日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-68)

Sun. Sep 15, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PD12] 学生のキャリアレジリエンスと親の養育態度の関連

児玉真樹子 (広島大学)

Keywords:キャリアレジリエンス、養育態度

目  的
 本研究では学生を対象に,“キャリア形成を脅かすリスクに直面した時,それに対処してキャリア形成を促す働きをする心理的特性”と定義されるキャリアレジリエンス(児玉,2015)と,児童期の両親の養育態度の関連を検討する。
方  法
 学生(短期大学生,大学生,大学院生)を対象に,2019年2月にWeb調査を実施した。調査実施にあたり,調査への回答は任意であることを伝えた。回答に不備がない286名分(男子139名,女子147名。平均年齢21歳)のデータを用いて分析した。調査内容は,学生用キャリアレジリエンス尺度(児玉,2017),肯定的・否定的養育行動尺度(伊藤他,2014)であった。前者は調査時点での回答者本人の状態を,後者は児童期における回答者の父親・母親の示していた態度・行動について尋ねた。いずれも4段階評定で回答を求めた。
結果と考察
 キャリアレジリエンスの各構成要素は,問題対応力,ソーシャルスキル,新奇・多様性,未来志向,援助志向であり,各々のα係数を算出したところ,いずれも.70以上であった。養育態度については,関与・見守り,肯定的応答性,意思の尊重,過干渉,非一貫性,厳しい叱責・体罰から成るため,父親,母親それぞれの各因子のα係数を算出したところ,父親,母親共に過干渉因子のα係数の値が.70未満と低かった。そのため過干渉因子は分析から除外した。
 男女別にみた父親・母親の養育態度,キャリアレジリエンスの得点はTable 1のとおりとなった。分散分析の結果,いずれの養育態度も母親の得点の方が父親より有意に高かった。また関与・見守りと肯定的応答性は交互作用がみられ,父親では男女に有意差がなかったが,母親では男子より女子の得点の方が有意に高かった。キャリアレジリエンスについては,t検定の結果,援助志向について女子の得点の方が男子より有意に高かった。
 父親,母親それぞれの養育態度を説明変数,キャリアレジリエンスの各構成要素を目的変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を男女別に行った。その結果,Table 2のとおりとなった。この結果より,父親,母親の肯定的応答性や意思の尊重,母親の関与・見守りがキャリアレジリエンスを促進することが判明した。一方,養育態度の非一貫性は,父親の場合はキャリアレジリエンスに負の影響を示すが,母親の場合は正の影響を示すという一貫しない結果となった。