[PE53] 印象に残る教師像:大学生への半構造化面接を通して(1)
印象に残る教師像の概要
キーワード:教師像、大学生、半構造化面接
問題と目的
子どもたちが親以外に毎日接する大人としてあげられるのは,学校の教師であろう。子どもと教師との関係の良し悪しが,教科学習や課外教育活動など学校生活に及ぼす影響は大きい。
豊田(1994)は,女子大学生に印象に残る教師を回想させ,信頼感・個人的な関わり・快活さ・厳しい指導・授業のうまさという5因子を見出している。さらに豊田(1996)は,好きだった教師,嫌いだった教師の特徴を自由記述で求めた。中学・高校では男女ともに男性教師を好きな教師として回想する者が多かったこと,授業の上手・下手が教師の好き-嫌いを規定する特徴として重視されることなどを明らかにしている。
いずれも20年以上前の研究結果である。教師の働き方改革が話題になっている今日では,教師が子どもたちにどのような印象を与えているのだろうか。大学生を対象に個別に半構造化面接によって印象に残る教師像を明らかにする。
方 法
面接協力者 大学1・2年生男女で教職志望の有無,大学3・4年生男女で教職志望の有無,短期大学生女子で教職志望の有無の計10群(各10名),合計100名。
説明と同意 「教師のイメージインタビューへの協力のお願い」という文面で,研究の内容の説明を行った。すべての面接協力者から,自分の意思で研究協力すること,個人情報の取り扱い・結果の公表などについて同意を得て,研究同意書に自署をもらった。また,本研究を実施するに際し倫理審査を愛知学院大学総合政策学会研究倫理委員会に提出し,許可を得た。
面接内容 以下の3問について自由に話してもらった。
(1)小学校・中学校・高等学校で,いろいろな先生に出会われたと思いますが,その中でもっとも印象に残っている先生について,お話しをうかがいます。(どうぞ自由にお話しください)
<確認すべき事項>①その先生に出会ったのはいつか,②性別,③おおよその年齢,④イメージはポジティブかネガティブか,⑤その先生の教科あるいはクラブ,⑥クラスの担任か否か,⑦今のあなたにその先生が与えている影響はあるか。
(2)あなたが理想とする先生は,どんなタイプの先生ですか。
(3)あなたが嫌いな先生は,どんなタイプの先生ですか。
面接時期 2018年(平成30年)10月下旬から2019年(平成31年)1月上旬。
面接時間 1人概ね15分程度。面接協力者の話のペースに合わせ,多少の時間のゆとりを持たせた。
結果と考察
本報告(1)では,確認すべき事項の集計結果について述べる。
①印象に残る先生に出会った時期:小学校=16人,中学校42人(1年=26人,2年=10人,3年=6人),高等学校42人(1年29人,2年6人,3年7人)。中1や高1など学校移行の時期に,印象に残る教師に出会ったという回答が多い。
②性別:男性=69人,女性31名。印象に残った教師は男性であるという結果であり,豊田(1996)の結果と同様であった。面接協力者の性別と印象に残った教師の性別で,有意差が見られた(χ2=5.68, p<.05)。男子は男性教師を,女子は女性教師を印象に残った教師としてあげていた。
③年齢:20歳代=25人,30歳代=22人,40歳代=31人,50歳代=22人。印象に残った教師の年齢の違いはなかった(n.s.)。
④イメージ:ポジティブ=92人,ネガティブ=8人。印象に残った教師は,ほとんどがポジティブなイメージであった。
⑤先生の教科あるいはクラブ:教科=78人,クラブ=32人(重複回答あり)。印象に残っているのは,教科の先生という回答が多かった。
⑥担任:はい=61人,いいえ=39人。面接協力者の性別と印象に残った教師が担任か否かで,有意差が見られた(χ2=7.17, p<.01)。女子の方が,担任の先生を印象に残る教師としてあげていた。
⑦影響の有無:あり=85人,なし=14人,不明=1人。教職志望の有無で影響の有無に違いが見られ (χ2=6.95, p<.05),教職志望者は,今の自分に先生が与えている影響があるという回答であった。
引用文献
豊田弘司(1994). 回想による教師像と教師に対する印象の関係.奈良教育大学教育研究所紀要,30, 93-98.
豊田弘司(1996). 回想された好きな教師と嫌いな教師像.奈良教育大学教育研究所紀要, 32, 125-131.
子どもたちが親以外に毎日接する大人としてあげられるのは,学校の教師であろう。子どもと教師との関係の良し悪しが,教科学習や課外教育活動など学校生活に及ぼす影響は大きい。
豊田(1994)は,女子大学生に印象に残る教師を回想させ,信頼感・個人的な関わり・快活さ・厳しい指導・授業のうまさという5因子を見出している。さらに豊田(1996)は,好きだった教師,嫌いだった教師の特徴を自由記述で求めた。中学・高校では男女ともに男性教師を好きな教師として回想する者が多かったこと,授業の上手・下手が教師の好き-嫌いを規定する特徴として重視されることなどを明らかにしている。
いずれも20年以上前の研究結果である。教師の働き方改革が話題になっている今日では,教師が子どもたちにどのような印象を与えているのだろうか。大学生を対象に個別に半構造化面接によって印象に残る教師像を明らかにする。
方 法
面接協力者 大学1・2年生男女で教職志望の有無,大学3・4年生男女で教職志望の有無,短期大学生女子で教職志望の有無の計10群(各10名),合計100名。
説明と同意 「教師のイメージインタビューへの協力のお願い」という文面で,研究の内容の説明を行った。すべての面接協力者から,自分の意思で研究協力すること,個人情報の取り扱い・結果の公表などについて同意を得て,研究同意書に自署をもらった。また,本研究を実施するに際し倫理審査を愛知学院大学総合政策学会研究倫理委員会に提出し,許可を得た。
面接内容 以下の3問について自由に話してもらった。
(1)小学校・中学校・高等学校で,いろいろな先生に出会われたと思いますが,その中でもっとも印象に残っている先生について,お話しをうかがいます。(どうぞ自由にお話しください)
<確認すべき事項>①その先生に出会ったのはいつか,②性別,③おおよその年齢,④イメージはポジティブかネガティブか,⑤その先生の教科あるいはクラブ,⑥クラスの担任か否か,⑦今のあなたにその先生が与えている影響はあるか。
(2)あなたが理想とする先生は,どんなタイプの先生ですか。
(3)あなたが嫌いな先生は,どんなタイプの先生ですか。
面接時期 2018年(平成30年)10月下旬から2019年(平成31年)1月上旬。
面接時間 1人概ね15分程度。面接協力者の話のペースに合わせ,多少の時間のゆとりを持たせた。
結果と考察
本報告(1)では,確認すべき事項の集計結果について述べる。
①印象に残る先生に出会った時期:小学校=16人,中学校42人(1年=26人,2年=10人,3年=6人),高等学校42人(1年29人,2年6人,3年7人)。中1や高1など学校移行の時期に,印象に残る教師に出会ったという回答が多い。
②性別:男性=69人,女性31名。印象に残った教師は男性であるという結果であり,豊田(1996)の結果と同様であった。面接協力者の性別と印象に残った教師の性別で,有意差が見られた(χ2=5.68, p<.05)。男子は男性教師を,女子は女性教師を印象に残った教師としてあげていた。
③年齢:20歳代=25人,30歳代=22人,40歳代=31人,50歳代=22人。印象に残った教師の年齢の違いはなかった(n.s.)。
④イメージ:ポジティブ=92人,ネガティブ=8人。印象に残った教師は,ほとんどがポジティブなイメージであった。
⑤先生の教科あるいはクラブ:教科=78人,クラブ=32人(重複回答あり)。印象に残っているのは,教科の先生という回答が多かった。
⑥担任:はい=61人,いいえ=39人。面接協力者の性別と印象に残った教師が担任か否かで,有意差が見られた(χ2=7.17, p<.01)。女子の方が,担任の先生を印象に残る教師としてあげていた。
⑦影響の有無:あり=85人,なし=14人,不明=1人。教職志望の有無で影響の有無に違いが見られ (χ2=6.95, p<.05),教職志望者は,今の自分に先生が与えている影響があるという回答であった。
引用文献
豊田弘司(1994). 回想による教師像と教師に対する印象の関係.奈良教育大学教育研究所紀要,30, 93-98.
豊田弘司(1996). 回想された好きな教師と嫌いな教師像.奈良教育大学教育研究所紀要, 32, 125-131.