[PC50] 小学校特別支援学級に在籍する児童の教科交流の実施における意思決定と参加状況
キーワード:小学校特別支援学級、教科交流、意思決定
問題と目的
交流及び共同学習は共生社会の形成に向けた学習活動として重要な役割を果たす。現在,多くの教育現場で交流及び共同学習が行われており,その実施率は,全国的にも一地方都市においても高い割合を示していることが報告されている(国立特別支援教育総合研究所,2006;細谷,2011)。
しかしながら,交流及び共同学習の実施において,通常学級での学習に積極的に参加することが難しい児童生徒がいることが指摘されている(溝上,1990;関戸・岡島,2000)。このような積極的に参加する行動の遂行そのものを目的やよろこびとして行動を始発・進行させる心的機制は内発的動機づけと呼ばれている(Deci,1975)。碓井(1992)は,自己決定が学習への意欲を高めることを報告している。このことから,特別支援学級児童が,交流及び共同学習に対して積極的に取り組むためには,自己決定の機会を確保することが大切であると考えた。
そこで本研究では,交流及び共同学習における教科交流に焦点をあて,北海道内の小学校特別支援学級を対象に実施状況と実施に伴う児童の意思決定の現状ならびに児童の様子について明らかにすることを目的とする。
方 法
対象:北海道内の全知的障害小学校特別支援学級(769校)の代表者を対象とした。なお,調査対象の選定にあたっては,北海道教育委員会が主管する14教育局及び札幌市が2016年5月1日付で公開した資料をもとに作成した。
手続き:調査用紙は14教育局及び札幌市の担当者を経由して,各学校へ返信用封筒とともに配布した。各学校へは研究の目的,方法,結果の公開方法,個人情報の保護に関する内容が記載されている依頼文を同封し,調査への協力は任意であることを記載したうえで実施した。
内容:本調査は「1.回答者の基本情報(5項目)」「2.実施状況(8項目)」「3.決定方法と参加状況(4項目)」の17項目とした。
結 果
回答が得られたもののうち,1項目でも未記入があったものは,分析対象から除外し,各教育局を4つのエリアに分類し集計を行った。その結果,全体では256校(回収率:33.3%),各エリアでは,「A:17校(有効回答率:94.4%)」「B:113校(有効回答:86.9%)」「C:57校(有効回答率:86.4%)」「D:42校(有効回答率:100%)」であった。
教科交流の実施状況:いずれのエリア「A(94.1%),B(91.2%),C(98.2%),D(95.2%)」においても90%を超えており,教科交流の実施率は高い結果であった。また,教科別の実施率をFig.1に示す。国語や算数といった主要教科における実施率は低く,音楽や体育といった芸能教科における実施率は高い結果であった。
教科交流実施における意思決定と様子:実施における意思決定では,「全てを教師が決定(73.4%)」と,多くの学級で教科交流の実施や内容を教師が決定している事が明らかとなった。
また,教科交流の実施における児童の様子については,交流時,交流中を問わず,多くの児童が「喜んで実施」している様子が分かった。しかしながら,一部の児童も含めて,喜んで実施していない児童の存在が明らかとなり,さらに,教師が決定している場合に,多い傾向が見られた。
考 察
教科交流の実施率の高さは,他の研究結果と一致しており,教育現場において重要な教育活動であることが改めて明らかとなった。また,参加の様子について,交流及び共同学習の推進に伴い,今後さらに通常学級で学習する特別支援学級児童の増加を考えると,意欲的に教科交流に取り組むための方法についての検討が必要である。
交流及び共同学習は共生社会の形成に向けた学習活動として重要な役割を果たす。現在,多くの教育現場で交流及び共同学習が行われており,その実施率は,全国的にも一地方都市においても高い割合を示していることが報告されている(国立特別支援教育総合研究所,2006;細谷,2011)。
しかしながら,交流及び共同学習の実施において,通常学級での学習に積極的に参加することが難しい児童生徒がいることが指摘されている(溝上,1990;関戸・岡島,2000)。このような積極的に参加する行動の遂行そのものを目的やよろこびとして行動を始発・進行させる心的機制は内発的動機づけと呼ばれている(Deci,1975)。碓井(1992)は,自己決定が学習への意欲を高めることを報告している。このことから,特別支援学級児童が,交流及び共同学習に対して積極的に取り組むためには,自己決定の機会を確保することが大切であると考えた。
そこで本研究では,交流及び共同学習における教科交流に焦点をあて,北海道内の小学校特別支援学級を対象に実施状況と実施に伴う児童の意思決定の現状ならびに児童の様子について明らかにすることを目的とする。
方 法
対象:北海道内の全知的障害小学校特別支援学級(769校)の代表者を対象とした。なお,調査対象の選定にあたっては,北海道教育委員会が主管する14教育局及び札幌市が2016年5月1日付で公開した資料をもとに作成した。
手続き:調査用紙は14教育局及び札幌市の担当者を経由して,各学校へ返信用封筒とともに配布した。各学校へは研究の目的,方法,結果の公開方法,個人情報の保護に関する内容が記載されている依頼文を同封し,調査への協力は任意であることを記載したうえで実施した。
内容:本調査は「1.回答者の基本情報(5項目)」「2.実施状況(8項目)」「3.決定方法と参加状況(4項目)」の17項目とした。
結 果
回答が得られたもののうち,1項目でも未記入があったものは,分析対象から除外し,各教育局を4つのエリアに分類し集計を行った。その結果,全体では256校(回収率:33.3%),各エリアでは,「A:17校(有効回答率:94.4%)」「B:113校(有効回答:86.9%)」「C:57校(有効回答率:86.4%)」「D:42校(有効回答率:100%)」であった。
教科交流の実施状況:いずれのエリア「A(94.1%),B(91.2%),C(98.2%),D(95.2%)」においても90%を超えており,教科交流の実施率は高い結果であった。また,教科別の実施率をFig.1に示す。国語や算数といった主要教科における実施率は低く,音楽や体育といった芸能教科における実施率は高い結果であった。
教科交流実施における意思決定と様子:実施における意思決定では,「全てを教師が決定(73.4%)」と,多くの学級で教科交流の実施や内容を教師が決定している事が明らかとなった。
また,教科交流の実施における児童の様子については,交流時,交流中を問わず,多くの児童が「喜んで実施」している様子が分かった。しかしながら,一部の児童も含めて,喜んで実施していない児童の存在が明らかとなり,さらに,教師が決定している場合に,多い傾向が見られた。
考 察
教科交流の実施率の高さは,他の研究結果と一致しており,教育現場において重要な教育活動であることが改めて明らかとなった。また,参加の様子について,交流及び共同学習の推進に伴い,今後さらに通常学級で学習する特別支援学級児童の増加を考えると,意欲的に教科交流に取り組むための方法についての検討が必要である。