[PE13] 比喩生成課題を用いた保育者養成課程学生の保育観の検討
キーワード:保育観、信念、保育者養成
問題と目的
保育の質は,保育者の子どもたちとのかかわり方,子どもたちの学びと発達の援助の仕方によって,大きく変わってくる。Siraj et al. (2015)の「『保育プロセスの質』評価スケール」(秋田・淀川(訳), 2016)では,保育者のかかわりを,社会情動的発達を促す「信頼,自信,自立の構築」「社会的,情緒的な安定・安心」の2カテゴリと,認知的発達を促す「言葉・コミュニケーションを支え,広げる」「学びと批判的思考を支える」「学び・言葉の発達を評価する」の3カテゴリに分類している。子どもに主体的に学び続ける姿勢を育むためには,前半の,いわゆる養護的かかわりだけではなく,後半の教育的かかわりにも注目することが必要だとされる。
日本の保育ではこれまでも,養護と教育の一体化が謳われてきたが,2017年の保育所保育指針,幼稚園教育要領,幼保連携型認定こども園教育・保育要領の改訂で,「学びに向かう力」の育成が強調され,教育的かかわりの重要性が一層増している。このような保育観は,どの程度共有されているのであろうか。本研究ではこの点を明らかにするため,秋田(1996)の比喩生成課題を援用し,保育者養成課程学生を対象として,その保育観・子ども観を調べた。
方 法
対象 保育者養成課程を履修する短期大学2年生57名(全て女性)。
質問紙 「良い保育」「子どもが育つということ」をたとえる言葉(比喩)とその比喩の説明を,思いつく限り記入するものである。加えて,「年長児クラスを担当するなら,クラス目標としてどのような言葉を採用するか」を,理由と共に記入するよう求めた。
手続き 「発達心理学」の授業の中で,授業内容について考察を深めるためのワークとして記入を求めた。研究の目的やデータ利用に関して説明を行い,同意が得られた学生のデータのみをここでの分析対象とした。
結果と考察
紙幅の関係上,ここでは「良い保育」の比喩に関して得られた59件のみを示す。収集された比喩とその説明をみると,「養護的かかわり」,「子どもや保育者の成長」「保育者の試行錯誤」「遊びの面白さ」「変化」の6カテゴリに分類可能であった(Table 1)。説明の内容に基づき,各カテゴリの中で項目を設け,細分類を行った。最も多かったのは「養護的かかわり」であり,次いで「子どもや保育者の成長」「保育者の試行錯誤」,最後に「遊びの面白さ」「変化」の順となっていた(χ2(4)= 30.259, p<.01)。
以上より,保育者養成課程学生が考える理想的な保育には,養護的かかわりが強く表れることがわかった。教育的かかわりに関しては,「子どもや保育者の成長」カテゴリに一部認められるものの,明確に子どもの主体性や思考を引き出すといった内容の比喩は得られなかった。発表日は,子ども観・クラス目標に関する結果も合わせて考察する。
引用文献
秋田喜代美 1996 教える経験に伴う授業イメージの変容 教育心理学研究,44(2),176-186.
シラージ I., キングストン D. & メルウィッシュ E. 秋田喜代美・淀川裕美 (訳) 2017 「保育プロセスの質」評価スケール―乳幼児期の「ともに考え,深めつづけること」と「情緒的な安定・安心」を捉えるために―. 明石書店.
保育の質は,保育者の子どもたちとのかかわり方,子どもたちの学びと発達の援助の仕方によって,大きく変わってくる。Siraj et al. (2015)の「『保育プロセスの質』評価スケール」(秋田・淀川(訳), 2016)では,保育者のかかわりを,社会情動的発達を促す「信頼,自信,自立の構築」「社会的,情緒的な安定・安心」の2カテゴリと,認知的発達を促す「言葉・コミュニケーションを支え,広げる」「学びと批判的思考を支える」「学び・言葉の発達を評価する」の3カテゴリに分類している。子どもに主体的に学び続ける姿勢を育むためには,前半の,いわゆる養護的かかわりだけではなく,後半の教育的かかわりにも注目することが必要だとされる。
日本の保育ではこれまでも,養護と教育の一体化が謳われてきたが,2017年の保育所保育指針,幼稚園教育要領,幼保連携型認定こども園教育・保育要領の改訂で,「学びに向かう力」の育成が強調され,教育的かかわりの重要性が一層増している。このような保育観は,どの程度共有されているのであろうか。本研究ではこの点を明らかにするため,秋田(1996)の比喩生成課題を援用し,保育者養成課程学生を対象として,その保育観・子ども観を調べた。
方 法
対象 保育者養成課程を履修する短期大学2年生57名(全て女性)。
質問紙 「良い保育」「子どもが育つということ」をたとえる言葉(比喩)とその比喩の説明を,思いつく限り記入するものである。加えて,「年長児クラスを担当するなら,クラス目標としてどのような言葉を採用するか」を,理由と共に記入するよう求めた。
手続き 「発達心理学」の授業の中で,授業内容について考察を深めるためのワークとして記入を求めた。研究の目的やデータ利用に関して説明を行い,同意が得られた学生のデータのみをここでの分析対象とした。
結果と考察
紙幅の関係上,ここでは「良い保育」の比喩に関して得られた59件のみを示す。収集された比喩とその説明をみると,「養護的かかわり」,「子どもや保育者の成長」「保育者の試行錯誤」「遊びの面白さ」「変化」の6カテゴリに分類可能であった(Table 1)。説明の内容に基づき,各カテゴリの中で項目を設け,細分類を行った。最も多かったのは「養護的かかわり」であり,次いで「子どもや保育者の成長」「保育者の試行錯誤」,最後に「遊びの面白さ」「変化」の順となっていた(χ2(4)= 30.259, p<.01)。
以上より,保育者養成課程学生が考える理想的な保育には,養護的かかわりが強く表れることがわかった。教育的かかわりに関しては,「子どもや保育者の成長」カテゴリに一部認められるものの,明確に子どもの主体性や思考を引き出すといった内容の比喩は得られなかった。発表日は,子ども観・クラス目標に関する結果も合わせて考察する。
引用文献
秋田喜代美 1996 教える経験に伴う授業イメージの変容 教育心理学研究,44(2),176-186.
シラージ I., キングストン D. & メルウィッシュ E. 秋田喜代美・淀川裕美 (訳) 2017 「保育プロセスの質」評価スケール―乳幼児期の「ともに考え,深めつづけること」と「情緒的な安定・安心」を捉えるために―. 明石書店.