[PD53] 養護教諭のコーディネーション行動に関するモデルの検討
コーディネーション行動に強く影響する要因
キーワード:コーディネーション行動、モデル、養護教諭
問 題
近年,養護教諭にはコーディネーションに関する力量形成が一層求められるようになってきている。コーディネーション行動の生起に至るまでにどのような要因が関わっているのか,またそこに至るプロセスはどのようになっているのであろうか。先行研究では,プロアクティブなパーソナリティ・職業的自律・同僚の信頼・支援的なスーパービジョン・自己効力感・柔軟な役割志向の要因が職場におけるプロアクティブな行動に影響し(Parker et al,2006),職員間や管理職との関係,職場の雰囲気,職に対する自律性などが養護教諭の学校組織への関与に影響している(鈴木,2019)。本研究では,養護教諭のコーディネーションに関するモデルを作成する全段階として,先行研究で示された各要因の,コーディネーション行動に対する影響について検討する。
方 法
対象 22都府県の小・中学校養護教諭1,500名
時期 2018年5月~8月
方法 郵送法による質問紙調査の実施
プロアクティブな行動の要因 プロアクティブ
なパーソナリティ,養護教諭の専門職的自律性,
同僚の信頼,管理職のリーダーシップ,協働的職
場風土,同調的職場風土,養護教諭の自己効力
感,養護教諭の柔軟な役割志向,養護教諭の個別
支援コーディネーション行動,養護教諭のシステ
ムコーディネーション行動
結果と考察
(1)回答者数:700名(回収率46.7%)
(2)コーディネーション行動に影響を与える要因を検討するために,コーディネーション行動を従属変数,各要因を独立変数とする重回帰分析(強制投入法)を行った(Table1)。その結果,二つの従属変数について調整済みR 2値が有意となり,養護教諭の個別支援コーディネーション行動とシステムコーディネーション行動は,全ての要因と関連していることが確認された。また,プロアクティブなパーソナリティ,職業的自律性,自己効力感,柔軟な役割志向は二つの従属変数に対して正の関連をもっていた。
一方,同僚の信頼と校長のリーダーシップは,二つのコーディネーション行動との相関係数では正の有意な関連であったが,標準偏回帰係数は負の有意な関連を示した。相関係数と標準偏回帰係数が異符号で,それぞれが有意になる場合は多重共線性の可能性がある。検討の結果,問題は見られなかった(VIF:校長1.38,同僚2.27)。そこで, コーディネーション行動が人的環境に影響を受けることを予想して,独立変数を同僚の信頼,校長のリーダーシップ,協働的職場風土,同調的職場風土の4つに絞り,コーディネーション行動との関連を検討した。その結果,協働的職場風土と同僚の信頼,さらに個別コーディネーション行動は相互に有意に正の関連をもつことが示された。また,協働的職場風土とシステムコーディネーション行動も有意な関連を示した。調整済みR 2値が高くはないが有意であることから,協働的場風土がコーディネーション行動に影響を及ぼすことが示唆された。
以上から,本研究では独立変数とコーディネーション行動との関連が明らかになった。そして,同調的職場風土がコーディネーション行動と負の関連があることを確認した。今後はこれらの要因の因果関係を明らかにしていく必要がある。
回答者には,回答の途中でも中止できることを説明した上で実施した。また,本調査は広島文化学園大学研究倫理委員会にて承認後に実施した。
引用文献
鈴木 薫(2019).養護教諭のコーディネーション行動に関する研究動向と課題 子ども学論集,4,41-54.
Parker, S.K., Williams,H.M.,& Nick,T.(2006). Modeling the Antecedents of Proactive Behavior at Work. Journal of Applied Psychology,91(3), 636–652.
近年,養護教諭にはコーディネーションに関する力量形成が一層求められるようになってきている。コーディネーション行動の生起に至るまでにどのような要因が関わっているのか,またそこに至るプロセスはどのようになっているのであろうか。先行研究では,プロアクティブなパーソナリティ・職業的自律・同僚の信頼・支援的なスーパービジョン・自己効力感・柔軟な役割志向の要因が職場におけるプロアクティブな行動に影響し(Parker et al,2006),職員間や管理職との関係,職場の雰囲気,職に対する自律性などが養護教諭の学校組織への関与に影響している(鈴木,2019)。本研究では,養護教諭のコーディネーションに関するモデルを作成する全段階として,先行研究で示された各要因の,コーディネーション行動に対する影響について検討する。
方 法
対象 22都府県の小・中学校養護教諭1,500名
時期 2018年5月~8月
方法 郵送法による質問紙調査の実施
プロアクティブな行動の要因 プロアクティブ
なパーソナリティ,養護教諭の専門職的自律性,
同僚の信頼,管理職のリーダーシップ,協働的職
場風土,同調的職場風土,養護教諭の自己効力
感,養護教諭の柔軟な役割志向,養護教諭の個別
支援コーディネーション行動,養護教諭のシステ
ムコーディネーション行動
結果と考察
(1)回答者数:700名(回収率46.7%)
(2)コーディネーション行動に影響を与える要因を検討するために,コーディネーション行動を従属変数,各要因を独立変数とする重回帰分析(強制投入法)を行った(Table1)。その結果,二つの従属変数について調整済みR 2値が有意となり,養護教諭の個別支援コーディネーション行動とシステムコーディネーション行動は,全ての要因と関連していることが確認された。また,プロアクティブなパーソナリティ,職業的自律性,自己効力感,柔軟な役割志向は二つの従属変数に対して正の関連をもっていた。
一方,同僚の信頼と校長のリーダーシップは,二つのコーディネーション行動との相関係数では正の有意な関連であったが,標準偏回帰係数は負の有意な関連を示した。相関係数と標準偏回帰係数が異符号で,それぞれが有意になる場合は多重共線性の可能性がある。検討の結果,問題は見られなかった(VIF:校長1.38,同僚2.27)。そこで, コーディネーション行動が人的環境に影響を受けることを予想して,独立変数を同僚の信頼,校長のリーダーシップ,協働的職場風土,同調的職場風土の4つに絞り,コーディネーション行動との関連を検討した。その結果,協働的職場風土と同僚の信頼,さらに個別コーディネーション行動は相互に有意に正の関連をもつことが示された。また,協働的職場風土とシステムコーディネーション行動も有意な関連を示した。調整済みR 2値が高くはないが有意であることから,協働的場風土がコーディネーション行動に影響を及ぼすことが示唆された。
以上から,本研究では独立変数とコーディネーション行動との関連が明らかになった。そして,同調的職場風土がコーディネーション行動と負の関連があることを確認した。今後はこれらの要因の因果関係を明らかにしていく必要がある。
回答者には,回答の途中でも中止できることを説明した上で実施した。また,本調査は広島文化学園大学研究倫理委員会にて承認後に実施した。
引用文献
鈴木 薫(2019).養護教諭のコーディネーション行動に関する研究動向と課題 子ども学論集,4,41-54.
Parker, S.K., Williams,H.M.,& Nick,T.(2006). Modeling the Antecedents of Proactive Behavior at Work. Journal of Applied Psychology,91(3), 636–652.