[PD36] 社会情動的コンピテンスを育成するカリキュラム開発の基礎研究
協働的学び合いを中心とした21世紀型スキル向上を手がかりとして
キーワード:社会情動的コンピテンス、21世紀型スキル、カリキュラム開発
旧来,人の生涯にわたる適応を支える能力として,知能指数(IQ)に代表される認知的な能力に主たる関心が向けられてきた。しかし,AIの台頭により,今までの生活や教育の在り方が一変する時代となることが予想される21世紀においては,社会情動的コンピテンス(非認知スキル)の向上が,記憶力や学力,IQなどの「賢さ」に関する認知スキルよりも社会的成功に結びつきやすいと言われている(Heckman, 2008)。
昨年度の勤務校であるO市立A小学校では,平成31年社会科全国大会の開催に向けて,「協働的学び合い」を中核にすえて,特色ある教育活動を行う中で,21世紀型スキルの向上を図り,平成30年度全国学力学習・状況調査において,顕著に高い結果を得ている。そこで,同様の学力の高さを示すA小学校や学力の低いC小学校との比較から,A小学校における社会情動的コンピテンスや21世紀型スキルの特長を明らかにする。その結果から,A小学校のカリキュラムを発展させ,社会情動的コンピテンスや21世紀型スキルの育成につながる統合的なカリキュラムの提案を試みる。
方 法
調査対象者 A校(5年生男40名,女27名;6年生男35名,女47名,不明1名),B校(5年生男49名,女40名;6年生男45名,女45名),C校(5年生男40名,女41名;6年生男34名,女41名)の児童を対象に,2018年12月に,各学級の担任が学活を使って調査を実施した。なお,平成30年度全国学力学習状況調査の教科平均正答率は,A校70.5%,B校66%,C校58.2%であった。
測定内容
21世紀型スキルに相当する授業場面の批判的学習態度(楠見他, 2015;8項目,5件法),友達と会話をするスキル(山口他, 2005;5項目,4件法),他者理解スキル(東海林他, 2012;4項目,3件法),貢献度・所属感・信頼感(高坂, 2014;9項目,5件法)の4尺度,非認知能力に相当する集団場面で自分をおさえるスキル(山口他, 2005;5項目,4件法),行動の積極性・能力の社会的位置づけ(赤松他, 2005;12項目,4件法),共感性・視点取得・共感的関心(長谷川他, 2009;15項目,5件法),根気・一貫性(西川他, 2015;8項目,5件法)の4尺度を実施した。
結果と考察
上記の各尺度を従属変数,学校別(3校)を要因とする分散分析を行った。「授業場面の批判的学習態度」(F (2,492)=37.575, p =.000),「友達と会話をするスキル」(F (2,493)=23.696, p =.000),「他者理解スキル」(F (2,492)=0.319, ns),「貢献度」(F (2,492)=13.570, p =.000),「所属感・信頼感」(F (2,492)=12.349, p =.000),「集団場面で自分をおさえるスキル」(F (2,493)=17.869, p =.000),「行動の積極性」(F (2,487)=3.471, p =.032),「能力の社会的位置づけ」(F (2,490)=3.103, ns),「共感性・視点取得」(F (2,490)=7.114, p =.001),「共感性・共感的関心」(F (2,489)=8.958, p =.000),「根気」(F (2,491)=6.608, p =.001)「一貫性」(F (2,491)=3.358, p =.036)という結果を得た。「他者理解スキル」「能力の社会的位置づけ」を除くすべての尺度で有意となり,多重比較の結果,おおむねA校の得点がB校やC校を上回ることが示された(Figure 1)。
A小学校の社会情動的コンピテンスや21世紀型スキルの高さが実証されたことから,同校のカリキュラムを発展させ,学校内外の活動に「自己調整学習」を核に据えたサイクルを位置づけ,「教科」「総合」「学校行事」「学級活動」「部活動」など,学校内外のあらゆる活動に対して,自らをモニタリングしながら,自分で立てた目標を最後までやりきれる生徒の育成を図る。また,「探求的会話を支えるグランド・ルール」(Wegerif et al., 1999)を参考に,話し合いのスキルを高めていく。
このような活動を浸透させることは,社会情動的コンピテンスや21世紀型スキルのさらなる向上を図ることが有効であるといえる。今後は,O市内の他の小中学校において,本研究の結果から提案されたカリキュラムを実践して効果検する。
昨年度の勤務校であるO市立A小学校では,平成31年社会科全国大会の開催に向けて,「協働的学び合い」を中核にすえて,特色ある教育活動を行う中で,21世紀型スキルの向上を図り,平成30年度全国学力学習・状況調査において,顕著に高い結果を得ている。そこで,同様の学力の高さを示すA小学校や学力の低いC小学校との比較から,A小学校における社会情動的コンピテンスや21世紀型スキルの特長を明らかにする。その結果から,A小学校のカリキュラムを発展させ,社会情動的コンピテンスや21世紀型スキルの育成につながる統合的なカリキュラムの提案を試みる。
方 法
調査対象者 A校(5年生男40名,女27名;6年生男35名,女47名,不明1名),B校(5年生男49名,女40名;6年生男45名,女45名),C校(5年生男40名,女41名;6年生男34名,女41名)の児童を対象に,2018年12月に,各学級の担任が学活を使って調査を実施した。なお,平成30年度全国学力学習状況調査の教科平均正答率は,A校70.5%,B校66%,C校58.2%であった。
測定内容
21世紀型スキルに相当する授業場面の批判的学習態度(楠見他, 2015;8項目,5件法),友達と会話をするスキル(山口他, 2005;5項目,4件法),他者理解スキル(東海林他, 2012;4項目,3件法),貢献度・所属感・信頼感(高坂, 2014;9項目,5件法)の4尺度,非認知能力に相当する集団場面で自分をおさえるスキル(山口他, 2005;5項目,4件法),行動の積極性・能力の社会的位置づけ(赤松他, 2005;12項目,4件法),共感性・視点取得・共感的関心(長谷川他, 2009;15項目,5件法),根気・一貫性(西川他, 2015;8項目,5件法)の4尺度を実施した。
結果と考察
上記の各尺度を従属変数,学校別(3校)を要因とする分散分析を行った。「授業場面の批判的学習態度」(F (2,492)=37.575, p =.000),「友達と会話をするスキル」(F (2,493)=23.696, p =.000),「他者理解スキル」(F (2,492)=0.319, ns),「貢献度」(F (2,492)=13.570, p =.000),「所属感・信頼感」(F (2,492)=12.349, p =.000),「集団場面で自分をおさえるスキル」(F (2,493)=17.869, p =.000),「行動の積極性」(F (2,487)=3.471, p =.032),「能力の社会的位置づけ」(F (2,490)=3.103, ns),「共感性・視点取得」(F (2,490)=7.114, p =.001),「共感性・共感的関心」(F (2,489)=8.958, p =.000),「根気」(F (2,491)=6.608, p =.001)「一貫性」(F (2,491)=3.358, p =.036)という結果を得た。「他者理解スキル」「能力の社会的位置づけ」を除くすべての尺度で有意となり,多重比較の結果,おおむねA校の得点がB校やC校を上回ることが示された(Figure 1)。
A小学校の社会情動的コンピテンスや21世紀型スキルの高さが実証されたことから,同校のカリキュラムを発展させ,学校内外の活動に「自己調整学習」を核に据えたサイクルを位置づけ,「教科」「総合」「学校行事」「学級活動」「部活動」など,学校内外のあらゆる活動に対して,自らをモニタリングしながら,自分で立てた目標を最後までやりきれる生徒の育成を図る。また,「探求的会話を支えるグランド・ルール」(Wegerif et al., 1999)を参考に,話し合いのスキルを高めていく。
このような活動を浸透させることは,社会情動的コンピテンスや21世紀型スキルのさらなる向上を図ることが有効であるといえる。今後は,O市内の他の小中学校において,本研究の結果から提案されたカリキュラムを実践して効果検する。