[PD55] 小学校教員における感情体験の社会的共有が協働的職場風土に与える影響
Keywords:小学校教員、感情体験の社会的共有、協働的職場風土
問 題
「チームとしての学校(中央教育審議会,2015)」運営が求められる小学校の現場において,教員間の協働を実現する職場風土づくりは重要な検討課題といえる。本研究では小学校における協働的職場風土(Collaborative School Climates:CSC)に影響する要因として小学校教員による感情体験の社会的共有に着目し,その影響を分析することを目的とする。この研究では小学校教員の感情体験として彼らが体験するポジティブ,ネガティブ職業生活出来事(Positive, Negative Work Life Events:PWLEおよびNWLE)を取り上げ,社会的共有をPWLEおよびNWLEの開示行動(PWLE, NWLE Disclosure:PWLE-DおよびNWLE-D)と,それらに対する応答行動(Responses to PWLE-D, NWLE-D:PWLE-RおよびNWLE-R)によって捉えた。またCSC以外の感情体験の社会的共有に関する各概念のエピソードは,個々の対人援助職者内で日常的に体験されるWithinレベルの側面を持つと考える。よってWithinレベルでの感情体験の社会的共有がもたらす影響も検討するために,モデル1,2(Figure 1)を用いてマルチレベル構造方程式モデリング(Multilevel Structural Equation Modeling:MSEM)分析を行った。
方 法
調査は2018年5月にWebを用いて行われた。具体的には,調査会社から調査内容を示したWeb画面が週に1回ずつ3回配信され,そのWeb画面から回答が得られた。なお,調査内容についてはWeb画面の最初で調査対象者に説明し,調査参加への同意を得た。調査対象者は調査会社のモニター会員より現職場に1年以上勤務している小学校教員が選ばれた。その後3回の調査に全て参加し,かつ回答時に努力の最小限化(Satisfice)が認められないと判断された47人を調査の対象者とした。調査対象者の平均年齢(標準偏差)は48歳(9.791),性別人数は男性30人,女性17人であった。調査対象者にはPWLEとNWLE(Morimoto & Inada, 2018)と,PWLE-D,PWLE-R,NWLE-D,NWLE-R(未公刊)を測定する項目に対し,各1週間の体験頻度を評定させた。またCSCは3回目の調査時に淵上(2005)が作成した項目について自身の職場に当てはまる程度を評定させた。得られたデータは各調査回の変数ごとに総計して得点化した。MSEM分析はMplus version7.4で行った。
結果と考察
MSEM分析を行うあたりCSC以外の変数のデータの階層性を確認するため級内相関係数とデザインエフェクトを算出した(清水,2014,2016)。その結果,各データに階層性があることが認められた。
MSEM分析で算出されたパス係数とその検定結果をFigure 1に示す。モデル1のパス係数より,Withinレベルの傾向としてPWLE-Dのみ,またはPWLE-DとPWLE-Rの両者の体験頻度を高いと評定すると,PWLEの体験頻度も高い評定すると考えられる。そしてBetweenレベルである対人援助職者間の集団的傾向としては上記と同様の傾向に加え,自らの職場はCSCに当てはまる程度が高いと評定すると考えられる。モデル2のパス係数からWithinレベルの傾向としてNWLE-Dの体験頻度を高いと評定するとNWLEの体験頻度も高いと評定すると考えられる。さらにBetweenレベルではNWLE-Dの体験頻度を高いと評定するとNWLEの体験頻度も高いと評定してCSCに当てはまる程度は低いと評定するが,一方NWLE-Dに加えNWLE-Rの体験頻度も高いと評定するとNWLEの体験頻度は低いと評定してCSCに当てはまる程度は高いと評定する傾向にあると考えられる。
「チームとしての学校(中央教育審議会,2015)」運営が求められる小学校の現場において,教員間の協働を実現する職場風土づくりは重要な検討課題といえる。本研究では小学校における協働的職場風土(Collaborative School Climates:CSC)に影響する要因として小学校教員による感情体験の社会的共有に着目し,その影響を分析することを目的とする。この研究では小学校教員の感情体験として彼らが体験するポジティブ,ネガティブ職業生活出来事(Positive, Negative Work Life Events:PWLEおよびNWLE)を取り上げ,社会的共有をPWLEおよびNWLEの開示行動(PWLE, NWLE Disclosure:PWLE-DおよびNWLE-D)と,それらに対する応答行動(Responses to PWLE-D, NWLE-D:PWLE-RおよびNWLE-R)によって捉えた。またCSC以外の感情体験の社会的共有に関する各概念のエピソードは,個々の対人援助職者内で日常的に体験されるWithinレベルの側面を持つと考える。よってWithinレベルでの感情体験の社会的共有がもたらす影響も検討するために,モデル1,2(Figure 1)を用いてマルチレベル構造方程式モデリング(Multilevel Structural Equation Modeling:MSEM)分析を行った。
方 法
調査は2018年5月にWebを用いて行われた。具体的には,調査会社から調査内容を示したWeb画面が週に1回ずつ3回配信され,そのWeb画面から回答が得られた。なお,調査内容についてはWeb画面の最初で調査対象者に説明し,調査参加への同意を得た。調査対象者は調査会社のモニター会員より現職場に1年以上勤務している小学校教員が選ばれた。その後3回の調査に全て参加し,かつ回答時に努力の最小限化(Satisfice)が認められないと判断された47人を調査の対象者とした。調査対象者の平均年齢(標準偏差)は48歳(9.791),性別人数は男性30人,女性17人であった。調査対象者にはPWLEとNWLE(Morimoto & Inada, 2018)と,PWLE-D,PWLE-R,NWLE-D,NWLE-R(未公刊)を測定する項目に対し,各1週間の体験頻度を評定させた。またCSCは3回目の調査時に淵上(2005)が作成した項目について自身の職場に当てはまる程度を評定させた。得られたデータは各調査回の変数ごとに総計して得点化した。MSEM分析はMplus version7.4で行った。
結果と考察
MSEM分析を行うあたりCSC以外の変数のデータの階層性を確認するため級内相関係数とデザインエフェクトを算出した(清水,2014,2016)。その結果,各データに階層性があることが認められた。
MSEM分析で算出されたパス係数とその検定結果をFigure 1に示す。モデル1のパス係数より,Withinレベルの傾向としてPWLE-Dのみ,またはPWLE-DとPWLE-Rの両者の体験頻度を高いと評定すると,PWLEの体験頻度も高い評定すると考えられる。そしてBetweenレベルである対人援助職者間の集団的傾向としては上記と同様の傾向に加え,自らの職場はCSCに当てはまる程度が高いと評定すると考えられる。モデル2のパス係数からWithinレベルの傾向としてNWLE-Dの体験頻度を高いと評定するとNWLEの体験頻度も高いと評定すると考えられる。さらにBetweenレベルではNWLE-Dの体験頻度を高いと評定するとNWLEの体験頻度も高いと評定してCSCに当てはまる程度は低いと評定するが,一方NWLE-Dに加えNWLE-Rの体験頻度も高いと評定するとNWLEの体験頻度は低いと評定してCSCに当てはまる程度は高いと評定する傾向にあると考えられる。