日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PD] ポスター発表 PD(01-68)

2019年9月15日(日) 10:00 〜 12:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号10:00~11:00
偶数番号11:00~12:00

[PD65] 中学校間連携によるピア・サポート実践の検討

研修の雰囲気と生徒の感情に着目して

高橋智子1, 庄司一子2 (1.筑波大学大学院, 2.筑波大学)

キーワード:中学生、心理教育

問題と目的
 近年,教育現場においていじめの問題は大きな課題の一つである。筆者らはこれまで,A中学校の生徒を対象にいじめ撲滅を目的にピア・サポート(以下,PS)プログラムを数年にわたって実施してきた。その過程で生徒が主体的にPS活動を進めるように変化してきた。反面,活動の中心となる代表生徒とそれ以外の生徒への活動の広がりが課題となっている。また隣接のB中学校もPS活動を導入することになった。そこで,A中学校の代表生徒に加え,A中学校の代表生徒とその仲間(以下,拡大メンバー),B中学校の代表生徒を対象にPS合同研修(以下,研修)を実施することとなった。これまでの研修で“聴く姿勢や態度”の変化で生徒が受容的な雰囲気を感じてくれたことから,まずは雰囲気づくりの効果と生徒の不安の変化を明らかにすることを本研究の目的とする。
方  法
研修の参加者:A中学校代表 (11名),拡大メンバー (22名),B中学校代表 (22名)。
研修時期・内容:研修は全4回 (Table 1)。
調査内容:毎回,研修前に記述式のワークシートを実施し,「とても安心している」(1)~「とても不安である」(10)の10件法で行った。また,その変化の理由について記述を求めた。
結果と考察
 A中学校の代表生徒,拡大メンバー,B中学校代表生徒の3群と研修回(研修前)を独立変数,感情の変化を従属変数とする繰り返しのある2要因混合計画を行った。その結果,回数の主効果が有意であった(F(1,35)=26.8, p<.001;Figure 1)。プリテストとそれ以降の全てに有意な差が示された。
 次に,感情の得点が変化した理由についての記述を分類した結果,“話を聴いてもらえたこと(8)”“自分の意見の話やすさ(5)”など,7つに分類された。不安が高まったという記述は見られなかった。この結果から,話を聴いてもらえたことが,受容的な雰囲気として感じられ,不安を低減させたと解釈できる。また,研修を通じての変化に関する記述から,“話をすること,気持ちを伝えることに対する恐怖が少なくなった”“自分の意見を前よりも言えるようになった”など,“研修前よりも,自分の意見を話せるようになった”という記述が22件確認された。この記述から,受容的な雰囲気の認知から生徒の主体的な発言が促されたと考えられる。
 今後は,生徒の聴く姿勢・態度と研修の場の雰囲気との関連や,受容的な雰囲気の認知が研修への主体的なかかわりへと変化するという過程があると推測されることから,この点について詳細に検討を進めることが課題である。