[PD32] 高校生の学びと成長(1)
学びのタイプによる資質・能力の違い
キーワード:卒業時調査、学びのタイプ、資質・能力
問題と目的
近年,初等~高等教育を通じた継続的な資質・能力の育成が求められており,大学と社会を結び付けた実践や研究の報告は数多く行われるようになってきているが,高大接続の観点から高校を対象とした実証的研究は少ない。そこで,本研究では,高校生の学びと成長について卒業時調査のデータを用いて検証する。具体的には,高校生の在学中の学びのタイプにより,卒業時の資質・能力に違いが見られるかを検証する。
方 法
調査対象者:関西の県立高校3年生356名(男子163名,女子193名)を対象に調査を実施し,340名から回答を得た。
調査時期・手続き:2019年1月に高校内でweb形式により一斉に行った。なお,実施に際して,フェイスシートにプライバシーの保護,回答の自由,学校の成績には関係がないことを明記し,参加の同意の有無についてたずねた上で回答を求めた。
調査内容:調査項目は大学生白書2018(溝上, 2018)で用いられているベンチマーク項目を含めた複数の項目で構成した。具体的には,1)高校への志望度,満足度,愛着,2)在学中に力を入れたこと,授業における態度,学習時間,AL型授業への参加の程度,3)資質・能力,4)二つのライフ,進路について考え始めた時期,などであった。
結果と考察
学びのタイプ分け:在学中の学びにより高校生をタイプ分けするために,在学中に力を入れたことに関する5項目を用い,クラスター分析(ward法)を行った。デンドログラムを参考に学びのタイプを5クラスタとした。クラスタ1は,授業内容や知識・教養に力を入れているが,友人関係や課外活動には力を入れていない「授業・知識重視タイプ(75名)」,クラスタ2は,友人関係や課外活動(部活)に力を入れているが,授業内容や知識・教養には力を入れていない「友だち・部活重視タイプ(58名)」,クラスタ3は,課外活動(ボランティア)以外はすべて力を入れている「真面目タイプ(140名)」,クラスタ4は,すべての活動にある程度力を入れており,特に課外活動(ボランティア)に力を入れている「多様な学び重視タイプ(42名)」,クラスタ5は,授業内容にのみ力を入れているが,課外活動にはまったく力を入れていない「授業以外興味なしタイプ(16名)」であった。
学びのタイプによる資質・能力の違い:学びのタイプによって,高校生活において身についた資質・能力に違いが見られるかどうかを検討するために,一要因参加者間分散分析を行った。すべての項目で有意差が認められたため,多重比較(Bonferroni法)を行った(Figure1,2)。その結果,「真面目タイプ」はすべての項目において高い数値であった。そして「多様な学び重視タイプ」も,専門分野に関する基礎的知識,幅広い教養などの項目を除いた多くの項目で高い数値であった。「多様な学び重視タイプ」は,在学中に力を入れたこととして,「高校の授業内容について深く学ぶ」「授業内容に限らず幅広い知識や教養を身につける」の得点は高いわけではなく,「友人をつくる・人間関係を広げる」「課外活動(ボランティア)に力を入れる」の得点が高いタイプである。一方,「友だち・部活重視タイプ」「授業以外興味なしタイプ」は数値が低かった。資質・能力の向上には,授業での知識だけではなく,他者との関わりや正課外での活動などの多様性が重要だと考えらえる。今後は,入学時調査から卒業後調査までを行うことで,生徒の学びの変容について縦断的に明らかにしていく必要があるだろう。
付 記
なお,本研究はJSPS科研費18H01023の助成を受けたものである。
近年,初等~高等教育を通じた継続的な資質・能力の育成が求められており,大学と社会を結び付けた実践や研究の報告は数多く行われるようになってきているが,高大接続の観点から高校を対象とした実証的研究は少ない。そこで,本研究では,高校生の学びと成長について卒業時調査のデータを用いて検証する。具体的には,高校生の在学中の学びのタイプにより,卒業時の資質・能力に違いが見られるかを検証する。
方 法
調査対象者:関西の県立高校3年生356名(男子163名,女子193名)を対象に調査を実施し,340名から回答を得た。
調査時期・手続き:2019年1月に高校内でweb形式により一斉に行った。なお,実施に際して,フェイスシートにプライバシーの保護,回答の自由,学校の成績には関係がないことを明記し,参加の同意の有無についてたずねた上で回答を求めた。
調査内容:調査項目は大学生白書2018(溝上, 2018)で用いられているベンチマーク項目を含めた複数の項目で構成した。具体的には,1)高校への志望度,満足度,愛着,2)在学中に力を入れたこと,授業における態度,学習時間,AL型授業への参加の程度,3)資質・能力,4)二つのライフ,進路について考え始めた時期,などであった。
結果と考察
学びのタイプ分け:在学中の学びにより高校生をタイプ分けするために,在学中に力を入れたことに関する5項目を用い,クラスター分析(ward法)を行った。デンドログラムを参考に学びのタイプを5クラスタとした。クラスタ1は,授業内容や知識・教養に力を入れているが,友人関係や課外活動には力を入れていない「授業・知識重視タイプ(75名)」,クラスタ2は,友人関係や課外活動(部活)に力を入れているが,授業内容や知識・教養には力を入れていない「友だち・部活重視タイプ(58名)」,クラスタ3は,課外活動(ボランティア)以外はすべて力を入れている「真面目タイプ(140名)」,クラスタ4は,すべての活動にある程度力を入れており,特に課外活動(ボランティア)に力を入れている「多様な学び重視タイプ(42名)」,クラスタ5は,授業内容にのみ力を入れているが,課外活動にはまったく力を入れていない「授業以外興味なしタイプ(16名)」であった。
学びのタイプによる資質・能力の違い:学びのタイプによって,高校生活において身についた資質・能力に違いが見られるかどうかを検討するために,一要因参加者間分散分析を行った。すべての項目で有意差が認められたため,多重比較(Bonferroni法)を行った(Figure1,2)。その結果,「真面目タイプ」はすべての項目において高い数値であった。そして「多様な学び重視タイプ」も,専門分野に関する基礎的知識,幅広い教養などの項目を除いた多くの項目で高い数値であった。「多様な学び重視タイプ」は,在学中に力を入れたこととして,「高校の授業内容について深く学ぶ」「授業内容に限らず幅広い知識や教養を身につける」の得点は高いわけではなく,「友人をつくる・人間関係を広げる」「課外活動(ボランティア)に力を入れる」の得点が高いタイプである。一方,「友だち・部活重視タイプ」「授業以外興味なしタイプ」は数値が低かった。資質・能力の向上には,授業での知識だけではなく,他者との関わりや正課外での活動などの多様性が重要だと考えらえる。今後は,入学時調査から卒業後調査までを行うことで,生徒の学びの変容について縦断的に明らかにしていく必要があるだろう。
付 記
なお,本研究はJSPS科研費18H01023の助成を受けたものである。