向としては,得点は介入期間中には肯定的な変化を示したが,事後調査では,スキルは介入の開始時点以下の水準に,認識は介入開始当初の水準に低下していた。
対照群との比較 授業終了から約9ヶ月後の事後調査における介入群と対照群のスキルと認識の平均値をTable 3に示した。「視点取得」以外のすべての変数で,介入群の方が協同的な学習に対してポジティブに作用するスキルや認識をもっていることが示された。
考 察
介入群における事後評価が介入当初よりも低かったのは,事後調査では日常生活での行動や認識が評価されたのに対し,介入時期の評価対象が注意事項や意図などを説明されながら行う授業に関わっての行動・認識であったことも影響していると考えられる。しかし「協同効用」が維持されたことや,全体的に対照群よりも高い得点であったことは,プログラムが一定の持続的効果をもつことを示唆する結果であると考えられる。