日本教育心理学会第61回総会

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ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-68)

Sun. Sep 15, 2019 10:00 AM - 12:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PD58] 縦断調査による中学校3年間の自尊感情と被受容感の比較検討

木下雅博1, 大西彩子2 (1.甲南大学, 2.甲南大学)

Keywords:自尊感情、被受容感、縦断調査

問題と目的
 文部科学省(2018)によれば,2017年度の中学校における不登校者数は約109,000名存在し,全体の生徒数が減少する一方で,不登校者数は増加傾向にある。また,学年別の不登校者数は,1年生が約28,000名,2年生が約39,500名,3年生が約41,500名と,学年が上がるごとに増加している。学校への登校意欲は,教室への参入意欲と深くかかわっているとされており(竹川,1993),学年が上がるにつれて,教室へ参入しづらくなることが予測される。本研究では,この参入のしづらさに注目し,参入しづらい状況を,被受容感が低い状態と捉え,中学3年間の被受容感の比較検討を行う。
 さらに,自尊感情は,他者からの受容の程度を示すメーターであるというソシオメーター理論に則り(Leary,1999),被受容感と関連する指標として,自尊感情もともに比較検討する。
方  法
調査協力者・調査時期 近畿地方に存在する公立中学校2校に在籍する中学生を対象とし2016年12月(1年次,271名;男子136名,女子135名),2017年12月(2年次,294名;男子147名,女子147名),2018年12月(3年次,270名;男子134名,女子136名)に縦断調査を行った。このうち全学年で回答し記入ミスのなかった208名(男子98名,女子110名)を分析の対象とした。
調査項目 フェイスシート(性別・年齢),被受容感尺度 (鈴木・小川,2008)6項目,自尊感情尺度(鈴木・小川(2008)の自尊心尺度を基に,現職の中学教諭と相談して文言を修正した)6項目を使用し,全て3件法(0~2)で評定を求めた。
結  果
 各学年時の被受容感尺度,自尊感情尺度に対し因子分析(最尤法・プロマックス回転)を行った。固有値の減衰状況と因子の解釈可能性に基づき,すべての学年時の被受容感尺度,自尊感情尺度ともに1因子解を採用した。被受容感尺度の因子は「被受容感」(6項目,α=.86~.90),自尊感情尺度の因子は「自尊感情」(6項目,α=.83~.85)と命名した。
 各因子の合計得点を因子得点とし,3学年間の差を検討するために,被験者内の分散分析を行った。その結果,被受容感は,学年間で有意な差が認められた(F(1.90, 362.54)=9.51, p<.001)。また,自尊感情も学年間で有意な差が認められた(F(1.94, 369.63)=9.12, p<.001)。そのため,多重比較を行ったところ,被受容感は3年生,2年生よりも1年生の方が低いことが明らかになった。また,自尊感情は,3年生よりも,2年生,1年生の方が低いことが明らかになった。
考  察
 本研究の結果は,学年が上がると,教室へ参入しづらくなるという当初の予測とは反対に,1年生の時よりも3年生の時の方が,教室での被受容や自尊感情が高いという結果であった。学年が上がり,同じ学校で,同期の生徒と過ごした時間が長くなることで,受け入れられている感じが高まったのではないだろうか。
 本研究は,学校に登校可能な生徒のみを対象とした調査であった。そのため,対象者が選択されており,学校に登校できる程には適応的な生徒における結果となったのではないかと考えられる。