日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PE] ポスター発表 PE(01-67)

2019年9月15日(日) 13:30 〜 15:30 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号13:30~14:30
偶数番号14:30~15:30

[PE14] 保育者養成校でのマイクロティーチングに関する研究(1)

協同作業認識が保育技術を媒介として保育者の力量に影響を与えるプロセスの検討

金子智栄子1, 金子智昭2, 清水優菜3 (1.文京学院大学, 2.埼玉純真短期大学, 3.慶應義塾大学)

キーワード:マイクロティーチング、保育者養成、協同作業認識

問題と目的
 本研究では,保育科学生の協同作業認識とエンゲージメントが,マイクロティーチング(Micro Teaching; 以下, MT)による保育技術の習得を通して保育者の力量にどのような影響を及ぼすのか,そのプロセスを明らかにする。
方  法
1.対象者及び手続き
 埼玉県内の4年制A大学1学年の保育者志望学生(有効回答108名,欠損率10%;3クラス構成,1クラス約36名)を対象。2018年11月から翌年1月にかけて,保育心理学(演習)のアクティブラーニングとして6コマ(1コマ90分)を使用し,学生が子ども役となる簡易型MTを実施した。
 クラス別に3班に分け,1つの班の12人程度が幼児役となり2つに分かれて,他の2つの班の教師役の学生から指導を受ける。訓練手続きは,(1)各班で指導案と教材作り,(2)各班で模擬保育の練習,(3)指導実践,(4)前回の反省を生かして再度指導実践,(5)班別反省会,(6)学習成果の公表と教員の総評,である。訓練終了の1週間後,学生にアンケート用紙を配布し記入を求めた。
2.調査内容
協働作業認識は長濱ら(2009)の3下位尺度(協同効用,個人志向,互恵懸念)の18項目。エンゲージメントは梅本ら(2016)の感情的エンゲージメントの5項目と,梅本・田中(2012)の行動的エンゲージメントの4項目。保育技術は金子(2013)より<保育技術・態度>は保育内容の理解度,充実度,手順,言葉かけ,指導の修正,注意の集中,発言の取り上げ方,主体的活動の尊重など19項目,<環境配置>は人的環境の配置,教材・教具の準備など4項目。保育者の力量は,金子(2013)の6分類(態度, 技能, 技能向上, 協働的関係, 連携, 視野の拡大)の20項目。評定はすべて4段階評定。
結果と考察
1.各変数の因子分析
 因子分析(残差最小法・プロマックス回転)を行ったところ,協同作業認識尺度は「協同効用」と「個人志向・互恵懸念」の2因子,エンゲージメント尺度は,「行動的エンゲージメント」と「感情的エンゲージメント」の2因子。保育技術尺度と保育者の力量尺度は各々1因子が得られた。
2.力量形成プロセスの検討
 構造方程式モデリング(最尤法)により,MTによる学生の力量形成プロセスに関するモデルを検討した。最終的に得られたモデルはFigure 1であり,十分な適合度が得られた(χ2(7)=11.71,p =.110,CFI=.963,RMSEA=.079,SRMR=.072)。
MTのエンゲージメントについて,協同効用が行動的と感情的のエンゲージメントを,感情的エンゲージメントが行動的エンゲージメントを促進することが示された。次に,保育技術について,行動的エンゲージメントが保育技術を促進するが,個人志向・互恵懸念が阻害することが示された。また,保育者の力量について,協同効用と保育技術が保育者の力量形成を促進することが示された。
 さらに,協働作業認識とエンゲージメントが保育技術を媒介して保育者の力量に及ぼす間接効果をデルタ法に推定した。その結果,協同効用と行動的エンゲージメント,感情的エンゲージメントが正の間接効果を与えるが(β=.07; β=.16; β=.05; ps <.05),個人志向・互恵懸念が負の間接効果を与えることが示された(β=-.14, p <.01)。
 協同効用がもたらすポジティブな影響力は,協同学習という授業形態に根ざしたMTの実施方法を反映していると考える。