[PC59] 脱・傍観者の視点を取り入れたいじめ防止授業プログラムの効果
学級風土と規範意識の関連
キーワード:いじめ予防、傍観者、プログラム検証
問題と目的
学校では深刻ないじめの発生が続いており,平成29年度に学校により認知されたいじめは小中高いずれの段階でも増加がみられ414,378件と,前年度より91,235件増の過去最多を更新した。 また重大事態の発生件数も474件と前年度の396件より増加していた (文部科学省,2018)。そこで本稿は,脱・傍観者の視点を取り入れたいじめ防止授業プログラムの効果を明らかにするとともに,学級風土といじめに対する学級の規範意識の差により効果の違いがあるかを検討したものである。
方 法
調査対象者:関東圏内の3市中学校43校の中学1年生,6,462名を対象に1回50分の脱・傍観者の視点を取り入れたいじめ防止授業プログラム「私たちの選択肢」(阿部ほか2018) を実施し,その前後に質問紙調査を実施した。回答は無記名で,調査協力者へは,調査への協力は自由意志に基づき,協力しない場合でも不利益は生じないこと,調査結果について個人を特定できない形で統計的に処理した上で公表されることを明記し,同意を得た.また本研究は,共同研究者の所属大学で倫理審査で承認された。
プログラム概要と特徴:本プログラムではトラブル場面を描いたドラマ型の動画教材を用いたが,一般的なドラマのようにストーリーが一方向に進行し,一つの結末を迎えるだけではなく,動画の展開に選択と分岐を取り入れクラスの雰囲気の違いによりその後の展開の違いが出るよう構成された (阿部ほか2018)。動画教材および授業展開の大筋は以下の通りである:1.初めはいじめを傍観している主人公は,ある場面でいじめの抑止につながるような行動をとるか迷う。2.そこで動画は一旦停止。授業をしているクラス内で,自分が主人公だとしたら選択肢①「行動をとる」か,選択肢②「行動をとらない」かを子どもらに選択させる。3.子ども全員に選択結果を表明させ,人数を数える。その後の動画の展開は,選択肢①②の人数の比率に応じて決め,選ばれた方の展開動画を視聴する (阿部ほか2018)。
測定項目
傍観者行動:中村・越川 (2014) の「いじめの停止行動に対する自己効力感」尺度を使用した。質問項目は全14項目で下記の6つの下位尺度 (いじめを目撃した際の傍観者としての行動選択) からなる:支持行動,仲裁行動,報告行動,聴衆行動,傍観行動,同調行動。
学級風土:新版学級風土尺度 (伊藤・宇佐美, 2017) を使用した。質問項目は全51問で,8つの下位尺度からなる:学級活動への関与,生徒間の親しさ,学級内の不和,学級の満足度,自然な自己開示,学習への志向性,規律正しさ,リーダー。
いじめに対する学級規範:いじめ否定学級規範尺度を使用した。7項目からなり,具体的ないじめ行動を行うことと,それを制止することに対する学級集団の評価について質問した。
分析方法:まず,学級の特徴ごとに分類するために,学級風土尺度の項目をクラスタ分析 (Ward法) した。さらに「いじめに対する学級規範」の高低で群分けし6グループ間でプログラム実施の前後の効果を測定するために反復測定を行った。
結 果
いじめを目撃した際の傍観者の行動選択において,被害者への支持,仲裁,大人への報告は事前と事後で増加した群と逆に低下した群が見られ,もともとの学級風土といじめへの学級規範意識との関連が明らかになった。聴衆行動や傍観行動に関しても同様に交互作用が認められた。そのため,プログラムの効果は一定ではなく,もともとの学級風土が良好ではない場合の課題が明らかになった。
学校では深刻ないじめの発生が続いており,平成29年度に学校により認知されたいじめは小中高いずれの段階でも増加がみられ414,378件と,前年度より91,235件増の過去最多を更新した。 また重大事態の発生件数も474件と前年度の396件より増加していた (文部科学省,2018)。そこで本稿は,脱・傍観者の視点を取り入れたいじめ防止授業プログラムの効果を明らかにするとともに,学級風土といじめに対する学級の規範意識の差により効果の違いがあるかを検討したものである。
方 法
調査対象者:関東圏内の3市中学校43校の中学1年生,6,462名を対象に1回50分の脱・傍観者の視点を取り入れたいじめ防止授業プログラム「私たちの選択肢」(阿部ほか2018) を実施し,その前後に質問紙調査を実施した。回答は無記名で,調査協力者へは,調査への協力は自由意志に基づき,協力しない場合でも不利益は生じないこと,調査結果について個人を特定できない形で統計的に処理した上で公表されることを明記し,同意を得た.また本研究は,共同研究者の所属大学で倫理審査で承認された。
プログラム概要と特徴:本プログラムではトラブル場面を描いたドラマ型の動画教材を用いたが,一般的なドラマのようにストーリーが一方向に進行し,一つの結末を迎えるだけではなく,動画の展開に選択と分岐を取り入れクラスの雰囲気の違いによりその後の展開の違いが出るよう構成された (阿部ほか2018)。動画教材および授業展開の大筋は以下の通りである:1.初めはいじめを傍観している主人公は,ある場面でいじめの抑止につながるような行動をとるか迷う。2.そこで動画は一旦停止。授業をしているクラス内で,自分が主人公だとしたら選択肢①「行動をとる」か,選択肢②「行動をとらない」かを子どもらに選択させる。3.子ども全員に選択結果を表明させ,人数を数える。その後の動画の展開は,選択肢①②の人数の比率に応じて決め,選ばれた方の展開動画を視聴する (阿部ほか2018)。
測定項目
傍観者行動:中村・越川 (2014) の「いじめの停止行動に対する自己効力感」尺度を使用した。質問項目は全14項目で下記の6つの下位尺度 (いじめを目撃した際の傍観者としての行動選択) からなる:支持行動,仲裁行動,報告行動,聴衆行動,傍観行動,同調行動。
学級風土:新版学級風土尺度 (伊藤・宇佐美, 2017) を使用した。質問項目は全51問で,8つの下位尺度からなる:学級活動への関与,生徒間の親しさ,学級内の不和,学級の満足度,自然な自己開示,学習への志向性,規律正しさ,リーダー。
いじめに対する学級規範:いじめ否定学級規範尺度を使用した。7項目からなり,具体的ないじめ行動を行うことと,それを制止することに対する学級集団の評価について質問した。
分析方法:まず,学級の特徴ごとに分類するために,学級風土尺度の項目をクラスタ分析 (Ward法) した。さらに「いじめに対する学級規範」の高低で群分けし6グループ間でプログラム実施の前後の効果を測定するために反復測定を行った。
結 果
いじめを目撃した際の傍観者の行動選択において,被害者への支持,仲裁,大人への報告は事前と事後で増加した群と逆に低下した群が見られ,もともとの学級風土といじめへの学級規範意識との関連が明らかになった。聴衆行動や傍観行動に関しても同様に交互作用が認められた。そのため,プログラムの効果は一定ではなく,もともとの学級風土が良好ではない場合の課題が明らかになった。