日本教育心理学会第61回総会

Presentation information

ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-68)

Sun. Sep 15, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PD27] 演者の印象評定尺度の作成

野村亮太1, ヒュース由美#2 (1.鹿児島純心女子大学, 2.東京大学)

Keywords:印象、演者、聴衆

問題と目的
 聴衆に向けて表現を施す演者は,常に聴衆の評価にさらされている。従来, 患者が医者に与える印象など, 人の印象に関する研究は行われている。 しかし芸術における演者が聴衆に与える印象についてはほとんど知見が蓄積されていない。本稿では,芸人の印象評定に用いられた評定尺度を用いて伝統芸能における演者である噺家の評定を行う。もし,想定された因子構造が再現されれば,本尺度は, より広い領域の演者の印象評定にも使用できると考えられる。
方  法
質問紙 お笑い芸人の特徴を記述する語を収集して作成された印象評定尺度 (野村, 2010) を用いた。この尺度は,独自性尺度,技術・安定性尺度,リズム・にぎやかさ尺度の3つの下位尺度(各7項目)から構成されている。
演者と観客 演者は古今亭文菊氏であった。兄弟子を28人抜きで真打に抜擢され,高い表現力があることで知られている。観客については,落語情報誌やポスターを見て集まった者のうち,質問票への回答を行った95名を対象とした。
手続き 大学の教室で行われた落語会において,質問票を配布し,本研究の演者による二席の落語を鑑賞してもらい,これらの口演を通して演者から受けた印象を評定してもらった。評定にあたっては, 7件尺度を用いた。
結果と考察
因子構造の再現と内的整合性 本研究のデータに先行研究 (野村, 2010) で得られた因子構造が当てはまるか否かを検討するために確証的因子分析を行った。観測変数への因子負荷量はおおむね高く,因子構造が再現された。また,各下位尺度のα係数は,独自性尺度で0.86, 技術・安定性尺度で0.75,リズム・にぎやかさ尺度で0.88であり,十分に高い内的整合性があることが示された(Table 1)。
演者の印象プロフィール 各因子の参加者全員での平均値(標準偏差)は,独自性尺度得点で4.62(1.06),技術・安定性尺度得点で6.04(0.58),リズム・にぎやかさ尺度得点で5.26(0.94)であった。全体的に尺度の中央値4より高かったが,特に技術・安定性尺度得点が際立って高かった。これは,演者の表現力の高さと対応しており,観客が受ける印象を定量できたことを示唆する。
引用文献
野村亮太 (2010) あなたにはこの芸人がおススメです ―芸人評価/位置づけ尺度(GELOS)の構成と信頼性・妥当性の検討― 笑いの科学, 2, 57-62.
付  記
 本研究は,公益財団法人日本教育公務員弘済会平成31年度日教弘本部奨励金の助成をならびに文部科学省科学研究費補助金 基盤研究(C),18KT0076の助成を受けた。