[PD21] 潜在曲線モデル分析によるアクティブ・ラーニング型授業の効果測定(6)
所属グループにおける集団の作業認識がグループ活動に及ぼす影響
Keywords:アクティブ・ラーニング、所属グループの集団作業認識、潜在曲線モデル分析
近年大学教育において,対話を重視したグループワークといった,アクティブ・ラーニング型授業が導入されてきている。グループで行われる発言活動や協同活動は,それぞれ自己志向的,他者志向的な汎用的能力,態度,および適応感を促進し (佐藤他, 2016),個人及びグループ全体の成績も向上させる (佐藤他, 2017)。このことから,効果的なグループワークのためには,個々人の積極的なグループ活動を促進する必要があるといえる。それでは,授業を通した積極的なグループ活動は,どのような個人要因によって促進されるのだろうか。佐藤他 (2018) では,拒絶感を感じやすい個人のグループ活動が抑制されやすいことを示した。本研究では,自分が所属しているグループがどれだけグループ活動を積極的に行っているかといった所属するグループ環境に対する認識に焦点を当て,条件付き潜在曲線モデルによる検討を行う。
方 法
調査対象者 大学1年生199名 (女性73名,男性126名) で,4~8名の固定メンバーから成る32グループを対象とした。
調査内容 (1) グループワーク活動:杉本(2017) のグループワーク活動尺度10項目で構成される「発言活動」「協同活動」2因子を使用した。 (2) 所属グループにおける集団の作業認識:グループ全体がどのように作業を行っていたと自分が認識しているかを測る15項目を作成し,使用した。
手続き (1) は第2回から第14回の授業終了時に毎回測定し (2) は第15回授業終了時に測定した。
結果と考察
所属グループにおける作業認識について因子分析を行った結果,「コンセンサス」5項目,「メンバーとしての自覚」3項目,「授業外コミュニケーション」3項目の3因子11項目となった。13時点で測定した発言および協同活動得点(各1~4点)の切片および傾きの個人差を説明するものとして,グループ全体の協同活動の3因子を説明変数に仮定した条件付き潜在曲線モデルで分析を行った。説明変数はあらかじめ中心化を行った (Figure 1)。
その結果,発言活動においては,切片の推定値は2.862 (p < .001),傾きの推定値は0.017 (p < .001) であった。つまり,授業を通して発言活動は増加していく。また,切片と傾きに有意な負の共分散がみられ (ψ = -0.007, p < .001),もともと発言活動を行っていない学生ほど,発言活動の伸びは大きかった。傾きの分散に対しては,メンバーとしての自覚 (b = 0.009, p = .024) が有意であった。したがって,所属グループメンバーが全体的に自覚を持って作業していると認識している人ほど,個人の発言活動の伸びが大きかった。
また,協同活動においては,切片の推定値は3.124 (p < .001),傾きの推定値は0.008 (p = .027) であった。つまり,授業を通して協同活動も増加していた。また,切片と傾きに有意な負の共分散がみられ (ψ = -0.008, p = .001),もともと協同活動を行っていない学生ほど,協同活動の伸びが大きかった。傾きの分散に対しては,メンバーとしての自覚 (b = 0.011, p = .017) のパスが有意であった。つまり,所属グループのメンバーが全体的に自覚を持って作業していると認識している人ほど,個人の協同活動の伸びが大きかった。また,切片の分散とコンセンサス (ψ = 0.167, p < .001),メンバーとしての自覚 (ψ = 0.095, p = .023),授業外コミュニケーション (ψ = 0.147, p = .005) との間に正の共分散が見られた。つまり,授業開始時にグループでの協同活動が多い人ほど,所属グループメンバーが全体的にコンセンサスを取ったり,メンバーとしての自覚を持ったり,授業外コミュニケーションを活発に行っていると認識していた。
以上から,所属グループのメンバーが全体的に自覚をもって積極的に作業をしているという認識を,個々のメンバーが持てるような機会を提供したり,働きかけを行ったりしていくことが,グループ中の個々のメンバーの活動をより活性化させるために,重要であることが示唆された。
方 法
調査対象者 大学1年生199名 (女性73名,男性126名) で,4~8名の固定メンバーから成る32グループを対象とした。
調査内容 (1) グループワーク活動:杉本(2017) のグループワーク活動尺度10項目で構成される「発言活動」「協同活動」2因子を使用した。 (2) 所属グループにおける集団の作業認識:グループ全体がどのように作業を行っていたと自分が認識しているかを測る15項目を作成し,使用した。
手続き (1) は第2回から第14回の授業終了時に毎回測定し (2) は第15回授業終了時に測定した。
結果と考察
所属グループにおける作業認識について因子分析を行った結果,「コンセンサス」5項目,「メンバーとしての自覚」3項目,「授業外コミュニケーション」3項目の3因子11項目となった。13時点で測定した発言および協同活動得点(各1~4点)の切片および傾きの個人差を説明するものとして,グループ全体の協同活動の3因子を説明変数に仮定した条件付き潜在曲線モデルで分析を行った。説明変数はあらかじめ中心化を行った (Figure 1)。
その結果,発言活動においては,切片の推定値は2.862 (p < .001),傾きの推定値は0.017 (p < .001) であった。つまり,授業を通して発言活動は増加していく。また,切片と傾きに有意な負の共分散がみられ (ψ = -0.007, p < .001),もともと発言活動を行っていない学生ほど,発言活動の伸びは大きかった。傾きの分散に対しては,メンバーとしての自覚 (b = 0.009, p = .024) が有意であった。したがって,所属グループメンバーが全体的に自覚を持って作業していると認識している人ほど,個人の発言活動の伸びが大きかった。
また,協同活動においては,切片の推定値は3.124 (p < .001),傾きの推定値は0.008 (p = .027) であった。つまり,授業を通して協同活動も増加していた。また,切片と傾きに有意な負の共分散がみられ (ψ = -0.008, p = .001),もともと協同活動を行っていない学生ほど,協同活動の伸びが大きかった。傾きの分散に対しては,メンバーとしての自覚 (b = 0.011, p = .017) のパスが有意であった。つまり,所属グループのメンバーが全体的に自覚を持って作業していると認識している人ほど,個人の協同活動の伸びが大きかった。また,切片の分散とコンセンサス (ψ = 0.167, p < .001),メンバーとしての自覚 (ψ = 0.095, p = .023),授業外コミュニケーション (ψ = 0.147, p = .005) との間に正の共分散が見られた。つまり,授業開始時にグループでの協同活動が多い人ほど,所属グループメンバーが全体的にコンセンサスを取ったり,メンバーとしての自覚を持ったり,授業外コミュニケーションを活発に行っていると認識していた。
以上から,所属グループのメンバーが全体的に自覚をもって積極的に作業をしているという認識を,個々のメンバーが持てるような機会を提供したり,働きかけを行ったりしていくことが,グループ中の個々のメンバーの活動をより活性化させるために,重要であることが示唆された。