日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-68)

Sun. Sep 15, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PD48] 新任教員におけるバーンアウト傾向と離職意思の経時的変化

奥村太一1, 宮下敏恵2, 増井晃3, 森慶輔4, 北島正人5 (1.上越教育大学, 2.上越教育大学, 3.栃木県立岡本台病院, 4.足利大学, 5.秋田大学)

Keywords:新任教員、バーンアウト、離職意思

問題と目的
 教師の働き方改革が学校教育における喫緊の課題として注目されるようになっている。中央教育審議会は,「ブラック学校」という言葉を引用しながら,教師の長時間労働について強い懸念を示している(中央教育審議会, 2019)。この中では,この10年間に小・中学校教師の勤務時間が増加している要因として,(1)若手教師の増加,(2)総授業時数の増加,(3)中学校における部活動の指導時間の増加の3つが挙げられている。若手教師の長時間労働に関しては,業務経験の少なさとベテラン教員の大量退職に伴うサポート体制の不備が指摘されており,学校組織全体の中で若手教師を支えていくことが重要であると述べられている。公立学校を対象とした各種統計調査では,精神疾患により離職する教師の割合が平成23年度までの10年間で倍増していることや,条件附採用期間中に病気を理由に離職した教師のうち約9割が精神疾患によるものであることなどが明らかになっている(教職員のメンタルヘルス対策検討会議, 2013)。
 このような実態を勘案すれば,若手教師については特に採用1年目の段階からメンタルヘルスの状態をきめ細かく把握することが予防的観点からも重要だと言えるだろう。労働安全衛生法の改正に伴って多くの学校でストレスチェックが取り入れられるようになっているが,年に1回程度の限られた機会であり,セルフケアやラインケアに生かしていくには十分とは言えない。
 本研究は,教師として新たに働き始めた人たちのバーンアウト傾向や離職意思について採用直後から追跡調査を実施し,年間を通じた変化について考察しようとするものである。
方  法
調査対象者 国立大学Xの教員養成課程を卒業・修了し新たに教師として採用された8名(女性7名,男性1名)を調査対象者とした。
調査の方法 2018年4月から1年間にわたって,月に1度のペースで勤務時間,日本版MBI-ES(奥村他, 2015),離職意思等についてオンライン調査を実施した。同一対象者を追跡するため,奥村 (2019) による縦断調査システムを利用した。
倫理的配慮 本研究は上越教育大学研究倫理審査委員会の承認を得ている(No.2017-89)。
結果と考察
 Figure 1 は,日本版MBI-ESの下位尺度(情緒的消耗感[EE],個人的達成感[PA],脱人格化[Dp])の各得点(1-7点)と離職意思(Turnover)の得点(1-5点)について,月別の平均をプロットしたものである。
 情緒的消耗感と脱人格化のピークが年末にかけて生じること,個人的達成感にはあまり目立った変化がないこと,夏休みにバーンアウト傾向が全体として多少改善すること,離職意思は年度を通じて徐々に高まっていくことなどが見て取れる。
引用文献
中央教育審議会 (2019), 新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)(平成31年1月25日)
教職員のメンタルヘルス対策検討会議 (2013). 教職員のメンタルヘルス対策について(最終まとめ)(平成25年3月29日)
奥村太一 (2019). Google Apps を用いたオンライン縦断調査システムの構築 上越教育大学研究紀要, 38(2), 239-250.
奥村太一・森慶輔・宮下敏恵・西村昭徳・北島正人 (2015). 日本版MBI-ESの作成と信頼性・妥当性の検証 心理学研究, 86(4), 323-332.
付  記
本研究はJSPS科研費JP16K04348および上越教育大学研究プロジェクトの助成を受けて実施