[PD34] 学級規模による小学校第4学年から第6学年までの学習意欲推移の違い
キーワード:学級規模、パネル調査、学習意欲
問題と目的
学級規模と学習意欲の関係について河村・武蔵 (2008) では,たのしい学級生活を送るためのアンケートQ-U (以下,Q-U, 河村, 1998) を用いて関連を検討した。その結果,小学校第1学年において15人以下の学級は,21人以上の学級よりも高い学習意欲を示し,第2,3学年において15人以下の学級が31人以上の学級よりも,21人から25人の学級が,26人以上の学級よりも高い学習意欲であることが示された。また,第4学年から6学年では,学級規模によって学習意欲に差がないことが示されている。しかし,河村・武蔵 (2008) では,学級規模と学習意欲の関連について,学級規模の小さい学級に所属し続けた場合の学習意欲の変化といった縦断的な検討はなされていない。
そこで本研究では,ある県で実施されている小学校第4-6学年時のQ-Uのパネルデータに,在籍学級の学級規模を結合したデータを用い,学級規模と小学校第4-6学年にかけての学習意欲の推移との関係を検討した。本研究でQ-Uの学習意欲を用いる理由として,対象としたパネルデータにQ-Uが含まれていること,既に実施されているデータを活用することで学校への調査負担をかけずに学習意欲の推移を検討できることが挙げられる。
方 法
対象 パネルデータに含まれる学校のうち,小学校第4-6学年にQ-Uを実施し,かつ,当該児童が第5,6学年に在籍した学年学級数に変動のなかった58学校,児童数2256名を対象とした。
学級規模 調査対象県の教育委員会より提供を受けた学級編成表を用いて求めた各校の該当集団の第4-6学年の平均学級規模で定義した。
学習意欲 Q-Uの学習意欲に関する3項目の合計点を学習意欲とした。
分析モデル 学校における学年時点での児童の学習意欲に対して1年ごとに経過することの影響と,各校の平均学級規模が1年ごとの経過に与える影響を以下のモデルによって推定した。
[時点レベル]
Y_ijk= π_0jk+ π_1jk 〖YEAR〗_ijk+ e_ijk
[児童レベル]
π_0jk= β_0k+ r_1jk
π_1jk= β_1k+ r_2jk
[学校レベル]
β_0k= γ_0+ γ_1 〖CS〗_k+u_1k
β_1k= γ_2+ γ_3 〖CS〗_k+u_2k
なお,CSは3年間の各校の平均学級規模の平均で中心化した。
結果と考察
各学年における学級規模と学習意欲の平均得点と標準偏差をTable 1に,分析モデルの推定結果をTable 2に示す。また,Table 2の結果にもとづいて,対象校の第4-6学年にかけての平均学級規模 (23.87) である場合と平均SD (7.08) 1つ分大きい,小さい場合の第4-6学年の学習意欲の平均的な推移をFigure 1に示す。
以上の結果から,学年が上がるにつれて学習意欲は低下する傾向にあり,さらに大規模学級であると学習意欲の低下が顕著になることが示唆された。それに対して,小規模学級では学習意欲の低下が大規模学級と比較してゆるやかになることが示唆された。
付 記
本研究はJSPS科研費 (基盤研究A: 17H01012)の助成を受けた。
学級規模と学習意欲の関係について河村・武蔵 (2008) では,たのしい学級生活を送るためのアンケートQ-U (以下,Q-U, 河村, 1998) を用いて関連を検討した。その結果,小学校第1学年において15人以下の学級は,21人以上の学級よりも高い学習意欲を示し,第2,3学年において15人以下の学級が31人以上の学級よりも,21人から25人の学級が,26人以上の学級よりも高い学習意欲であることが示された。また,第4学年から6学年では,学級規模によって学習意欲に差がないことが示されている。しかし,河村・武蔵 (2008) では,学級規模と学習意欲の関連について,学級規模の小さい学級に所属し続けた場合の学習意欲の変化といった縦断的な検討はなされていない。
そこで本研究では,ある県で実施されている小学校第4-6学年時のQ-Uのパネルデータに,在籍学級の学級規模を結合したデータを用い,学級規模と小学校第4-6学年にかけての学習意欲の推移との関係を検討した。本研究でQ-Uの学習意欲を用いる理由として,対象としたパネルデータにQ-Uが含まれていること,既に実施されているデータを活用することで学校への調査負担をかけずに学習意欲の推移を検討できることが挙げられる。
方 法
対象 パネルデータに含まれる学校のうち,小学校第4-6学年にQ-Uを実施し,かつ,当該児童が第5,6学年に在籍した学年学級数に変動のなかった58学校,児童数2256名を対象とした。
学級規模 調査対象県の教育委員会より提供を受けた学級編成表を用いて求めた各校の該当集団の第4-6学年の平均学級規模で定義した。
学習意欲 Q-Uの学習意欲に関する3項目の合計点を学習意欲とした。
分析モデル 学校における学年時点での児童の学習意欲に対して1年ごとに経過することの影響と,各校の平均学級規模が1年ごとの経過に与える影響を以下のモデルによって推定した。
[時点レベル]
Y_ijk= π_0jk+ π_1jk 〖YEAR〗_ijk+ e_ijk
[児童レベル]
π_0jk= β_0k+ r_1jk
π_1jk= β_1k+ r_2jk
[学校レベル]
β_0k= γ_0+ γ_1 〖CS〗_k+u_1k
β_1k= γ_2+ γ_3 〖CS〗_k+u_2k
なお,CSは3年間の各校の平均学級規模の平均で中心化した。
結果と考察
各学年における学級規模と学習意欲の平均得点と標準偏差をTable 1に,分析モデルの推定結果をTable 2に示す。また,Table 2の結果にもとづいて,対象校の第4-6学年にかけての平均学級規模 (23.87) である場合と平均SD (7.08) 1つ分大きい,小さい場合の第4-6学年の学習意欲の平均的な推移をFigure 1に示す。
以上の結果から,学年が上がるにつれて学習意欲は低下する傾向にあり,さらに大規模学級であると学習意欲の低下が顕著になることが示唆された。それに対して,小規模学級では学習意欲の低下が大規模学級と比較してゆるやかになることが示唆された。
付 記
本研究はJSPS科研費 (基盤研究A: 17H01012)の助成を受けた。