[PC29] 大学生による確率のとらえ方
降水確率を対象に
キーワード:確率、単一事象確率、頻度論的確率
人は,確率をどのようにとらえているのだろうか。確率とは,事象の起こる確からしさを数量的に表したものである。確率という言葉には,いくつかの解釈がある。以下で用いる確率の解釈は,グムールマン(1964),小島(2005),広辞苑(第五版),および心理学事典(1981)に基づく。
「数学的確率」とは,例えば「サイコロの目の出方には6通りあり,各々の目の出方には優劣がつけられない。よって,1の目が出る確率は1/6」のような考え方によって求められる確率である。ここでは,互いに排反で,1つだけが確実に起こるような事象系で,同様に確からしいとされている「根源的な場合」が想定される(古典的定義)。確率の0≦P≦1という性質は,こうした古典的定義から導かれる。
「単一事象確率 probability of a single event (主観的確率 subjective probability)」とは,1回しか起こらない単一事象について推論する場合に用いられる確率,すなわち,「ある事象の起こりやすさの程度はpであろう」のように推定される確率である。これは,例えば「明日Aさんが亡くなる確率は~%であろう」のように表現される。
「頻度論的確率(frequency,相対度数,統計的確率,客観的確率)」とは,例えば「人口100,000人のうち10人がある病気を発症している場合,その病気を発症する確率は10/100,000」のような考え方によって求められる確率である。これは,大数の法則という経験法則(ある事柄を何回も繰り返すと一定事象の起こる割合は回数を増すに従って一定値に近づいていく)に基づく確率である。
本発表では,日常生活で耳にすることの多い「降水確率」に関する課題の結果を分析し,大学生が確率をどのようにとらえているかを明らかにする。
方 法
調査対象者 東京都内の私立大学生23名であった。課題 「確率に関する説明課題」(問1~問6)を出題した。本発表では,降水確率に関する問2に対する説明を分析する (Figure 1)。
なお,気象庁では降水確率を以下のように定義している。・予報区内で一定の時間内に降水量にして1mm以上の雨または雪の降る確率(%)の平均値で,0,10,20,…,100%で表現する(この間は四捨五入する)。・降水確率30%とは,30%という予報が100回発表されたとき,その内のおよそ30回は1 mm以上の降水があるという意味であり,降水量を予報するものではない。(https:// www.jma-net.go.jp/akita/Q&A/qandanew_23.htm(2019.4.6アクセス))手続き 教室で問題用紙を配布し,授業内に集団形式で実施した。
結果と考察
以下の3つの説明タイプが出現した。
タイプ1(頻度論的確率による説明) これは,例えば「70%の日が10回あるとすると,だいたい7回くらいは雨が降るということ」のように,頻度論的確率による説明をしたものである(出現率43.5%)。本タイプの中には,「12月20日が100回あったとしたらそのうち70回雨が降る」「10回明日が来るとして,そのうちの7回は雨が降るということ」のように誤った説明をしている人もいた。また,「もし10回同じような天気の日があったとしたら,7回は雨が降るということ」のように「同じ」という言葉を用いて,同様に確からしい場合を想定していると考えられる説明(数学的確率による説明と考えられるもの)も出現した。
タイプ2(単一事象確率による説明) これは,例えば「明日雨降る可能性は7割である」のように,単一事象確率による説明をしたものである(出現率34.8%)。
タイプ3(割合による説明) これは,例えば「ある地域全体を100%とした時,全体の70%の場所で雨が降るという意味」のように,割合による説明をしたものである(出現率13.0%)。図を描いて説明をした人もいた。
その他 単一事象確率と割合の両方による説明を行った人が1名,白紙が1名いた。
「数学的確率」とは,例えば「サイコロの目の出方には6通りあり,各々の目の出方には優劣がつけられない。よって,1の目が出る確率は1/6」のような考え方によって求められる確率である。ここでは,互いに排反で,1つだけが確実に起こるような事象系で,同様に確からしいとされている「根源的な場合」が想定される(古典的定義)。確率の0≦P≦1という性質は,こうした古典的定義から導かれる。
「単一事象確率 probability of a single event (主観的確率 subjective probability)」とは,1回しか起こらない単一事象について推論する場合に用いられる確率,すなわち,「ある事象の起こりやすさの程度はpであろう」のように推定される確率である。これは,例えば「明日Aさんが亡くなる確率は~%であろう」のように表現される。
「頻度論的確率(frequency,相対度数,統計的確率,客観的確率)」とは,例えば「人口100,000人のうち10人がある病気を発症している場合,その病気を発症する確率は10/100,000」のような考え方によって求められる確率である。これは,大数の法則という経験法則(ある事柄を何回も繰り返すと一定事象の起こる割合は回数を増すに従って一定値に近づいていく)に基づく確率である。
本発表では,日常生活で耳にすることの多い「降水確率」に関する課題の結果を分析し,大学生が確率をどのようにとらえているかを明らかにする。
方 法
調査対象者 東京都内の私立大学生23名であった。課題 「確率に関する説明課題」(問1~問6)を出題した。本発表では,降水確率に関する問2に対する説明を分析する (Figure 1)。
なお,気象庁では降水確率を以下のように定義している。・予報区内で一定の時間内に降水量にして1mm以上の雨または雪の降る確率(%)の平均値で,0,10,20,…,100%で表現する(この間は四捨五入する)。・降水確率30%とは,30%という予報が100回発表されたとき,その内のおよそ30回は1 mm以上の降水があるという意味であり,降水量を予報するものではない。(https:// www.jma-net.go.jp/akita/Q&A/qandanew_23.htm(2019.4.6アクセス))手続き 教室で問題用紙を配布し,授業内に集団形式で実施した。
結果と考察
以下の3つの説明タイプが出現した。
タイプ1(頻度論的確率による説明) これは,例えば「70%の日が10回あるとすると,だいたい7回くらいは雨が降るということ」のように,頻度論的確率による説明をしたものである(出現率43.5%)。本タイプの中には,「12月20日が100回あったとしたらそのうち70回雨が降る」「10回明日が来るとして,そのうちの7回は雨が降るということ」のように誤った説明をしている人もいた。また,「もし10回同じような天気の日があったとしたら,7回は雨が降るということ」のように「同じ」という言葉を用いて,同様に確からしい場合を想定していると考えられる説明(数学的確率による説明と考えられるもの)も出現した。
タイプ2(単一事象確率による説明) これは,例えば「明日雨降る可能性は7割である」のように,単一事象確率による説明をしたものである(出現率34.8%)。
タイプ3(割合による説明) これは,例えば「ある地域全体を100%とした時,全体の70%の場所で雨が降るという意味」のように,割合による説明をしたものである(出現率13.0%)。図を描いて説明をした人もいた。
その他 単一事象確率と割合の両方による説明を行った人が1名,白紙が1名いた。