[PC48] LINE利用に関する不合理な信念尺度の作成の試み
大学生・大学院生を対象に
Keywords:ソーシャル・ネットワーキング・サービス、心理的負荷、尺度作成
問題と目的
ソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下,SNS)の中でも幅広い年齢層で多く利用されているツールの一つが,LINE株式会社が提供するLINEである。LINEは即時的に気軽にやりとりでき,現実場面での知人とのコミュニケーションが促進される点でメリットが大きい。その一方で既読無視・未読無視という言葉に象徴されるように,LINEによるコミュニケーションが心理的負荷になる可能性も指摘されている(加藤,2016など)。LINEによるコミュニケーションに心理的負荷を感じるか否かは,利用者の認知が関係すると思われる。そして,この認知を知るためには,不合理な信念の概念が参考になる。つまり,LINEによるやりとりへの認知が不合理な内容であれば心理的負荷が大きくなると予想され,その認知を知ることは介入への第一歩になる。しかし,LINEに関する不合理な信念を測定する尺度はみあたらない。そこで本研究では,LINE利用に関する不合理な信念を測定する尺度を作成することを目的とする。
方 法
(1)調査時期・手続き:X年11月に大学生99名,大学院生61名,合計160名を対象として質問紙を配布した。配布時に,研究への協力内容や分析方法,協力が任意であることを十分に説明した。
(2)調査内容:フェイスシート,年齢・性別,LINE利用の有無,利用頻度,利用時間(自由記述),LINE利用に関する不合理な信念について尋ねる項目,心理的負荷を測定する尺度としてKessler 10の日本語版(藤本,2014)を使用した。なお,LINE利用に関する不合理な信念について尋ねる20項目は,教員経験のある大学院生3名,LINEを毎日利用している大学院生3名,臨床心理学を専門とする大学教員1名の計7名と協議し作成された。
結果と考察
記入ミス等を除いた150名(平均年齢20.8±3.05)を分析対象者とした。項目の記述統計をもとめ床効果の有無を検討したところ,全20項目中18項目で床効果がみられたが,今後の適応可能性について考えるため,分析の手続きを進めた。本尺度の因子構造について知るため,固有値の減衰傾向や因子の解釈可能性を踏まえ,3 因子に設定して因子分析(最尤法・プロマックス回転)を行った。再度,因子負荷量が0.4未満の5項目を除外して,再度因子分析を行った結果を表1に示す。内容から,第Ⅰ因子を「即時性への囚われ」,第Ⅱ因子を「メッセージへの過敏さ」,第Ⅲ因子を「過度の同調性」と命名した。なお,各因子のα係数は十分な値であった(α = .740~785)。また,K10とLINE利用に関する不合理な信念(下位尺度・全体)とのPearsonの相関係数を求めたところ,有意な正の相関がみられた(r = .276~.379)。このことから,本尺度で測定されるLINE利用に関する不合理な信念を持っているほど心理的負荷が高いことが示され,ある程度の基準関連妥当性が確認された。また,年齢(20歳未満・以上)を独立変数としてt検定を行ったところ,即時性への囚われで10%水準で有意な差がみられ(t=1.789,p=.076;20歳以上<20歳未満)。即時性への囚われは10代の大学生に比較的強い傾向がみられることが示された。ほとんどの項目で床効果がみられたことと合わせて考えると,中高生での本尺度の適応可能性について検討すべきである。
ソーシャル・ネットワーキング・サービス(以下,SNS)の中でも幅広い年齢層で多く利用されているツールの一つが,LINE株式会社が提供するLINEである。LINEは即時的に気軽にやりとりでき,現実場面での知人とのコミュニケーションが促進される点でメリットが大きい。その一方で既読無視・未読無視という言葉に象徴されるように,LINEによるコミュニケーションが心理的負荷になる可能性も指摘されている(加藤,2016など)。LINEによるコミュニケーションに心理的負荷を感じるか否かは,利用者の認知が関係すると思われる。そして,この認知を知るためには,不合理な信念の概念が参考になる。つまり,LINEによるやりとりへの認知が不合理な内容であれば心理的負荷が大きくなると予想され,その認知を知ることは介入への第一歩になる。しかし,LINEに関する不合理な信念を測定する尺度はみあたらない。そこで本研究では,LINE利用に関する不合理な信念を測定する尺度を作成することを目的とする。
方 法
(1)調査時期・手続き:X年11月に大学生99名,大学院生61名,合計160名を対象として質問紙を配布した。配布時に,研究への協力内容や分析方法,協力が任意であることを十分に説明した。
(2)調査内容:フェイスシート,年齢・性別,LINE利用の有無,利用頻度,利用時間(自由記述),LINE利用に関する不合理な信念について尋ねる項目,心理的負荷を測定する尺度としてKessler 10の日本語版(藤本,2014)を使用した。なお,LINE利用に関する不合理な信念について尋ねる20項目は,教員経験のある大学院生3名,LINEを毎日利用している大学院生3名,臨床心理学を専門とする大学教員1名の計7名と協議し作成された。
結果と考察
記入ミス等を除いた150名(平均年齢20.8±3.05)を分析対象者とした。項目の記述統計をもとめ床効果の有無を検討したところ,全20項目中18項目で床効果がみられたが,今後の適応可能性について考えるため,分析の手続きを進めた。本尺度の因子構造について知るため,固有値の減衰傾向や因子の解釈可能性を踏まえ,3 因子に設定して因子分析(最尤法・プロマックス回転)を行った。再度,因子負荷量が0.4未満の5項目を除外して,再度因子分析を行った結果を表1に示す。内容から,第Ⅰ因子を「即時性への囚われ」,第Ⅱ因子を「メッセージへの過敏さ」,第Ⅲ因子を「過度の同調性」と命名した。なお,各因子のα係数は十分な値であった(α = .740~785)。また,K10とLINE利用に関する不合理な信念(下位尺度・全体)とのPearsonの相関係数を求めたところ,有意な正の相関がみられた(r = .276~.379)。このことから,本尺度で測定されるLINE利用に関する不合理な信念を持っているほど心理的負荷が高いことが示され,ある程度の基準関連妥当性が確認された。また,年齢(20歳未満・以上)を独立変数としてt検定を行ったところ,即時性への囚われで10%水準で有意な差がみられ(t=1.789,p=.076;20歳以上<20歳未満)。即時性への囚われは10代の大学生に比較的強い傾向がみられることが示された。ほとんどの項目で床効果がみられたことと合わせて考えると,中高生での本尺度の適応可能性について検討すべきである。