日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PE] ポスター発表 PE(01-67)

2019年9月15日(日) 13:30 〜 15:30 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号13:30~14:30
偶数番号14:30~15:30

[PE34] 大学におけるアクティブ・ラーニングとその効果(3)

私立大学における教員のアクティブ・ラーニングの知識量と活用度

牧野幸志 (摂南大学)

キーワード:アクティブ・ラーニング、大学教育

問題と目的
 近年,大学においてもアクティブ・ラーニングが推進され,多くの大学で導入されている。本研究の最終的な目的は,大学教育において学生が主体となったアクティブ・ラーニングを実施し,その効果を明らかとすることである。本研究では,アクティブ・ラーニングを「課題の発見・解決に向けた学生の主体的・協働的な学び」と定義し,特定の指導の型や技術ではなく,授業を進めていく上での考え方と位置づけている。現在,多くの大学においてアクティブ・ラーニングが取り入れられているが,その実際の学習効果,学生からの評価は,いまだ明らかとなっていない。これまで,牧野・久保(2018)は,アクティブ・ラーニングの実施状況とその運営スキルの学部間差異などについて検討してきた。本研究では,教員のアクティブ・ラーニングの知識量と活用度を明らかにし,学部間などで差がみられるのかを検討する。
方  法
調査参加者 調査は,「アクティブ・ラーニング・実践状況および意識調査にかかるアンケート」として,webを利用して職員番号を記入する無記名式で行った。調査参加者は大阪府内の私立大学の教員114名(男性73名,女性41名,職階(助教,講師,准教授,教授,非常勤))であった。調査時期は2017年5月。
質問紙の構成 質問紙の構成は,アクティブ・ラーニングの実施状況(4段階評定,14項目),アクティブ・ラーニングの具体例に関する知識(4段階評定,11項目),アクティブ・ラーニングの具体例の活用度(4段階評定,11項目),アクティブ・ラーニングのための運営スキル(4段階評定,17項目)。本研究では,アクティブ・ラーニングの具体例に関する知識量と活用度についての分析を行った。
結果と考察
 アクティブ・ラーニングに関する知識量と活用度の因子抽出(因子分析) アクティブ・ラーニングの具体例に関する知識11項目と活用度11項目それぞれに対して主因子法・プロマックス回転による因子分析を行った。その結果,知識に3因子が抽出された。第1因子は,「グループ・ディスカッション」,「ペア・ワーク」などについて知っているかという項目であったので「グループ活動に関する知識」因子とした。第2因子は,「ルーブリック評価」や「カリキュラム・マップ」などに関する知識であったので「ルーブリック評価やカリキュラム・マップの知識」因子とした。第3因子は,「ICT」や「Moodle」などのICT機器の知識に関するものであったので「授業で用いるICT機器に関する知識」因子とした。
 他方,活用度にも知識の3因子と対応した因子が抽出された。それぞれ「グループ活動の活用」因子,「ルーブリック評価やカリキュラム・マップの活用」因子,「授業でのICT機器の活用」因子とした。以下,知識の3因子と活用度の3因子を従属変数として分析を進めた。
アクティブ・ラーニングの知識量(学部による差異) アクティブ・ラーニングに関する知識が学部により異なるのかを検討するため,学部を独立変数とする1要因分散分析を行った。7つの学部(薬学部,看護学部,理工学部,経営学部,経済学部,経営学部,外国語学部)と学部以外(教職,各センターなど)の8つで1要因8水準の分散分析を行った。従属変数は3つのアクティブ・ラーニングの知識因子である。
グループ活動に関する知識 「グループ活動に関する知識」因子に対する分析の結果,学部の主効果が有意であった(F(7,106)=4.58, p <.01)。多重比較の結果,外国語,看護,経済,薬学部よりも理工学部(M = 2.92)の教員の知識が低く,外国語,看護学部よりも経営学部(M = 3.00)の教員の知識が低かった。
ルーブリック評価やカリキュラム・マップの知識 「ルーブリック評価やカリキュラム・マップの知識」因子に対する分析の結果,学部の主効果は有意ではなかった(F(7,106)=0.62, n.s.)。学部によってルーブリック評価やカリキュラム・マップの知識に差はみられなかった。平均値は2点台後半から3点台前半と比較的高い値であった。
授業で用いるICT機器に関する知識 「授業で用いるICT機器に関する知識」因子に対する分析の結果,学部の主効果は有意ではなかった(F(7,106)=0.98, n.s.)。学部によってICT機器に関する知識に差はみられなかった。平均値は2点台後半から3点と比較的高い値であった。
アクティブ・ラーニングの活用度(学部による差異)
アクティブ・ラーニングの活用度が学部により異なるのかを検討するため,学部などを独立変数とする1要因8水準分散分析を行った。従属変数は3つのアクティブ・ラーニングの活用度因子である。
グループ活動の活用 「グループ活動の活用」因子に対する分析の結果,学部の主効果が有意であった(F(7,106)=7.27, p <.01)。多重比較の結果,外国語,学部以外,看護,経営よりも理工学部(M = 1.85)での活用度が低く,外国語,学部以外,看護学部よりも薬学部(M = 1.93)での活用度が低かった。
ルーブリック評価やカリキュラム・マップの活用 「ルーブリック評価やカリキュラム・マップの活用」因子に対する分析の結果,学部の主効果が有意であった(F(7,106)=2.21, p <.05)。多重比較の結果,学部以外,看護よりも理工学部(M = 1.79)での活用度が低く,看護学部よりも外国語学部(M = 1.86)での活用度が低かった。
授業でのICT機器の活用 「授業でのICT機器の活用」因子に対する分析の結果,学部の主効果が有意であった(F(7,106)=2.39, p <.05)。多重比較の結果,外国語,経営,経済よりも薬学部(M = 1.40)が低く,外国語,経営,経済よりも理工学部(M = 1.55)が低かった。