日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PC] ポスター発表 PC(01-66)

2019年9月14日(土) 15:30 〜 17:30 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号15:30~16:30
偶数番号16:30~17:30

[PC52] ソーシャルスキルが学校適応を促進するプロセスについての一検討

藤原和政1, 粕谷貴志2 (1.長崎外国語大学, 2.奈良教育大学)

キーワード:ソーシャルスキル、学校適応、縦断研究

問題と目的
 ソーシャルスキルは学校適応を促進する,という仮説を支持する研究知見が多数報告されている(例えば,河村, 2003など)。そして,大対・大竹・松見 (2007)が示したモデルを参照すると,ソーシャルスキルなどの行動的機能は,友人との関係などの社会的機能,学習意欲などの学業的機能を媒介して学校適応を促進させる可能性もあると考えられる。このことについては,先行研究でも検討されているが (例えば,石川・山下・佐藤, 2007),より頑健な知見とするためには,より長いインターバルを設定した縦断的検討を行う必要があると考えられる。
 そこで本研究では,1年間のインターバルを設定した縦断調査を用いて,ソーシャルスキルが学校適応を促進するプロセスについて検討することを目的とした。
方  法
調査対象 A県の県立高等学校1校に所属する高校1,2年生583名 (男性313名,女性270名)の生徒であった。
調査内容 ソーシャルスキルの測定には,「高校生用ソーシャルスキル尺度」 (河村, 2007),学校適応の測定には,「学校生活満足度尺度 (高校生用)」 (河村, 1999a) を実施した。そして,社会的機能と学業的機能の測定には,「School Moral Scale(高校生用)」(河村,1999b)の下位尺度である,「友人との関係」と「学習意欲」を実施した。
結果と考察
 ソーシャルスキルが社会的機能,学業的機能を媒介し,学校適応を促進するかについて検討するために,共分散構造分析を行った。モデルの適合度は,χ² (5) = 7.95 (p < .811),TLI = .990,CFI = .996,RMSEA = .029,SRMR = .020であり,各変数間のパス係数については,Figure 1に示す通りであった。そして,友人との関係,学習意欲の媒介効果を確認するため,ブートストラップ法 (標本数2,000)を用いて95%の信頼区間 (バイアス修正済み信頼区間)を算出した。その結果は下記に示す通りであり,配慮のスキルは,友人との関係を媒介し被侵害感を低め,かかわりのスキルは,友人との関係,学習意欲を媒介し承認感を高めることが明らかになった。以上の結果から,ソーシャルスキルは学校適応を直接的にも,社会的機能 (友人との関係)や学業的機能 (学習意欲)を媒介して促進させるということがあらためて示唆されたとともに,このプロセスの頑健さも示されたといえよう。