[PE26] 教師のグループ学習に対する学習ニーズと心理的・環境的要因の関連
教科と校種に着目して
キーワード:グループ学習、教師、学習ニーズ
問題と目的
協働学習に関心が高まる中,現職教師自身がどのような協働学習についての学習ニーズをもつかは明らかにされていなかった。児玉(2019日心)では,協働学習に対する教師の学習ニーズについて検討したところ,算数・数学よりも国語の方が,中学校教師よりも小学校教師の方が全体的な学習ニーズが高いことを示した。本研究では,こうした学習ニーズについて,心理的要因や環境要因,個人の経験がどのように関連するかを検討する。
方 法
研究協力者 楽天インサイト社によって募集された小学校教師400名,中学校教師353名が調査に参加した。小学校教師は200名が国語,200名が算数について回答した。中学校教師は153名が国語,200名が数学について回答した。
調査手続き オンライン質問紙調査を行った。学習ニーズに関する教示文は「グループ学習について,以下の項目の内容をどのくらい学んでみたい(知りたい)と思いますか」とし,全24項目への回答を求めた。この24項目は,協働学習における教師の役割を示した文献を参考にして作成した。特にKaendler et al.(2015)が示した協働学習において教師に求められる5つのコンピテンシー(Planning:学習の構成,Monitoring:学習者の観察,Supporting:学習中の支援,Consolidating:まとめ,Evaluating:評価)を因子として想定した。その他,個人の経験として教員歴,グループ学習実施率(週のうちどのくらい実施したかを%で回答),グループ学習実施歴,心理的要因として協働学習に対するポジティブイメージ(6項目:高旗ら,2010を基に作成),自律的学習動機づけ(6項目:三和・外山,2015; 西村ら,2010を基に作成),環境要因として学習環境(15項目:露口,2003を基に作成),学校目標(協働学習に関する目標か)を尋ねた。
結果と考察
因子分析により因子構造を確認した後,5つの学習ニーズを目的変数,心理的要因,個人の経験,環境要因,心理的要因と個人の経験(校種・教科含む)や環境要因の交互作用項を説明変数とした多変量重回帰分析を行った。主な結果として,ポジティブイメージ,学習動機づけが正の関連,教職歴が負の関連を示した。さらに,教科と学習動機づけ,教職歴の交互作用を見ると,学習動機づけが強い場合は算数・数学においてもConsolidatingやEvaluatingの学習ニーズが強くなることや,教職歴が長くなると国語においてもEvaluatingに対する学習ニーズが弱いことが示された。教職歴が長い教師ほど学習ニーズが小さい点は,経験的にこれらの観点について自分なりの方法論を形成できていると認識しているためだと考えられる。また,評価面のEvaluatingは算数・数学においても学習動機づけの高い教師にとっては関心が強いことからも,評価に関する情報提供が求められていると考えられる。
付 記
本研究はJSPS科研費(18H05792)の助成を受けて実施されました。
協働学習に関心が高まる中,現職教師自身がどのような協働学習についての学習ニーズをもつかは明らかにされていなかった。児玉(2019日心)では,協働学習に対する教師の学習ニーズについて検討したところ,算数・数学よりも国語の方が,中学校教師よりも小学校教師の方が全体的な学習ニーズが高いことを示した。本研究では,こうした学習ニーズについて,心理的要因や環境要因,個人の経験がどのように関連するかを検討する。
方 法
研究協力者 楽天インサイト社によって募集された小学校教師400名,中学校教師353名が調査に参加した。小学校教師は200名が国語,200名が算数について回答した。中学校教師は153名が国語,200名が数学について回答した。
調査手続き オンライン質問紙調査を行った。学習ニーズに関する教示文は「グループ学習について,以下の項目の内容をどのくらい学んでみたい(知りたい)と思いますか」とし,全24項目への回答を求めた。この24項目は,協働学習における教師の役割を示した文献を参考にして作成した。特にKaendler et al.(2015)が示した協働学習において教師に求められる5つのコンピテンシー(Planning:学習の構成,Monitoring:学習者の観察,Supporting:学習中の支援,Consolidating:まとめ,Evaluating:評価)を因子として想定した。その他,個人の経験として教員歴,グループ学習実施率(週のうちどのくらい実施したかを%で回答),グループ学習実施歴,心理的要因として協働学習に対するポジティブイメージ(6項目:高旗ら,2010を基に作成),自律的学習動機づけ(6項目:三和・外山,2015; 西村ら,2010を基に作成),環境要因として学習環境(15項目:露口,2003を基に作成),学校目標(協働学習に関する目標か)を尋ねた。
結果と考察
因子分析により因子構造を確認した後,5つの学習ニーズを目的変数,心理的要因,個人の経験,環境要因,心理的要因と個人の経験(校種・教科含む)や環境要因の交互作用項を説明変数とした多変量重回帰分析を行った。主な結果として,ポジティブイメージ,学習動機づけが正の関連,教職歴が負の関連を示した。さらに,教科と学習動機づけ,教職歴の交互作用を見ると,学習動機づけが強い場合は算数・数学においてもConsolidatingやEvaluatingの学習ニーズが強くなることや,教職歴が長くなると国語においてもEvaluatingに対する学習ニーズが弱いことが示された。教職歴が長い教師ほど学習ニーズが小さい点は,経験的にこれらの観点について自分なりの方法論を形成できていると認識しているためだと考えられる。また,評価面のEvaluatingは算数・数学においても学習動機づけの高い教師にとっては関心が強いことからも,評価に関する情報提供が求められていると考えられる。
付 記
本研究はJSPS科研費(18H05792)の助成を受けて実施されました。