[PE43] 学生の自己評価による自己特性に関する研究(3)
保育者を目指す短大生の2年間の変容について
キーワード:自己評価、保育者、実習
問題と目的
保育者養成において実習の充実は必須である。文部科学省は2019年度入学生から実習に加えインターンシップの単位化を認め,現場での経験を積むことをさらに重視している。学生にとって,実習は専門的技能を習得すると同時に,保育者としての職業意識を高める機会となる。実習生に求められる姿勢は,挨拶の励行や提出期限の厳守など,保育者としての資質に限定されるものではなく社会人として求められる資質も多い。青年期の彼らの特性を理解することは学生指導の充実につながると考えらえる。以上のことから本研究では,糠野(2017)で報告した1年生時の結果と2年生時の結果の比較を行い,実習経験による保育者としての自己評価の変容を検討することを目的とした。
方 法
調査対象者:X短期大学の学生122名を対象とした。122名中,1年生時と2年生時の2時点間で回答が得られた62名を分析対象とした。1回目の対象者の平均年齢は18.25歳(SD=.43)であった。2回目の平均年齢は19.58歳(SD=.50)であった。 調査日:1年生時の1回目はX年6月に実施し,2年生時の2回目はX+1年11月に実施した。 調査手続き:調査項目は,糠野(2016)で作成した生活面や学習面における自己評価項目を使用した。具体的には,様々な役割を担おうとする姿勢や自分の意見を表明する姿勢と自己管理力を測定する29項目で,「あてはまっている」から「あてはまっていない」5件法で回答を求めた。逆転項目は7項目であった。個人を特定できる情報は記入させず,2回とも調査時に携帯電話の下4ケタの記入を求め,2時点の調査の対象者の照合を行った。本調査は,集団形式により調査用紙を配布し,記入後に回収した。統計的に処理をすることとプライバシーへ配慮すること,及び調査に参加しない自由があることを明記し,併せて口頭で説明を行った。分析には,IBM SPSS Statistics Ver.25を使用した。
結果と考察
1)生活面や学習面における自己評価項目の分析:平均値が高いほどその項目内容に合致するように得点化した。項目別に対応のあるt検定を行った結果,有意差の見られた項目は,10項目であった。糠野(2016)では因子分析の結果,4因子を抽出した。本研究でも同様に各因子を構成する項目の得点を合計し,その因子の得点とした。4つの因子の2回の平均値と対応のあるt検定により分析した結果,「社会生活面の自己管理」(1回目20.53[SD=3.20];2回目19.50[SD=3.73],p<.01)と「個人生活面の自己管理」(1回目25.15[SD=3.71];2回目23.35[SD=4.06]p<.01)の2つの因子について2時点間で有意差が見られた。2つの因子共に1回目の平均値の方が2回目の平均値よりも有意に高かった。すなわち,個人生活面と社会生活面では1回目の時の方ができているという意識が高かった。1回目の1年生6月と2回目の2年生11月の間に学生は3回の実習を経験している。これらの経験により保育者としての意識が高まり,できていることよりもできていないことを意識するようになり,その結果2回目の値が有意に低くなったと思われる。保育者としての視点が厳しくなり,安易な自己評価をしなくなった結果であると考えられる。2)実習経験の影響:2週間の実習は充実していたかを尋ね,5件法で回答を求めた。2時点間のクロス表分析を行った結果,両時点とも「充実していた」と回答したのは21名(33.9%)であった。次に,実習によって保育者になる自信がついたかどうかを尋ね,5件法で回答を求めた。2時点間のクロス表分析を行った結果,両時点ともで「自信がついた」と回答していたのはなく,2時点間で「少し自信がついた」と回答した学生が14名(22.6%),2時点間で「どちらともいえない」と回答した学生が11名(17.7%)であった。合計すると,40.3%となり,約4割の学生が漠然と自信がついたと意識しており,実習先での経験が学生としての意識に影響していると考えられる。短大生は2年間という短い期間で社会に出ることになり,実習経験は社会と結びつける機会となる。学生の変容を考慮した指導について今後検討したい。
保育者養成において実習の充実は必須である。文部科学省は2019年度入学生から実習に加えインターンシップの単位化を認め,現場での経験を積むことをさらに重視している。学生にとって,実習は専門的技能を習得すると同時に,保育者としての職業意識を高める機会となる。実習生に求められる姿勢は,挨拶の励行や提出期限の厳守など,保育者としての資質に限定されるものではなく社会人として求められる資質も多い。青年期の彼らの特性を理解することは学生指導の充実につながると考えらえる。以上のことから本研究では,糠野(2017)で報告した1年生時の結果と2年生時の結果の比較を行い,実習経験による保育者としての自己評価の変容を検討することを目的とした。
方 法
調査対象者:X短期大学の学生122名を対象とした。122名中,1年生時と2年生時の2時点間で回答が得られた62名を分析対象とした。1回目の対象者の平均年齢は18.25歳(SD=.43)であった。2回目の平均年齢は19.58歳(SD=.50)であった。 調査日:1年生時の1回目はX年6月に実施し,2年生時の2回目はX+1年11月に実施した。 調査手続き:調査項目は,糠野(2016)で作成した生活面や学習面における自己評価項目を使用した。具体的には,様々な役割を担おうとする姿勢や自分の意見を表明する姿勢と自己管理力を測定する29項目で,「あてはまっている」から「あてはまっていない」5件法で回答を求めた。逆転項目は7項目であった。個人を特定できる情報は記入させず,2回とも調査時に携帯電話の下4ケタの記入を求め,2時点の調査の対象者の照合を行った。本調査は,集団形式により調査用紙を配布し,記入後に回収した。統計的に処理をすることとプライバシーへ配慮すること,及び調査に参加しない自由があることを明記し,併せて口頭で説明を行った。分析には,IBM SPSS Statistics Ver.25を使用した。
結果と考察
1)生活面や学習面における自己評価項目の分析:平均値が高いほどその項目内容に合致するように得点化した。項目別に対応のあるt検定を行った結果,有意差の見られた項目は,10項目であった。糠野(2016)では因子分析の結果,4因子を抽出した。本研究でも同様に各因子を構成する項目の得点を合計し,その因子の得点とした。4つの因子の2回の平均値と対応のあるt検定により分析した結果,「社会生活面の自己管理」(1回目20.53[SD=3.20];2回目19.50[SD=3.73],p<.01)と「個人生活面の自己管理」(1回目25.15[SD=3.71];2回目23.35[SD=4.06]p<.01)の2つの因子について2時点間で有意差が見られた。2つの因子共に1回目の平均値の方が2回目の平均値よりも有意に高かった。すなわち,個人生活面と社会生活面では1回目の時の方ができているという意識が高かった。1回目の1年生6月と2回目の2年生11月の間に学生は3回の実習を経験している。これらの経験により保育者としての意識が高まり,できていることよりもできていないことを意識するようになり,その結果2回目の値が有意に低くなったと思われる。保育者としての視点が厳しくなり,安易な自己評価をしなくなった結果であると考えられる。2)実習経験の影響:2週間の実習は充実していたかを尋ね,5件法で回答を求めた。2時点間のクロス表分析を行った結果,両時点とも「充実していた」と回答したのは21名(33.9%)であった。次に,実習によって保育者になる自信がついたかどうかを尋ね,5件法で回答を求めた。2時点間のクロス表分析を行った結果,両時点ともで「自信がついた」と回答していたのはなく,2時点間で「少し自信がついた」と回答した学生が14名(22.6%),2時点間で「どちらともいえない」と回答した学生が11名(17.7%)であった。合計すると,40.3%となり,約4割の学生が漠然と自信がついたと意識しており,実習先での経験が学生としての意識に影響していると考えられる。短大生は2年間という短い期間で社会に出ることになり,実習経験は社会と結びつける機会となる。学生の変容を考慮した指導について今後検討したい。