[PC36] 学校教員にとって部活動はどれくらい負担なのか?(1)
部活動の時間がストレスに及ぼす影響の検討
Keywords:学校教員、部活動、ストレス
問題と目的
中学校・高等学校の部活動は,生徒の学習意欲や責任感,連帯感を高めることを目的として実施される正課外活動である。生徒の部活動への積極的な参加が学業への積極的関与や学校生活への満足感を促すことが明らかにされている(角谷, 2005; 竹村, 2007)。部活動は生徒に対して望ましい効果が認められる一方で,部活動の顧問をする教員は部活動に多くの悩みを抱え,部活動が負担となり,心身ともに疲弊していることが明らかにされている(小柳・石井・竹安・竹安, 2015)。教員の負担としては,①教材研究などと部活動との長時間労働,②自分が経験したことのない部活動を指導しなければならず,経験則の中だけで指導しなければならない,③生徒とのコミュニケーションがうまくとれず,生徒が言うことを聞かず部活動運営ができない,などの負担が上げられている。
しかし,教員の労働時間とストレスとの関連を検討した研究は少なく(佐野・蒲原, 2013),部活動に関わる時間とストレスとの関連を実証した研究は見当たらない。また,中学校と高等学校では,生徒の自主性や自律性も異なると考えられ,教員が抱く部活動への負担も異なると考えられる。
そのため,本研究では,中学教員と高校教員別に,部活動に関わる時間が教員のストレスに及ぼす影響を検討すること目的とした。
方 法
調査手続き・対象者:本調査は,(株)マクロミルにWeb調査を依頼し,調査を実施した。調査対象者は,中学校教員258名と高校教員258名であった。なお,調査に関する倫理的説明を冒頭で実施し,調査に同意した場合のみに調査が実施された。
調査項目:(1)職業性ストレス簡易調査票(下光, 2000)を用いた。労働環境に関する4因子ならびに心理的ストレスと身体的ストレスを測定した。(2)労働時間について,残業時間,部活動に関わる時間,睡眠時間,余暇時間について一週間の平均について尋ねた。その他に, (3)人生満足感(大石, 2004),(4)日本語版人生の意味尺度(島井・大竹, 2005),(5)属性(年齢,性別,年収)を尋ねた。
結果と考察
分析モデルは,高原(2015)のストレスモデルを参考にして作成された。具体的には,第一水準に労働時間,第二水準に労働環境の認知,第三水準にストレス指標,第四水準に人生への肯定的認知に関する指標を投入した。また,年齢,性別,年収は統制変数として扱い,すべての変数へのパスを仮定した。作成された分析モデルに対して中学校教員と高校教員をグループ変数とした多母集団同時分析を実施した
分析の結果,高校教員では,部活動に関わる時間が長いほど,仕事のコントロールが促進され,仕事のコントロールからストレスへの影響は見られなかった。一方,中学教員では,部活動の時間が長いほど,仕事の適合性が抑制され,ストレスに影響を及ぼしていた。また,仕事の適合性は年収が高いほど,高く認知されていた。中学教員と高校教員で部活動の時間が労働環境に及ぼす影響が異なっていた。中学と高校で部活動の仕組みが異なり,ストレスに及ぼす影響が異なる可能性が示唆された。
中学校・高等学校の部活動は,生徒の学習意欲や責任感,連帯感を高めることを目的として実施される正課外活動である。生徒の部活動への積極的な参加が学業への積極的関与や学校生活への満足感を促すことが明らかにされている(角谷, 2005; 竹村, 2007)。部活動は生徒に対して望ましい効果が認められる一方で,部活動の顧問をする教員は部活動に多くの悩みを抱え,部活動が負担となり,心身ともに疲弊していることが明らかにされている(小柳・石井・竹安・竹安, 2015)。教員の負担としては,①教材研究などと部活動との長時間労働,②自分が経験したことのない部活動を指導しなければならず,経験則の中だけで指導しなければならない,③生徒とのコミュニケーションがうまくとれず,生徒が言うことを聞かず部活動運営ができない,などの負担が上げられている。
しかし,教員の労働時間とストレスとの関連を検討した研究は少なく(佐野・蒲原, 2013),部活動に関わる時間とストレスとの関連を実証した研究は見当たらない。また,中学校と高等学校では,生徒の自主性や自律性も異なると考えられ,教員が抱く部活動への負担も異なると考えられる。
そのため,本研究では,中学教員と高校教員別に,部活動に関わる時間が教員のストレスに及ぼす影響を検討すること目的とした。
方 法
調査手続き・対象者:本調査は,(株)マクロミルにWeb調査を依頼し,調査を実施した。調査対象者は,中学校教員258名と高校教員258名であった。なお,調査に関する倫理的説明を冒頭で実施し,調査に同意した場合のみに調査が実施された。
調査項目:(1)職業性ストレス簡易調査票(下光, 2000)を用いた。労働環境に関する4因子ならびに心理的ストレスと身体的ストレスを測定した。(2)労働時間について,残業時間,部活動に関わる時間,睡眠時間,余暇時間について一週間の平均について尋ねた。その他に, (3)人生満足感(大石, 2004),(4)日本語版人生の意味尺度(島井・大竹, 2005),(5)属性(年齢,性別,年収)を尋ねた。
結果と考察
分析モデルは,高原(2015)のストレスモデルを参考にして作成された。具体的には,第一水準に労働時間,第二水準に労働環境の認知,第三水準にストレス指標,第四水準に人生への肯定的認知に関する指標を投入した。また,年齢,性別,年収は統制変数として扱い,すべての変数へのパスを仮定した。作成された分析モデルに対して中学校教員と高校教員をグループ変数とした多母集団同時分析を実施した
分析の結果,高校教員では,部活動に関わる時間が長いほど,仕事のコントロールが促進され,仕事のコントロールからストレスへの影響は見られなかった。一方,中学教員では,部活動の時間が長いほど,仕事の適合性が抑制され,ストレスに影響を及ぼしていた。また,仕事の適合性は年収が高いほど,高く認知されていた。中学教員と高校教員で部活動の時間が労働環境に及ぼす影響が異なっていた。中学と高校で部活動の仕組みが異なり,ストレスに及ぼす影響が異なる可能性が示唆された。