[PD59] 小学校教員によるユーモア表出の児童の認知とスクールモラールとの関連
Keywords:小学校教員、ユーモア、指導行動
問題と目的
次期学習指導要領改訂の基本方針 (中央教育審議会,2016) を踏まえ,“学びに向かう力・人間性”の涵養がまとめられ,アクティブラーニングの考え方が小・中・高等学校でも,学習者主体の授業の展開として求められている。その際,教員の指導行動に求められるのは,一定の知識を教え込むという従来の形から,児童生徒の自律性や主体的に行動することの支援である。そのためには,児童生徒が緊張感や不安が少ない状態で,自ら考えやってみようという意欲を喚起できるような,教員の指導行動のあり方が期待されている。
海外では,教員の指導行動にユーモアを適切に活用することが,盛んに教育実践に取り入れられ,研究も積み重ねられてきているが (河村,2017),児童生徒が緊張感や不安が少ない状態で,能動的な行動を促すための方法の一つとして,本邦でも学級環境を捉える試みとして教員が指導行動の中にユーモアを表出することは有効であると考えられる (佐藤,2001)。同様に,直接明るくて活気のある学級環境と教員の指導行動として教員のユーモアを取り上げ,三隅・吉崎・篠原 (1977) などの指摘を検討しそれを支持している (e.g.,青砥,2007)。
そこで本研究では,教員の指導行動の中にユーモアを活用する視点を提起するために,教員のユーモア表出の児童の認知と,児童の学校場面における活動領域の充実感や満足感を測るスクールモラールとの関連を検討する。具体的には,教員のユーモア表出を児童が認知するタイプを分類し,スクールモラールの高低のタイプを分類し,これらの出現率について実証的に明らかにすることを目的にした。
方 法
対象児:2013年7月首都圏の公立小学校3校15学級376名 (男子200名,女子176名) を調査の対象とした。
調査質問紙:教員のユーモア行動測定尺度 (河村・武蔵・河村,2015),学校生活意欲尺度 (河村,1998)を実施した。教員のユーモア行動測定尺度は,児童が認識する教員のユーモア表出を「楽しさ喚起ユーモア」「皮肉・風刺ユーモア」「元気づけユーモア」の3つの因子で測定するものである(それぞれ以下,楽しさ,皮肉,元気と表記)。
結果と考察
教員のユーモア表出の児童の認知するタイプの分類と児童のスクールモラールの高低の分類とその検討
2つの尺度の各下位因子の得点の高低によるタイプの分類とその出現率を検討するために,まず,クラスタ分析を行った。その結果,それぞれ4クラスタの分類を採用した。
次に,抽出されたユーモア認知タイプ4群とスクールモラールタイプ4群の関連を検討するために,χ2検定を行った (χ2(9)=43.89,p<.001)。その結果,意欲全高群 (全スクールモラールが高い) では,ポジティブ (楽しさと元気) ユーモア高群 (ポジティブなユーモア認知が高い) に属する児童とユーモア全高群 (3つのユーモア認知が全て高い) が多く,ユーモア全低群 (3つのユーモア認知が全て低い) が少なかった。学習意欲のみ高群 (学習意欲のみ高い) では,ユーモア全高群が少なかった。また,意欲全低群(スクールモラール全てが低い)では,ポジティブユーモア高群の児童が少なく,ユーモア全低群が多いという結果が得られた。
χ2 検定の結果より,スクールモラールの高低による分類と教員のユーモア表出の児童の認知のタイプによる分類の出現分布に差異があることが明らかとなり,教員のユーモア表出の児童の認知とスクールモラールとの関連が示唆された。
次期学習指導要領改訂の基本方針 (中央教育審議会,2016) を踏まえ,“学びに向かう力・人間性”の涵養がまとめられ,アクティブラーニングの考え方が小・中・高等学校でも,学習者主体の授業の展開として求められている。その際,教員の指導行動に求められるのは,一定の知識を教え込むという従来の形から,児童生徒の自律性や主体的に行動することの支援である。そのためには,児童生徒が緊張感や不安が少ない状態で,自ら考えやってみようという意欲を喚起できるような,教員の指導行動のあり方が期待されている。
海外では,教員の指導行動にユーモアを適切に活用することが,盛んに教育実践に取り入れられ,研究も積み重ねられてきているが (河村,2017),児童生徒が緊張感や不安が少ない状態で,能動的な行動を促すための方法の一つとして,本邦でも学級環境を捉える試みとして教員が指導行動の中にユーモアを表出することは有効であると考えられる (佐藤,2001)。同様に,直接明るくて活気のある学級環境と教員の指導行動として教員のユーモアを取り上げ,三隅・吉崎・篠原 (1977) などの指摘を検討しそれを支持している (e.g.,青砥,2007)。
そこで本研究では,教員の指導行動の中にユーモアを活用する視点を提起するために,教員のユーモア表出の児童の認知と,児童の学校場面における活動領域の充実感や満足感を測るスクールモラールとの関連を検討する。具体的には,教員のユーモア表出を児童が認知するタイプを分類し,スクールモラールの高低のタイプを分類し,これらの出現率について実証的に明らかにすることを目的にした。
方 法
対象児:2013年7月首都圏の公立小学校3校15学級376名 (男子200名,女子176名) を調査の対象とした。
調査質問紙:教員のユーモア行動測定尺度 (河村・武蔵・河村,2015),学校生活意欲尺度 (河村,1998)を実施した。教員のユーモア行動測定尺度は,児童が認識する教員のユーモア表出を「楽しさ喚起ユーモア」「皮肉・風刺ユーモア」「元気づけユーモア」の3つの因子で測定するものである(それぞれ以下,楽しさ,皮肉,元気と表記)。
結果と考察
教員のユーモア表出の児童の認知するタイプの分類と児童のスクールモラールの高低の分類とその検討
2つの尺度の各下位因子の得点の高低によるタイプの分類とその出現率を検討するために,まず,クラスタ分析を行った。その結果,それぞれ4クラスタの分類を採用した。
次に,抽出されたユーモア認知タイプ4群とスクールモラールタイプ4群の関連を検討するために,χ2検定を行った (χ2(9)=43.89,p<.001)。その結果,意欲全高群 (全スクールモラールが高い) では,ポジティブ (楽しさと元気) ユーモア高群 (ポジティブなユーモア認知が高い) に属する児童とユーモア全高群 (3つのユーモア認知が全て高い) が多く,ユーモア全低群 (3つのユーモア認知が全て低い) が少なかった。学習意欲のみ高群 (学習意欲のみ高い) では,ユーモア全高群が少なかった。また,意欲全低群(スクールモラール全てが低い)では,ポジティブユーモア高群の児童が少なく,ユーモア全低群が多いという結果が得られた。
χ2 検定の結果より,スクールモラールの高低による分類と教員のユーモア表出の児童の認知のタイプによる分類の出現分布に差異があることが明らかとなり,教員のユーモア表出の児童の認知とスクールモラールとの関連が示唆された。