日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PE] ポスター発表 PE(01-67)

2019年9月15日(日) 13:30 〜 15:30 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号13:30~14:30
偶数番号14:30~15:30

[PE10] 教職課程の学生におけるキャリア意識の変化

寺本妙子 (開智国際大学)

キーワード:進路選択、自己形成、時間的展望

問題と目的
 教職課程の学生におけるキャリア意識は,将来教員になることを想定して発達することが期待されるが,その過程においては,将来への迷いや不安,大学生活への不適応等の困難も予想される。寺本(2019)では,教職課程の1年生におけるキャリア発達に関連する意識(進路選択に対する自己効力,自己形成,就職活動における不安)と時間的展望の関連性について検討した。本研究では,同一対象者へ追跡調査を実施し,1年次の進路選択における自己効力の高低と性別が2年次の他の要因とどのように関連するのか検討した。
方  法
参加者 関東にある私立大学の教育学部に所属する1年生36名のうち,24名について2年次に追跡調査を実施した(男子11名,女子13名,平均年齢=19.75(±0.68))。
手続き 進路選択自己効力,自己形成,就職活動における不安,時間的展望についてアンケート調査を実施した。使用した心理尺度は,進路選択に対する自己効力尺度(浦上,1995),アイデンティティ尺度(下山,1992),就職活動不安尺度(松田・永作・新井,2010),時間的展望体験尺度(白井,1994)であった。進路選択自己効力尺度は1因子,アイデンティティ尺度は2因子(基礎,確立),就職活動不安尺度は5因子(アピール不安,サポート不安,活動継続不安,試験不安,準備不足不安),時間的展望体験尺度は4因子(過去受容,現在の充実感,目標指向性,希望)で構成され,いずれも高得点ほどその程度が高いことを示した。
分析 寺本(2019)における1年次の進路選択自己効力得点を活用し,その平均値より高得点であるH群と,平均値未満であるL群を設定した(H群13名,L群11名)。この群別と性別を独立変数とし,2年次に測定した各尺度得点を従属変数とする二要因分散分析を行った(IBM SPSS Statistics 22を使用)。
倫理的配慮 本研究は発表者の所属機関の研究倫理委員会の承認を得て実施された。
結果と考察
 進路選択自己効力に関して,1年次得点と2年次得点の間で,正の有意な相関関係が認められ(r=.88,p<.001),1年次の進路選択に関する自信の程度は,2年次の様相とも関連していることが示唆された。
 性別・群別平均値(SD)をTable 1に示した。交互作用と性別の主効果は認められず,群別の主効果が目標指向性,希望,サポート不安,試験不安,準備不足不安,アイデンティティ(基礎)において確認された(有意傾向も含む)。目標指向性,希望,アイデンティティ(基礎)において,H群がL群よりも高い得点を示しており,1年次の進路選択に対する自信の高さが,2年次の時間的展望(未来成分)の高さや自己形成の基本的な要素の達成度と関連することが示唆された。サポート不安,試験不安,準備不足不安においては,H群の得点がL群よりも低く,1年次の進路選択に対する自信の高さが,部分的ではあるが,就職活動に関する不安の低さと関連することが示唆された。
 以上の結果は,1年次の進路選択に関する自己効力の高低が2年次の時間的展望,就職活動に関する不安,自己形成の様相と関連することを示しており,教職課程1年次の支援体制の必要性が示唆された。今後も継続的にデータを収集し,4年間を通じた変化過程の把握と支援の在り方について検討する必要があろう。
付  記
 本研究は,平成28年度・29年度・30年度開智国際大学個人課題研究費の助成を得て実施された。