[PD07] 震災後のいわき市の子どもの発達状況
いわき市と静岡市の年長児の比較から
キーワード:東日本大震災、発達、SRS‐2
目 的
いわき市から、東日本大震災の影響についての報告は少ない。しかし,保育者は「震災後,発達障害の行動特徴を示す子どもが増えているように思う」と訴える。このことは,いわき市の地域の問題なのか,全国的な傾向であるかも明らかにされていない。
そこで,本研究では,東日本大震災後のいわき市の年長児(5,6歳)を対象に子どもの発達状況を明らかにするために,静岡市の保育園,幼稚園,認定こども園に在籍する年長児を対象に,日本版SRS‐2(Social Responsiveness Scale-2)対人応答尺度幼児版を利用して比較検討を行うことを目的とする。
倫理的配慮
研究を遂行するにあたり,いわき短期大学倫理委員会の承認を得た。
方 法
対象児:いわき市と静岡市の対象児は以下の通りである。
検査バッテリー及び手続き:日本語版SRS‐2対人応答尺度の実施手続きは,SRS‐2マニュアル(2017)に従い,採点ワークシートの記入方法を説明し,各園の年長児担当及び主任保育者に記入を依頼した。
SRS‐2とは,Constantino & Gruber (2005) により開発されたSocial Responsiveness Scale:SRS(対人応答性尺度)の改訂版である。日本語版は,2017年に神尾らによって作成された。子どものIQにかかわらず,自閉症的特性を定量化して把握することができ,自閉症スペクトラム障害・自閉症スペクトラム症の簡便なスクリー二ング尺度としての有用性や,臨床域となるケースの対人的障害を敏感にとらえ得る可能性が示されている。
分析方法:いわき市と静岡市の行動特徴を比較するために,個々の採点ワークシートの下位尺度の粗点を求め,SRS‐2合計粗点を算出した。マニュアルにある幼児版尺度換算表を利用し総合T得点を求めた。個別の総合T得点の検討をマニュアルに記載されている基準で検討を行った。
結 果
(1)SRS‐2 総合T得点の比較
いわき市と静岡市の年長児各100名の総合T得点の比較検討を行った。結果は,以下の通りである。
重度の範囲に入る子どもは、いわき市が18名,静岡市が7名で、いわき市の方が、重度の範囲に入る子どもが多いことが確認された。そこで,重度の範囲に入っている子どもの個人内差を検討した。
(2)重度の範囲の年長児の個人内差の比較検討
個人内差の比較検討の結果,①Aタイプ:全ての領域のT得点が76以上,②Bタイプ:「社会的動機づけ」以外の領域のT得点が76以上,③Cタイプ:「社会的気づき」「社会的動機づけ」以外の領域のT得点が76以上,④Dタイプ:「社会的コミュニケーション」「興味の限局と反復行動」の領域が76以上,⑤非定型:T得点が76以上の領域がバラバラに出現している5つのタイプに分類された。特徴として、いわき市は非定型のタイプが多く、静岡市は、Aタイプが多いことが確認された。
考 察
日本語版SRS-2対人応答尺度を用いた調査から,いわき市の保育者が日常の保育で感じているとおり,「発達障害」の行動特徴を示している子どもが多くいることが確認された。重度の範囲にいる子どもの個人内差を検討した結果,いわき市の子どもは、発達障害の資質よりも、生活環境的な要因が影響しているのではないかと推測された。
いわき市から、東日本大震災の影響についての報告は少ない。しかし,保育者は「震災後,発達障害の行動特徴を示す子どもが増えているように思う」と訴える。このことは,いわき市の地域の問題なのか,全国的な傾向であるかも明らかにされていない。
そこで,本研究では,東日本大震災後のいわき市の年長児(5,6歳)を対象に子どもの発達状況を明らかにするために,静岡市の保育園,幼稚園,認定こども園に在籍する年長児を対象に,日本版SRS‐2(Social Responsiveness Scale-2)対人応答尺度幼児版を利用して比較検討を行うことを目的とする。
倫理的配慮
研究を遂行するにあたり,いわき短期大学倫理委員会の承認を得た。
方 法
対象児:いわき市と静岡市の対象児は以下の通りである。
検査バッテリー及び手続き:日本語版SRS‐2対人応答尺度の実施手続きは,SRS‐2マニュアル(2017)に従い,採点ワークシートの記入方法を説明し,各園の年長児担当及び主任保育者に記入を依頼した。
SRS‐2とは,Constantino & Gruber (2005) により開発されたSocial Responsiveness Scale:SRS(対人応答性尺度)の改訂版である。日本語版は,2017年に神尾らによって作成された。子どものIQにかかわらず,自閉症的特性を定量化して把握することができ,自閉症スペクトラム障害・自閉症スペクトラム症の簡便なスクリー二ング尺度としての有用性や,臨床域となるケースの対人的障害を敏感にとらえ得る可能性が示されている。
分析方法:いわき市と静岡市の行動特徴を比較するために,個々の採点ワークシートの下位尺度の粗点を求め,SRS‐2合計粗点を算出した。マニュアルにある幼児版尺度換算表を利用し総合T得点を求めた。個別の総合T得点の検討をマニュアルに記載されている基準で検討を行った。
結 果
(1)SRS‐2 総合T得点の比較
いわき市と静岡市の年長児各100名の総合T得点の比較検討を行った。結果は,以下の通りである。
重度の範囲に入る子どもは、いわき市が18名,静岡市が7名で、いわき市の方が、重度の範囲に入る子どもが多いことが確認された。そこで,重度の範囲に入っている子どもの個人内差を検討した。
(2)重度の範囲の年長児の個人内差の比較検討
個人内差の比較検討の結果,①Aタイプ:全ての領域のT得点が76以上,②Bタイプ:「社会的動機づけ」以外の領域のT得点が76以上,③Cタイプ:「社会的気づき」「社会的動機づけ」以外の領域のT得点が76以上,④Dタイプ:「社会的コミュニケーション」「興味の限局と反復行動」の領域が76以上,⑤非定型:T得点が76以上の領域がバラバラに出現している5つのタイプに分類された。特徴として、いわき市は非定型のタイプが多く、静岡市は、Aタイプが多いことが確認された。
考 察
日本語版SRS-2対人応答尺度を用いた調査から,いわき市の保育者が日常の保育で感じているとおり,「発達障害」の行動特徴を示している子どもが多くいることが確認された。重度の範囲にいる子どもの個人内差を検討した結果,いわき市の子どもは、発達障害の資質よりも、生活環境的な要因が影響しているのではないかと推測された。