[PD10] 現職教員と教員志望学生の教職観の相違
キーワード:現職教員、教員志望学生、教職観
問題と目的
いじめ・不登校などの生徒指導上の課題や貧困・児童虐待などの問題を抱えた家庭への対応など多種多様化する課題は多く,教員の多忙化が指摘されている。一方,多くの教員は自らの職務が,児童・生徒の心身の発達,人格形成に大きな影響を与えるものであることを自覚し,使命感をもって教育活動に当たり,研究と修養に努めている。
また,平成30年度公立学校教員採用選考(平成31年度採用)において,全国69県市の平均倍率は前年度の4.6倍を下回る4.0倍であり,受験者が減少の一途をたどる一方,合格者数は増加している(教育新聞,2018)。
このような状況の中,現職の教員及び教員志望学生がどのような教職観をもっているのかを捉えることは,これからの教員養成にとって極めて重要なことと考える。そこで,本研究では職業観としての視点から教職観を捉える尺度を開発し,現職の教員及び教員志望学生の教職観を比較する。
方 法
関東甲信越及び東海エリアの小・中・高等学校等に勤務する教員200名及び大学・大学院に在籍する学生200名を対象に2017年7月~11月の間にREAS(リアルタイム評価支援システム)を活用したWEBによる集合調査を行った。有効回答のあった教員は159名(有効回答率79.5%),大学・大学院生は163名(有効回答率81.5%)であった。
結 果
(1)教職観尺度の作成
教職観尺度を作成するために独自に作成した50項目のデータについてα因子法バリマックス回転による探索的因子分析を固有値≧1.0を基準としておこなった。このうち因子負荷量が.4未満の項目と2つ以上の因子に渡って因子負荷量が.35を超えている項目,2項目以下になった因子項目について説明力が不明確であることからこれを除去するといった作業を5回繰り返し行い,最終的に全24項目8因子構造が得られた。
各因子のα係数は,.734~.959で推移しており,概ね許容できる信頼性を示していた。さらに,各因子の各項目を観測変数とし,各因子を潜在変数とした仮説的モデルを作成した結果,モデルの適合度は,NFI=.932,CFI=.969,RMSEA=.049となり,すべての項目の標準化係数に有意な値が得られた。したがって,教職観尺度の8因子構造は因子的に妥当であるとみなすことができる。次に,因子負荷量の高い値を示した項目の内容から,第1因子は「昇進因子」,第2因子は「保護者因子」,第3因子は「社会構築因子」,第4因子は「経済的安定因子」,第5因子は「社会的責任因子」,第6因子は「子ども因子」,第7因子は「生きがい因子」,第8因子は「余暇因子」と命名した。
(2)現職教員の教員志望学生の教職観
現職教員の教員志望学生の教職観について,因子ごとにt検定による比較を行ったところ「保護者因子」「社会構築因子」「子ども因子」において,現職教員の方が有意に高い傾向を示し,「昇進因子」「社会的責任因子」「生きがい因子」において,教員志望学生の方が有意に高い傾向を示していた(Table.1)。
考 察
現職教員の教職観は,他者に関連した因子が高い傾向を示し,教員志望学生の職業観は,自己に関連した因子が高い傾向を示していた。この結果の理由として,学生は職を得る前の段階であることや現場経験の少なさ等が影響を与えていると考えられる。
引用文献
教育新聞社(2018). 今夏教採の最終合格平均倍率4.0倍6年連続で低下 教育新聞 2019年4月2日
いじめ・不登校などの生徒指導上の課題や貧困・児童虐待などの問題を抱えた家庭への対応など多種多様化する課題は多く,教員の多忙化が指摘されている。一方,多くの教員は自らの職務が,児童・生徒の心身の発達,人格形成に大きな影響を与えるものであることを自覚し,使命感をもって教育活動に当たり,研究と修養に努めている。
また,平成30年度公立学校教員採用選考(平成31年度採用)において,全国69県市の平均倍率は前年度の4.6倍を下回る4.0倍であり,受験者が減少の一途をたどる一方,合格者数は増加している(教育新聞,2018)。
このような状況の中,現職の教員及び教員志望学生がどのような教職観をもっているのかを捉えることは,これからの教員養成にとって極めて重要なことと考える。そこで,本研究では職業観としての視点から教職観を捉える尺度を開発し,現職の教員及び教員志望学生の教職観を比較する。
方 法
関東甲信越及び東海エリアの小・中・高等学校等に勤務する教員200名及び大学・大学院に在籍する学生200名を対象に2017年7月~11月の間にREAS(リアルタイム評価支援システム)を活用したWEBによる集合調査を行った。有効回答のあった教員は159名(有効回答率79.5%),大学・大学院生は163名(有効回答率81.5%)であった。
結 果
(1)教職観尺度の作成
教職観尺度を作成するために独自に作成した50項目のデータについてα因子法バリマックス回転による探索的因子分析を固有値≧1.0を基準としておこなった。このうち因子負荷量が.4未満の項目と2つ以上の因子に渡って因子負荷量が.35を超えている項目,2項目以下になった因子項目について説明力が不明確であることからこれを除去するといった作業を5回繰り返し行い,最終的に全24項目8因子構造が得られた。
各因子のα係数は,.734~.959で推移しており,概ね許容できる信頼性を示していた。さらに,各因子の各項目を観測変数とし,各因子を潜在変数とした仮説的モデルを作成した結果,モデルの適合度は,NFI=.932,CFI=.969,RMSEA=.049となり,すべての項目の標準化係数に有意な値が得られた。したがって,教職観尺度の8因子構造は因子的に妥当であるとみなすことができる。次に,因子負荷量の高い値を示した項目の内容から,第1因子は「昇進因子」,第2因子は「保護者因子」,第3因子は「社会構築因子」,第4因子は「経済的安定因子」,第5因子は「社会的責任因子」,第6因子は「子ども因子」,第7因子は「生きがい因子」,第8因子は「余暇因子」と命名した。
(2)現職教員の教員志望学生の教職観
現職教員の教員志望学生の教職観について,因子ごとにt検定による比較を行ったところ「保護者因子」「社会構築因子」「子ども因子」において,現職教員の方が有意に高い傾向を示し,「昇進因子」「社会的責任因子」「生きがい因子」において,教員志望学生の方が有意に高い傾向を示していた(Table.1)。
考 察
現職教員の教職観は,他者に関連した因子が高い傾向を示し,教員志望学生の職業観は,自己に関連した因子が高い傾向を示していた。この結果の理由として,学生は職を得る前の段階であることや現場経験の少なさ等が影響を与えていると考えられる。
引用文献
教育新聞社(2018). 今夏教採の最終合格平均倍率4.0倍6年連続で低下 教育新聞 2019年4月2日