[PC47] 援助要請における3つのスタイルの基本的特徴
Keywords:援助要請スタイル、被援助志向性、利益・コスト
問題と目的
援助要請の適応性を検討するためには,援助要請の質に注目することが重要である。臨床領域における研究では,学業的援助要請研究の視点 (Butler, 1998; Ryan, Patrick, & Shin, 2005; 瀬尾, 2007, 2008)に基づき,援助要請のスタイルの視点を取り入れた研究が行われるようになっている。しかしながら,スタイルを扱う研究自体はまだ多くはない。特に,検討すべき主要な課題の一つとして,各スタイルの違いを明らかにすることの必要性が挙げられる (永井, 2013)。
本研究では,援助要請研究における基本的な変数である悩みと抑うつ,ソーシャルサポート,そして援助要請に関連する心理的変数である利益・コストの予期を用い,これらの援助要請スタイル間の差異を検討することを目的とする。
方 法
調査対象 関東地方の4年制大学3校の大学生703名(有効642名; 男性233名, 女性409名)。
調査内容 ①援助要請スタイル 援助要請スタイル尺度 (永井, 2013),12項目7件法。②悩み 木村・水野 (2004)による大学生活の悩み6項目5件法。③ソーシャルサポート 大学生用ソーシャルサポート尺度 (嶋, 1992),12項目5件法。④抑うつ Center for Epidemiological Studies Depression Scale (CES-D; Radloff, 1977)の邦訳版 (島・鹿野・北村・浅井, 1985),20項目4件法。⑤利益・コストの予期 利益・コストの予期尺度 (永井・鈴木, 2018),28項目5件法。
結果と考察
援助要請スタイルを独立変数とした分散分析の結果,利益・コストの予期における「相手への迷惑」を除く全ての変数で独立変数の効果が有意であった。多重比較の結果 (Table1),援助要請と正の関連を持つとされる「悩み」「ソーシャルサポート」「ポジティブな結果」「関係の深化」「問題の維持」は過剰型が高く,援助要請と負の関連を持つとされる「否定的応答」「秘密漏洩」「自助努力による充実感」は回避型において高かった。
このように各変数の差は,概ね各スタイル間の援助要請の量の差と対応していたが,一部の変数では異なる結果が示された。まず抑うつは,援助要請意図と負の関連が示される (Garland & Zigler,1994)にもかかわらず,自立型よりも過剰型において高いという結果が示された。抑うつが抑制要因として機能していないという点は,過剰型が「過剰型」たる証左とも言える。
「自助努力による充実感」は,援助要請意図と負の関連を持つ (永井・鈴木, 2018)にも関わらず,自立型において高いという結果が示された。自立型は,自ら悩みに取り組むことの意義性を自覚することができているために,他の2群に比べて援助要請と自助努力とのバランスを取ることができている可能性が考えられる。
また回避型は,「悩み」が少なく,「自助努力による充実感」が高い一方,「ソーシャルサポート」が低く,「抑うつ」が高いなど,何らかの支援を必要とする群である可能性が示唆された。
援助要請の適応性を検討するためには,援助要請の質に注目することが重要である。臨床領域における研究では,学業的援助要請研究の視点 (Butler, 1998; Ryan, Patrick, & Shin, 2005; 瀬尾, 2007, 2008)に基づき,援助要請のスタイルの視点を取り入れた研究が行われるようになっている。しかしながら,スタイルを扱う研究自体はまだ多くはない。特に,検討すべき主要な課題の一つとして,各スタイルの違いを明らかにすることの必要性が挙げられる (永井, 2013)。
本研究では,援助要請研究における基本的な変数である悩みと抑うつ,ソーシャルサポート,そして援助要請に関連する心理的変数である利益・コストの予期を用い,これらの援助要請スタイル間の差異を検討することを目的とする。
方 法
調査対象 関東地方の4年制大学3校の大学生703名(有効642名; 男性233名, 女性409名)。
調査内容 ①援助要請スタイル 援助要請スタイル尺度 (永井, 2013),12項目7件法。②悩み 木村・水野 (2004)による大学生活の悩み6項目5件法。③ソーシャルサポート 大学生用ソーシャルサポート尺度 (嶋, 1992),12項目5件法。④抑うつ Center for Epidemiological Studies Depression Scale (CES-D; Radloff, 1977)の邦訳版 (島・鹿野・北村・浅井, 1985),20項目4件法。⑤利益・コストの予期 利益・コストの予期尺度 (永井・鈴木, 2018),28項目5件法。
結果と考察
援助要請スタイルを独立変数とした分散分析の結果,利益・コストの予期における「相手への迷惑」を除く全ての変数で独立変数の効果が有意であった。多重比較の結果 (Table1),援助要請と正の関連を持つとされる「悩み」「ソーシャルサポート」「ポジティブな結果」「関係の深化」「問題の維持」は過剰型が高く,援助要請と負の関連を持つとされる「否定的応答」「秘密漏洩」「自助努力による充実感」は回避型において高かった。
このように各変数の差は,概ね各スタイル間の援助要請の量の差と対応していたが,一部の変数では異なる結果が示された。まず抑うつは,援助要請意図と負の関連が示される (Garland & Zigler,1994)にもかかわらず,自立型よりも過剰型において高いという結果が示された。抑うつが抑制要因として機能していないという点は,過剰型が「過剰型」たる証左とも言える。
「自助努力による充実感」は,援助要請意図と負の関連を持つ (永井・鈴木, 2018)にも関わらず,自立型において高いという結果が示された。自立型は,自ら悩みに取り組むことの意義性を自覚することができているために,他の2群に比べて援助要請と自助努力とのバランスを取ることができている可能性が考えられる。
また回避型は,「悩み」が少なく,「自助努力による充実感」が高い一方,「ソーシャルサポート」が低く,「抑うつ」が高いなど,何らかの支援を必要とする群である可能性が示唆された。