[PD05] 幼児期・児童期における情動表出の制御の発達に関する研究
みかけの情動理解との関連に着目して
キーワード:情動表出の制御、情動理解、幼児・児童
問題と目的
幼児期・児童期の情動発達を捉えようとする際には,情動に関する理解の発達と合わせて,実際の情動表出やその制御の発達を捉えていくことが重要である。本研究は,幼児・児童の遊び場面における情動表出とその制御の発達的変化,また,情動表出の制御とみかけの情動理解との関連についての検討を行った。
方 法
対象児:4歳児クラス8名(男児3名,女児5名。平均年齢:5歳0ヶ月),5歳児クラス7名(男児4名,女児3名。平均年齢6歳0ヶ月),小学一年生17名(男児9名,女児8名。平均年齢7歳5ヶ月)。
調査期間:2017年10月〜 3月。
調査課題:
(1)表情抑制得点:3名ずつで,11枚のトランプ(スペード・クラブ5枚ずつ,ジョーカー1枚)を使用し,「ババ抜き」を一人あたり3回行った。ジョーカーを引いたことを相手に悟られないように表情表出を抑制する場面に着目し,表情の変化を測定した。測定は,表情変化を「なし(1点)」「変化(小:0.5点)」「変化(大:0点)」の3段階で評価し,ジョーカーを引いた際の表情変化の平均値(0〜1)を「表情抑制得点」とした。
(2)情動理解得点:主人公が,実際に喚起している「本当の情動」とは異なる「みかけの情動表出」を行う仮想場面を3枚の図版を用いて提示し,回答は,図版を用いて4つの選択肢のうち1つを選択する形式で行った。①表情理解課題(4問):実際に喚起している「本当の情動」に対して,行動を制御する「意図」を提示し,主人公がどのような「表情(みかけの情動表出)」をするかの理解を測定する。②意図理解課題(4問):実際に喚起している「本当の情動」とは異なる「表情(みかけの情動表出)」をしている場面を提示し,主人公がどのような「意図」で表情を制御しているのかの理解を測定した。「表情理解得点」,「意図理解得点」は,それぞれの課題(4問)の正答率とした。
結果と考察
(1)表情抑制得点における年齢差:年齢毎の「表情抑制得点」は,4歳児0.35(SD=0.37),5歳児(0.37,SD=0.27),一年生0.58(SD=0.27)であった。年齢差の検討を行うために一元配置分散分析を行った結果,有意な差は見られなかった。
(2)情動理解得点における年齢差:年齢毎の「表情理解得点」は,4歳児0.25(SD=0.24),5歳児(0.32,SD=0.32),一年生0.40(SD=0.33),「意図理解得点」は,4歳児0.53(SD=0.41),5歳児(0.71,SD=0.24),一年生0.76(SD=0.26)であった。年齢差の検討を行うために一元配置分散分析を行った結果,「表情理解得点」「意図理解得点」ともに,有意な差は見られなかった。
(3)表情抑制と情動理解との関連:「表情理解得点(M=0.34, SD=0.30)」および「意図理解得点(M=0.70, SD=0.30)」の平均値を基準として,平均点より高い/低い得点群を,「理解高群/低群」とした。「表情理解高群・低群」および「意図理解高群・低群」の「表情抑制得点」について,3(年齢群)×2(理解得点高低群)の2要因の分散分析を行った結果,「表情理解」に関しては,主効果,交互作用とも有意でなかった(Figure 1)。「意図理解」に関しては,「理解得点高低群」の主効果(F(1,26)=5.93, p<.05)が有意であり,年齢群の主効果および交互作用は認められなかった(Figure 2)。
本研究では,みかけの情動表出の「意図」の理解が,実際の場面における表情抑制と関連している可能性が示唆された。今後は,情動理解課題の修正を行うとともに,幼児期・児童期における情動表出の制御の発達と情動理解との関連について研究を重ねていく。
幼児期・児童期の情動発達を捉えようとする際には,情動に関する理解の発達と合わせて,実際の情動表出やその制御の発達を捉えていくことが重要である。本研究は,幼児・児童の遊び場面における情動表出とその制御の発達的変化,また,情動表出の制御とみかけの情動理解との関連についての検討を行った。
方 法
対象児:4歳児クラス8名(男児3名,女児5名。平均年齢:5歳0ヶ月),5歳児クラス7名(男児4名,女児3名。平均年齢6歳0ヶ月),小学一年生17名(男児9名,女児8名。平均年齢7歳5ヶ月)。
調査期間:2017年10月〜 3月。
調査課題:
(1)表情抑制得点:3名ずつで,11枚のトランプ(スペード・クラブ5枚ずつ,ジョーカー1枚)を使用し,「ババ抜き」を一人あたり3回行った。ジョーカーを引いたことを相手に悟られないように表情表出を抑制する場面に着目し,表情の変化を測定した。測定は,表情変化を「なし(1点)」「変化(小:0.5点)」「変化(大:0点)」の3段階で評価し,ジョーカーを引いた際の表情変化の平均値(0〜1)を「表情抑制得点」とした。
(2)情動理解得点:主人公が,実際に喚起している「本当の情動」とは異なる「みかけの情動表出」を行う仮想場面を3枚の図版を用いて提示し,回答は,図版を用いて4つの選択肢のうち1つを選択する形式で行った。①表情理解課題(4問):実際に喚起している「本当の情動」に対して,行動を制御する「意図」を提示し,主人公がどのような「表情(みかけの情動表出)」をするかの理解を測定する。②意図理解課題(4問):実際に喚起している「本当の情動」とは異なる「表情(みかけの情動表出)」をしている場面を提示し,主人公がどのような「意図」で表情を制御しているのかの理解を測定した。「表情理解得点」,「意図理解得点」は,それぞれの課題(4問)の正答率とした。
結果と考察
(1)表情抑制得点における年齢差:年齢毎の「表情抑制得点」は,4歳児0.35(SD=0.37),5歳児(0.37,SD=0.27),一年生0.58(SD=0.27)であった。年齢差の検討を行うために一元配置分散分析を行った結果,有意な差は見られなかった。
(2)情動理解得点における年齢差:年齢毎の「表情理解得点」は,4歳児0.25(SD=0.24),5歳児(0.32,SD=0.32),一年生0.40(SD=0.33),「意図理解得点」は,4歳児0.53(SD=0.41),5歳児(0.71,SD=0.24),一年生0.76(SD=0.26)であった。年齢差の検討を行うために一元配置分散分析を行った結果,「表情理解得点」「意図理解得点」ともに,有意な差は見られなかった。
(3)表情抑制と情動理解との関連:「表情理解得点(M=0.34, SD=0.30)」および「意図理解得点(M=0.70, SD=0.30)」の平均値を基準として,平均点より高い/低い得点群を,「理解高群/低群」とした。「表情理解高群・低群」および「意図理解高群・低群」の「表情抑制得点」について,3(年齢群)×2(理解得点高低群)の2要因の分散分析を行った結果,「表情理解」に関しては,主効果,交互作用とも有意でなかった(Figure 1)。「意図理解」に関しては,「理解得点高低群」の主効果(F(1,26)=5.93, p<.05)が有意であり,年齢群の主効果および交互作用は認められなかった(Figure 2)。
本研究では,みかけの情動表出の「意図」の理解が,実際の場面における表情抑制と関連している可能性が示唆された。今後は,情動理解課題の修正を行うとともに,幼児期・児童期における情動表出の制御の発達と情動理解との関連について研究を重ねていく。