[PC28] 理科授業における実験計画スキル育成の試み
プロダクションルールとしてのメタ認知的知識の教示効果
キーワード:実験計画スキル、プロダクションルール、メタ認知的知識
目 的
平成30年度全国学力・学習状況調査中学校理科の報告書において「観察・実験を計画すること」に課題があることが示されている(NIER, 2018)。これは平成27年度の前回調査でも指摘されており,我が国の中学生は依然として観察・実験を計画する能力に問題があることが示されている。そこで本研究では,この問題を解決するために理科の実験計画に関してプロダクションルールとしてメタ認知的知識を教示する授業実践を行い,その効果を測定することを目的とした。
方 法
対象者と手続き 対象は国立大学附属中学校第2学年の生徒160名であった。計4学級のうち2学級を授業実践を実施する実験群,残り2学級を授業実践を実施しない統制群に無作為に割り当てた。はじめに両群においてプレテストを行い,その後,実験群は2時間の授業実践後にポストテストを行なった。統制群においてはプレテスト後にポストテストを行い,その後,2時間の授業実践を行うことで処遇格差の解消を図った。
授業実践の概要 授業実施に先立ち,「小学校理科の観察,実験の手引き」(文部科学省,2011)や心理学研究法の専門書(高野・岡,2004)を参考に,理科教育学を専門とする大学教員1名と理科教育学を専攻する大学生1名で,理科の実験計画に必要なメタ認知的知識の抽出を行なった。その後,中学校理科教員1名を交えて協議しながら整理した。その結果,7つのルールが完成した。また,その内容を盛り込んだ中学生用のテキストを作成し,授業実践に使用した。
評価問題 実験計画の立案能力を評価するための問題は,OECDのPISA調査の科学的リテラシーに関する過去問を参考にプレとポストの2題を作成した。作成にあたり留意した点は,対象者にとって中程度の難易度であること,理科で学んだ科学的知識の保持や理解状況の影響をなるべく受けない内容であることの2点であった。
結 果
評価問題は定めたルールに従って得点化の基準を設け,10点満点で評価した(Table 1)。評価問題1においては群の主効果が認められなかったが,評価問題2および変化量Δにおいては群の主効果が認められた。また,評価問題1において性別の主効果が認められ,男子の得点は女子の得点よりも高いことが示されたが,評価問題2および変化量Δにおいては認められなかった。
考 察
授業実践を行った実験群は,評価問題の得点が上昇した。本実践では,例えば「実験の計画を立てるときは(if:条件部分),独立変数を1つずつ変えて他の条件は一定に保つ(then:行動部分)」のように,メタ認知的な宣言的知識をいつどのように使うかといった条件的知識と手続き的知識を組み合わせて指導したことにより,学習者にとって利用可能な知識となったのではないかと推察する。中学生は理科授業の中で実験計画に関わるオーセンティックな経験を積み重ねていても,その活動の意味的な抽象化や概念化が図られていないため,実験計画の立案が困難になっているのではないだろうか。学習の転移を促すためには,ルールとして獲得させることが有効であると考える。
平成30年度全国学力・学習状況調査中学校理科の報告書において「観察・実験を計画すること」に課題があることが示されている(NIER, 2018)。これは平成27年度の前回調査でも指摘されており,我が国の中学生は依然として観察・実験を計画する能力に問題があることが示されている。そこで本研究では,この問題を解決するために理科の実験計画に関してプロダクションルールとしてメタ認知的知識を教示する授業実践を行い,その効果を測定することを目的とした。
方 法
対象者と手続き 対象は国立大学附属中学校第2学年の生徒160名であった。計4学級のうち2学級を授業実践を実施する実験群,残り2学級を授業実践を実施しない統制群に無作為に割り当てた。はじめに両群においてプレテストを行い,その後,実験群は2時間の授業実践後にポストテストを行なった。統制群においてはプレテスト後にポストテストを行い,その後,2時間の授業実践を行うことで処遇格差の解消を図った。
授業実践の概要 授業実施に先立ち,「小学校理科の観察,実験の手引き」(文部科学省,2011)や心理学研究法の専門書(高野・岡,2004)を参考に,理科教育学を専門とする大学教員1名と理科教育学を専攻する大学生1名で,理科の実験計画に必要なメタ認知的知識の抽出を行なった。その後,中学校理科教員1名を交えて協議しながら整理した。その結果,7つのルールが完成した。また,その内容を盛り込んだ中学生用のテキストを作成し,授業実践に使用した。
評価問題 実験計画の立案能力を評価するための問題は,OECDのPISA調査の科学的リテラシーに関する過去問を参考にプレとポストの2題を作成した。作成にあたり留意した点は,対象者にとって中程度の難易度であること,理科で学んだ科学的知識の保持や理解状況の影響をなるべく受けない内容であることの2点であった。
結 果
評価問題は定めたルールに従って得点化の基準を設け,10点満点で評価した(Table 1)。評価問題1においては群の主効果が認められなかったが,評価問題2および変化量Δにおいては群の主効果が認められた。また,評価問題1において性別の主効果が認められ,男子の得点は女子の得点よりも高いことが示されたが,評価問題2および変化量Δにおいては認められなかった。
考 察
授業実践を行った実験群は,評価問題の得点が上昇した。本実践では,例えば「実験の計画を立てるときは(if:条件部分),独立変数を1つずつ変えて他の条件は一定に保つ(then:行動部分)」のように,メタ認知的な宣言的知識をいつどのように使うかといった条件的知識と手続き的知識を組み合わせて指導したことにより,学習者にとって利用可能な知識となったのではないかと推察する。中学生は理科授業の中で実験計画に関わるオーセンティックな経験を積み重ねていても,その活動の意味的な抽象化や概念化が図られていないため,実験計画の立案が困難になっているのではないだろうか。学習の転移を促すためには,ルールとして獲得させることが有効であると考える。