日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-68)

2019年9月15日(日) 10:00 〜 12:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PD61] 教師の伝え方が保護者に与える影響

子どもの発達理解に着目して

米川純子 (聖徳大学)

キーワード:教師の伝え方、子どもの発達理解、保護者の受けとめ方

問題と目的
 平成20年度「発達障害等支援・特別支援教育総合推進事業」以降,宮城県特別支援教育グランドモデル地域の報告の中で,事業の課題とその解決のために必要な取り組みとして,相談支援ファイルの有効活用が挙げられている。
 相談支援ファイルに今までの対応,具体的な支援の仕方,今後の見通しなど,アドバイスされたことを細かく記述しておくことによって,その子どもへのより具体的で的確な支援を行うことができる。一方で,これらのことを保護者が支援者から伝えられた場合,どのような受けとめ方をし,記述していくかということが課題となってくることが予想される。相談支援ファイルを有効に活用していくためにも,保護者と支援チームとの連携が重要だということが考えられる。
本研究では,保護者が受容しやすい教師の伝え方を明らかにする。
方  法
 A市放課後児童クラブ,全11クラブの小学校1年生~3年生の保護者257名を対象に質問紙調査を実施し,174名の回答を収集した。その結果,回答に不備のない171名を調査対象とした。
調査内容
 保護者が子どもの発達理解に対して,関心の高い「学習」・「手伝い」・「友だち関係」の3項目に焦点を当て,修士課程にて心理学を専攻する大学院生5名の協力を得て,「学習」・「手伝い」・「友だち関係」のカテゴリー別に最後に“いいこと”を伝えるか“悪いこと”を伝えるかに分け,6項目の事例文を作成した。
結果と考察
 本研究では教師の伝え方を学習面の「最後に悪いこと」を伝える,学習面の「最後にいいこと」を伝える,友だち関係の「最後に悪いこと」を伝える,友だち関係の「最後にいいこと」を伝える,生活面の「最後に悪いこと」を伝える,生活面の「最後にいいこと」を伝えるという6パターンで伝えた。
 その結果,保護者の受けとめ方に変化がみられたのは,子どもの「生活面」を伝えるときにだけであった。「最後に悪いこと」を伝えると,否定的な受けとめ方をするということが示唆された。この結果は,2つの事が考えられる。第一に,「生活面」に関しては,学校でみせる子どもの姿が家庭でみせる子どもの姿と違っていても,保護者は家庭で子どもの姿を把握しやすい生活面に関するので,「最後に悪いこと」を伝えられると,否定的な回答が高まったということが考えられた。
 第二に,他の2つの側面である「学習面」「友だち関係」においては,家庭内でみせる子どもの姿だけでは保護者は子どもの発達理解を把握しにくいために,「最後に悪いこと」を伝えられても,「最後にいいこと」を伝えられても受けとめるという回答が高まったと考えられた。
 本研究において,χ2検定の結果から,保護者は教師から「最後に悪いこと」を伝えられても,「最後にいいこと」を伝えられても,「生活面」以外では,子どもの発達理解を「受け入れる」傾向が高いということが明らかになった。