[PD62] 書くことによる言語的説得の質的分析における考察
キーワード:自己効力感、言語的説得
目 的
言語的説得は自己効力感を高めるための情報源の一つである。自分が遂行する課題に対する努力や結果が,専門性に優れ信頼できる人によって評価された場合,その人のセルフ・エフィカシーは強化される(岡,2002)と指摘されている。そこで,筆者は,個々の生徒にあてた教師の記述内容を分析し,その内容による個々の生徒の変容を検証する。
方 法
調査対象はA県の公立中学校B年生25名で,調査時期を5月,7月,10月とし,生徒がグループ活動を行った後に振り返って書いた記述に対して,教師が「教師からの手紙」という形式でコメントを書くという方法である。
結果1
生徒に対する教師の記述内容を大学院生OBの協力を得てKJ法を用いて分類した。教師の記述全体のうち70%以上が「生徒への言語的説得」であった。5月に振り返りが書けなかった生徒以外すべての生徒に「言語的説得」がなされていた。言語的説得には「賞賛」「励まし」「価値づけ」「教示」が抽出された。「賞賛」の割合が多かった。
予想以上に頑張っている姿が見られたりしたことが特に10月に多く抽出された。「励まし」のうち,「生徒の意欲喚起を促す励まし」が5月に多く抽出された。「生徒の言動や思考から良いところを見出し価値づける認知」が7,10月に抽出された。
一方で,教師の記述には「生徒とのラポールを形成」するための内容が全体の30%弱を占めていた。中でも「受容・共感」「生徒への興味関心を示す質問」「対話的な表現」が多く抽出された。
結果2
教師の記述内容による個々の生徒の変容を検討した結果,顕著な変容が抽出された。1例目は,5月の段階では振り返りの欄が空白だった生徒に対し,教師は「空白を受容する表現」を行った結果,7月,10月では「楽しかった」「達成感があるから好き」という記述になった。2例目は5月の段階で「積極的に声を出せなかった」という生徒の記述に対して,教師は「賞賛」や「励まし」の記述を行った結果,7月には生徒が「協力して行えたからよかった」という記述になった。3例目は,7月の段階で「班の人たちはあまり話をしたことがなく苦手な人たちでした」と記述した生徒に対し,教師は「受容・共感」「賞賛」や「励まし」の記述を記述した結果,10月の振り返りでは「今日は楽しい活動だった。みんなが率先して情報を言い合っていたからだと思う」という記述になった。
考 察
教師は記述の中に「生徒とのラポールの形成」の表現を書くことで生徒との関係が良好になり,生徒に対する「言語的説得」の効果が高まったと考えられる。これは,岡が論じているように,信頼関係にある教師から「言語的説得」されると自己効力感が強化されることにつながる。
生徒の記述内容に対して,教師は的確に「賞賛」や「励まし」,「価値づけ」を行っていた。生徒には喜びややる気が生まれ,自信を持って行動しようとする意欲につながっていくと考える。10月に「生徒の意外性の発見」が多く抽出されたが,繰り返し言語的説得されることで,積極的に行動しようとする意欲が高まったと考えられる。
したがって,生徒とのラポールを形成しつつ言語的説得を行うことは生徒の自己効力感を高めるうえで効果的であるといえる。
言語的説得は自己効力感を高めるための情報源の一つである。自分が遂行する課題に対する努力や結果が,専門性に優れ信頼できる人によって評価された場合,その人のセルフ・エフィカシーは強化される(岡,2002)と指摘されている。そこで,筆者は,個々の生徒にあてた教師の記述内容を分析し,その内容による個々の生徒の変容を検証する。
方 法
調査対象はA県の公立中学校B年生25名で,調査時期を5月,7月,10月とし,生徒がグループ活動を行った後に振り返って書いた記述に対して,教師が「教師からの手紙」という形式でコメントを書くという方法である。
結果1
生徒に対する教師の記述内容を大学院生OBの協力を得てKJ法を用いて分類した。教師の記述全体のうち70%以上が「生徒への言語的説得」であった。5月に振り返りが書けなかった生徒以外すべての生徒に「言語的説得」がなされていた。言語的説得には「賞賛」「励まし」「価値づけ」「教示」が抽出された。「賞賛」の割合が多かった。
予想以上に頑張っている姿が見られたりしたことが特に10月に多く抽出された。「励まし」のうち,「生徒の意欲喚起を促す励まし」が5月に多く抽出された。「生徒の言動や思考から良いところを見出し価値づける認知」が7,10月に抽出された。
一方で,教師の記述には「生徒とのラポールを形成」するための内容が全体の30%弱を占めていた。中でも「受容・共感」「生徒への興味関心を示す質問」「対話的な表現」が多く抽出された。
結果2
教師の記述内容による個々の生徒の変容を検討した結果,顕著な変容が抽出された。1例目は,5月の段階では振り返りの欄が空白だった生徒に対し,教師は「空白を受容する表現」を行った結果,7月,10月では「楽しかった」「達成感があるから好き」という記述になった。2例目は5月の段階で「積極的に声を出せなかった」という生徒の記述に対して,教師は「賞賛」や「励まし」の記述を行った結果,7月には生徒が「協力して行えたからよかった」という記述になった。3例目は,7月の段階で「班の人たちはあまり話をしたことがなく苦手な人たちでした」と記述した生徒に対し,教師は「受容・共感」「賞賛」や「励まし」の記述を記述した結果,10月の振り返りでは「今日は楽しい活動だった。みんなが率先して情報を言い合っていたからだと思う」という記述になった。
考 察
教師は記述の中に「生徒とのラポールの形成」の表現を書くことで生徒との関係が良好になり,生徒に対する「言語的説得」の効果が高まったと考えられる。これは,岡が論じているように,信頼関係にある教師から「言語的説得」されると自己効力感が強化されることにつながる。
生徒の記述内容に対して,教師は的確に「賞賛」や「励まし」,「価値づけ」を行っていた。生徒には喜びややる気が生まれ,自信を持って行動しようとする意欲につながっていくと考える。10月に「生徒の意外性の発見」が多く抽出されたが,繰り返し言語的説得されることで,積極的に行動しようとする意欲が高まったと考えられる。
したがって,生徒とのラポールを形成しつつ言語的説得を行うことは生徒の自己効力感を高めるうえで効果的であるといえる。