[PE50] 就学移行期におけるペアレントトレーニング
保護者の変化に着目して
Keywords:ペアレントトレーニング、発達障害、移行支援
問題と目的
通常学級に在籍する「発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒」が6.5%から6.8%(95%信頼区間)とされる(文部科学省,2012)昨今,発達課題のある児の早期発見,早期支援が求められていることは明白である。
また就学期においては「小1プロブレム」等の語が示すように,就学前の環境からの変化によって不適応を起こす児も多いことが確認されている。
荻野ら(2018)は就学後の不適応の予防を目的としたペアレントトレーニングを開発し、一部の効果を確認したが、被験者数を増やしたグループとしての効果の確認が必要と考えられた。
そこで本研究では,就学移行期の年長児の保護者を対象にしたペアレントトレーニングを実施し,グループとしての効果を検証する。
方 法
対象 介入当時,幼稚園または保育所在籍の年長児の母親13名。対象児は男児9名(開始時69-80ヶ月),女児4名(開始時70-78ヶ月)であった。結果の公表については全員から書面による同意を得ている。
効果測定 以下の質問紙をプログラム開始前および終了後にそれぞれ実施した。
1)ADHD Rating Scale-Ⅳ(家庭版)(市川ら,2008):児の不注意・多動性・衝動性を測定する質問紙。4件法,18項目。
2)KINDL日本語版(根本,2013):子どものQOLを評価する質問紙。5件法,24項目。
3)Strength and Difficulties Questionnaire (SDQ) 日本語版(Goodman, 1997):子どもの行動のポジティブな面とネガティブな面を評価する質問紙。3件法,25項目。
4)Questionnaire on Resources and Stress(QRS)日本語版(山上ら,1998):保護者の養育上のストレスを測定する質問紙。2件法,52項目。
プログラム内容 プログラムは約2ヵ月間で全4回のセッションを実施した。各セッションは講義と個別の対応検討で構成し,1回2時間で実施した。スタッフは各回1名であった。講義テーマは導入,行動の見方,学童期の発達,認知・学習,生活スキル,対人関係,家庭での対応,マインドフルネスなどであり,免田ら(1995),荻野ら(2014),荻野ら(2019),Lisa et al.(2009 谷他訳 2014)を参考にして実施した。
結果と考察
各質問紙の得点(平均値,SD)およびWilcoxon符号付順位検定の結果をTable 1に示した。
ADHD-RSについては,有意に改善が見られた。保護者への対応方法の教授により,対象児の行動が改善したことがうかがわれた。
KINDLは有意な変化が見られなかった。本プログラムのみでは、子どものQOLの改善までには至らなかったと考えられた。
SDQについては向社会性尺度には有意な変化が見られなかったが、総得点(行為、多動、情緒、仲間関係の4因子)は有意に改善が見られた。向社会性の改善までには至らなかったが、ADHD-RS同様に対象児の行動が改善したことがうかがわれた。
QRSについては,有意な改善が見られた。本プログラムが保護者の養育上のストレスを軽減できたと考えられた。
以上のことから,本プログラムは対象児の行動の改善や保護者の養育上のストレス軽減に作用したと考えられた。しかし介入期間が短かったこともあり,フォローアップを行ってその後の経過を確認する必要があると考えられた。
通常学級に在籍する「発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒」が6.5%から6.8%(95%信頼区間)とされる(文部科学省,2012)昨今,発達課題のある児の早期発見,早期支援が求められていることは明白である。
また就学期においては「小1プロブレム」等の語が示すように,就学前の環境からの変化によって不適応を起こす児も多いことが確認されている。
荻野ら(2018)は就学後の不適応の予防を目的としたペアレントトレーニングを開発し、一部の効果を確認したが、被験者数を増やしたグループとしての効果の確認が必要と考えられた。
そこで本研究では,就学移行期の年長児の保護者を対象にしたペアレントトレーニングを実施し,グループとしての効果を検証する。
方 法
対象 介入当時,幼稚園または保育所在籍の年長児の母親13名。対象児は男児9名(開始時69-80ヶ月),女児4名(開始時70-78ヶ月)であった。結果の公表については全員から書面による同意を得ている。
効果測定 以下の質問紙をプログラム開始前および終了後にそれぞれ実施した。
1)ADHD Rating Scale-Ⅳ(家庭版)(市川ら,2008):児の不注意・多動性・衝動性を測定する質問紙。4件法,18項目。
2)KINDL日本語版(根本,2013):子どものQOLを評価する質問紙。5件法,24項目。
3)Strength and Difficulties Questionnaire (SDQ) 日本語版(Goodman, 1997):子どもの行動のポジティブな面とネガティブな面を評価する質問紙。3件法,25項目。
4)Questionnaire on Resources and Stress(QRS)日本語版(山上ら,1998):保護者の養育上のストレスを測定する質問紙。2件法,52項目。
プログラム内容 プログラムは約2ヵ月間で全4回のセッションを実施した。各セッションは講義と個別の対応検討で構成し,1回2時間で実施した。スタッフは各回1名であった。講義テーマは導入,行動の見方,学童期の発達,認知・学習,生活スキル,対人関係,家庭での対応,マインドフルネスなどであり,免田ら(1995),荻野ら(2014),荻野ら(2019),Lisa et al.(2009 谷他訳 2014)を参考にして実施した。
結果と考察
各質問紙の得点(平均値,SD)およびWilcoxon符号付順位検定の結果をTable 1に示した。
ADHD-RSについては,有意に改善が見られた。保護者への対応方法の教授により,対象児の行動が改善したことがうかがわれた。
KINDLは有意な変化が見られなかった。本プログラムのみでは、子どものQOLの改善までには至らなかったと考えられた。
SDQについては向社会性尺度には有意な変化が見られなかったが、総得点(行為、多動、情緒、仲間関係の4因子)は有意に改善が見られた。向社会性の改善までには至らなかったが、ADHD-RS同様に対象児の行動が改善したことがうかがわれた。
QRSについては,有意な改善が見られた。本プログラムが保護者の養育上のストレスを軽減できたと考えられた。
以上のことから,本プログラムは対象児の行動の改善や保護者の養育上のストレス軽減に作用したと考えられた。しかし介入期間が短かったこともあり,フォローアップを行ってその後の経過を確認する必要があると考えられた。