日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-68)

2019年9月15日(日) 10:00 〜 12:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PD37] 児童生徒のあいさつ・感謝・謝罪スキルと学校適応感の関連に関する調査研究(1)

小学校担任教師のスキル実行に対する自己評定からの検討

藤枝静暁1, 藤原健志2, 和気淑江3, 相川充4 (1.埼玉学園大学, 2.埼玉学園大学, 3.埼玉学園大学大学院, 4.筑波大学)

キーワード:小学校、担任教師、ソーシャルスキル

目  的
 大対・大竹・松見(2007)は,学校不適応問題に対して効果的に予防介入を実施するためには,子どもの学校適応の正確かつ妥当なアセスメントが必要になると述べ,学校適応アセスメントの3水準モデル(3水準モデルと記す)を提案した。本研究では,3水準モデルの水準1の環境要因として,教師自身があいさつ・感謝・謝罪スキルをどの程度実行しているかと実行する理由を調査し,明らかにする。分析では,小学校現場では今日急速に若手・新人教員が増加している実態を踏まえ,年代差と性差を検討する。
方  法
調査対象者,時期,手続き 関東のある地区の小学校70校の教師94名であった。アンケート調査は2018年夏休みに開催された教員研修会で行われた。
調査内容 まず,性別,勤務年数,年齢層,担当学年と非担任の場合の役割を尋ねた。教師から見た児童の以下の様子を尋ねた。水準1である「あいさつスキル」,「感謝スキル」,「謝罪スキル」に関して,教師自身の実行と児童の実行について3項目ずつ計9項目を尋ねた。教師自身が実行する理由を自由記述法で尋ねた。また,「ルール遵守」と「感情制御」について各1項目を尋ねた。水準2として「人間関係」「助け合い」「学習活動」,水準3として「学級生活安心感」の各1項目,計4項目を尋ねた。回答は全て4件法であった。最後に,子ども達にとって必要と思われるソーシャルスキルを自由記述法で尋ねた。
倫理的配慮 研修会主催者よりアンケート実施許可を得た。また,調査対象者には,回答は自由であること,無記名でよいこと,個人情報保護を遵守することなどを伝え,同意を得た。
結果と考察
分析対象者 回答に不備があった者,担任をしていない者を除外し,60校の担任教師70名を分析対象とした。分析対象者の特徴は,男性34名,女性36名であった。20歳代が42名(60%)と多く,残りが30歳代(14%),40歳代(14%),50歳代(11%)であった。それゆえに,20歳代と30歳代以上に分けて分析する。勤務年数の全体平均は9.68(9.54)年であった。20歳代は3.94(SD=2.12)年,30歳代以上のそれは18.29(SD=9.90)年であり有意に高かった(t=(28.66)=7.56, p<.01)。
教師自身の3つのスキルの実行に対する自己認知の結果 各スキルについて,年代(20歳代・30歳代以上の2水準)×性(男・女の2水準)の2要因分散分析を行った。あいさつスキルにおいて性の有意傾向が見られ(F(1,66)=3.47,p<.07),男(3.73点)<女(3.92点)であった。その理由の一例として,「互いの気持ちがよくなるように。コミュニケーションの1つとして。(20歳代,女)」であった。感謝スキルにおいて有意傾向の交互作用が見られ(F(1,66)=3.81,p<.06),30歳代以上において男(3.50点)<女(3.83点)(p<.05)であり,男において,30歳代以上(3.50点)<20歳代(3.89点)(p<.01)であった。その理由として,「率先して自分から挨拶をすることによって子ども達にも見習ってもらいたい。(20歳代,男)」があった。謝罪スキルにおいて有意な交互作用が見られ(F(1,66)=10.04,p<.01),30歳代以上において男(3.38点)<女(3.92点)(p<.01)であり,男において,30歳代以上(3.38点)<20歳代(3.89点)(p<.01)であった。その理由として,「子どもより先にを心がけている(30歳代,女)」があった。20歳代の教師がより積極的にスキルを実行していると自己評価している実態が明らかになった。