[PE18] 主体的・対話的で深い学びを目指した異学年交流
小学校での劇づくりにおける児童のパフォーマンスの実態
キーワード:主体的・対話的で深い学び、異学年交流、パフォーマンス
問題と目的
近年,学習者が対話的に議論し,学習を深めていく教育実践が増加している。この教育実践は,従来学校教育で行われてきた教師が子供へ知識を伝達していく伝統的な授業とは異なり,協働して問題解決していく学習(文部科学省,2012)に学習者が主体的・対話的に参加し,学習活動を展開していく教育実践を指す。文部科学省(2012)は「予測困難な時代において,我が国にとって最も必要なこと」として「将来の我が国が目指すべき社会像を描く知的な構想力」の育成を明示しており,文部科学省(2017)は「主体的・対話的で深い学び」の実現のために授業改善をすることで学習者が新たな学びをつくり出すことを推し進める。我が国の教育の領域では,主体的・対話的で深い学びの新たな創造のために,これまで行われてきた伝統的な学びの問い直しが始まっている。
そこで本研究では,これまで多く注目されてこなかった異学年交流に焦点を当て,具体的な事例を検討することを目的とする。
方 法
2018年9月,関東圏内の私立小学校の異学年(1 年生7名,2年生6名,3年生6名,4年生5名,計24名)の集団交流における教師と児童の発話を対象とした。同年12月に異学年集団で行われる劇発表会へ向けた劇づくりの導入の授業であり,哲学対話形式で対話が展開された。そこでの教師と児童の対話をスクリプト化し,藤江(2000)に従って対話を発話として最小単位で区切った。そのほかに,対話場面を「話段(ザトラウスキー,1993)」を1単位として区分し場面の抽出を行った。なお,本研究は,管理職の指導のもと個人情報に留意して実施した。
結果と考察
哲学対話形式の対話は24分48秒行われた。まず,藤江(2000)に従い,対話をそれぞれの発話として区切った。その結果,対話は276の発話に区切られた。これらの中から,児童の発話を抽出し,学年別に集計した結果をTable 1に示す。そのほかに,ザトラウスキー(1993)に従い,対話から48の話段を抽出した。話段は,話者が意図したと考えられる会話の「目的(goal)」の達成を1つの対話の終結と捉える対話場面のことである。例えば,Table 2に示した場面では,「なんで劇するの」の教師の問いかけから生じた対話の「劇をする目的の回答」という目的が達成されたことが読み取れる「伝えるため」という教師の発話までを1つの話段として定義し,対話場面を抽出した。抽出された話段のうち,児童の問いかけによって発生した話段は17であった。これらを学年別に集計した結果を,Table 3に示した。その結果,17の話段のうち,5の話段が3年生,12の話段が4年生の問いかけによって発生していることが明らかになり,1年生と2年生の問いかけは確認されなかった。
本研究は,主体的・対話的で深い学びを目指して行われた小学校での異学年交流の具体的な事例を検討することが目的であった。Table 1とTable 3に示したように異学年集団の交流において,児童は学年が上がるほど発話数が増え,目的の達成のために集団への問いかけが多くなることが明らかになった。対象校では,劇づくりの異学年交流は毎年導入されていた。これは,異学年交流型の授業を多く受けてきた上学年の児童ほど課題解決のために対話をパフォーマンスし,学習集団へ積極的に問いを発していたと捉えることができよう。このように,児童らが学習者として自ら問いをつくりながら,学習集団を他者と共に弁証法的に共創していくことができる学習環境は,主体的・対話的で深い学びの成立のための一助となると考えられる。
近年,学習者が対話的に議論し,学習を深めていく教育実践が増加している。この教育実践は,従来学校教育で行われてきた教師が子供へ知識を伝達していく伝統的な授業とは異なり,協働して問題解決していく学習(文部科学省,2012)に学習者が主体的・対話的に参加し,学習活動を展開していく教育実践を指す。文部科学省(2012)は「予測困難な時代において,我が国にとって最も必要なこと」として「将来の我が国が目指すべき社会像を描く知的な構想力」の育成を明示しており,文部科学省(2017)は「主体的・対話的で深い学び」の実現のために授業改善をすることで学習者が新たな学びをつくり出すことを推し進める。我が国の教育の領域では,主体的・対話的で深い学びの新たな創造のために,これまで行われてきた伝統的な学びの問い直しが始まっている。
そこで本研究では,これまで多く注目されてこなかった異学年交流に焦点を当て,具体的な事例を検討することを目的とする。
方 法
2018年9月,関東圏内の私立小学校の異学年(1 年生7名,2年生6名,3年生6名,4年生5名,計24名)の集団交流における教師と児童の発話を対象とした。同年12月に異学年集団で行われる劇発表会へ向けた劇づくりの導入の授業であり,哲学対話形式で対話が展開された。そこでの教師と児童の対話をスクリプト化し,藤江(2000)に従って対話を発話として最小単位で区切った。そのほかに,対話場面を「話段(ザトラウスキー,1993)」を1単位として区分し場面の抽出を行った。なお,本研究は,管理職の指導のもと個人情報に留意して実施した。
結果と考察
哲学対話形式の対話は24分48秒行われた。まず,藤江(2000)に従い,対話をそれぞれの発話として区切った。その結果,対話は276の発話に区切られた。これらの中から,児童の発話を抽出し,学年別に集計した結果をTable 1に示す。そのほかに,ザトラウスキー(1993)に従い,対話から48の話段を抽出した。話段は,話者が意図したと考えられる会話の「目的(goal)」の達成を1つの対話の終結と捉える対話場面のことである。例えば,Table 2に示した場面では,「なんで劇するの」の教師の問いかけから生じた対話の「劇をする目的の回答」という目的が達成されたことが読み取れる「伝えるため」という教師の発話までを1つの話段として定義し,対話場面を抽出した。抽出された話段のうち,児童の問いかけによって発生した話段は17であった。これらを学年別に集計した結果を,Table 3に示した。その結果,17の話段のうち,5の話段が3年生,12の話段が4年生の問いかけによって発生していることが明らかになり,1年生と2年生の問いかけは確認されなかった。
本研究は,主体的・対話的で深い学びを目指して行われた小学校での異学年交流の具体的な事例を検討することが目的であった。Table 1とTable 3に示したように異学年集団の交流において,児童は学年が上がるほど発話数が増え,目的の達成のために集団への問いかけが多くなることが明らかになった。対象校では,劇づくりの異学年交流は毎年導入されていた。これは,異学年交流型の授業を多く受けてきた上学年の児童ほど課題解決のために対話をパフォーマンスし,学習集団へ積極的に問いを発していたと捉えることができよう。このように,児童らが学習者として自ら問いをつくりながら,学習集団を他者と共に弁証法的に共創していくことができる学習環境は,主体的・対話的で深い学びの成立のための一助となると考えられる。