[PE56] 秩序維持の意識と障害理解教育の関係
合理的な配慮へのためらいをPAC分析で読み解く
キーワード:特別支援教育、学級秩序、教職課程履修学生
問題と目的
障害をもつ児童生徒に対しては,合理的な配慮をすることで,当人の人権や自由が「他の者と平等に(障害者の権利に関する条約第二十四条)」確保されることが求められている。学校における合理的な配慮の例としては,(ア)教員,支援員等の確保,(イ)施設・設備の整備,(ウ)個別の教育支援計画や個別の指導計画に対応した柔軟な教育課程の編成や教材等の配慮などが,文部科学省により示されている。
一方,教職課程の授業においては,学級や授業における秩序維持を重視する観点から,こうした特定の個人対する特別な対応についての不安を表明する受講学生もいる。つまり,障害をもつ児童生徒に対応するだけでは不充分で,周囲の児童生徒に「特別感」を与えないようにする必要があるという主張である。
そうした考え方の根底には,秩序維持に対しての絶対的で優越的な意味づけが感じられる。学生におけるこうした傾向を,社会人と比較し検討することを,本研究の目的とした。
方 法
学生4名と,社会人3名に調査協力を頼んだ。学生は教職授業(筆者が非常勤で担当している教職専門科目)の受講学生3名と,未受講学生1名で,男子3名女子1名であった。社会人は,40代男女1名ずつ,60代男性1名であった。
個別にPAC分析をした。個人情報保護などを説明し,了承を得た。実施は2019年2月と3月であった。刺激文として,下記の文章をノートPCの画面に示し,ゆっくり読み上げた。
あなたは,秩序を保つことの意味で使われている「秩序維持」について,どのような印象をもっていますか。それが必要とされる状況や,その行き過ぎが懸念される状況など,前提条件による違いはあることでしょう。ここでは,自分のこれまでの体験を振り返ってみて,「秩序維持」に関して思い出される場面や,将来を想像してみて,心に浮かんできた印象を話してください。
「秩序維持」と聞いて思い出した場面や,実際に使われた際の感じなど,心に浮かんだままに教えてください。聞いたままを記録します。
結果と考察
調査協力者ごとの特徴を調べるために,想起項目と統合過程での命名に対するそれぞれのマイナス評定数と,全体数との比率を算出した。
学生1と,社会人2が,秩序維持に対してネガティブな印象をもっていることが示された。この二名は共に女性であった。
学生1(上),社会人2(下)の樹形図を示した。
女性2名からは,秩序優先を理由にした他者からの受け容れがたい処遇を強いられた体験が語られた。他の男性5名は,主に秩序を維持する側からの想起が見られた。障害理解教育の実践には,弱者に寄り添う視点が必須である。社会全体の秩序偏重気運には,男性的視点を警戒すべきである。
障害をもつ児童生徒に対しては,合理的な配慮をすることで,当人の人権や自由が「他の者と平等に(障害者の権利に関する条約第二十四条)」確保されることが求められている。学校における合理的な配慮の例としては,(ア)教員,支援員等の確保,(イ)施設・設備の整備,(ウ)個別の教育支援計画や個別の指導計画に対応した柔軟な教育課程の編成や教材等の配慮などが,文部科学省により示されている。
一方,教職課程の授業においては,学級や授業における秩序維持を重視する観点から,こうした特定の個人対する特別な対応についての不安を表明する受講学生もいる。つまり,障害をもつ児童生徒に対応するだけでは不充分で,周囲の児童生徒に「特別感」を与えないようにする必要があるという主張である。
そうした考え方の根底には,秩序維持に対しての絶対的で優越的な意味づけが感じられる。学生におけるこうした傾向を,社会人と比較し検討することを,本研究の目的とした。
方 法
学生4名と,社会人3名に調査協力を頼んだ。学生は教職授業(筆者が非常勤で担当している教職専門科目)の受講学生3名と,未受講学生1名で,男子3名女子1名であった。社会人は,40代男女1名ずつ,60代男性1名であった。
個別にPAC分析をした。個人情報保護などを説明し,了承を得た。実施は2019年2月と3月であった。刺激文として,下記の文章をノートPCの画面に示し,ゆっくり読み上げた。
あなたは,秩序を保つことの意味で使われている「秩序維持」について,どのような印象をもっていますか。それが必要とされる状況や,その行き過ぎが懸念される状況など,前提条件による違いはあることでしょう。ここでは,自分のこれまでの体験を振り返ってみて,「秩序維持」に関して思い出される場面や,将来を想像してみて,心に浮かんできた印象を話してください。
「秩序維持」と聞いて思い出した場面や,実際に使われた際の感じなど,心に浮かんだままに教えてください。聞いたままを記録します。
結果と考察
調査協力者ごとの特徴を調べるために,想起項目と統合過程での命名に対するそれぞれのマイナス評定数と,全体数との比率を算出した。
学生1と,社会人2が,秩序維持に対してネガティブな印象をもっていることが示された。この二名は共に女性であった。
学生1(上),社会人2(下)の樹形図を示した。
女性2名からは,秩序優先を理由にした他者からの受け容れがたい処遇を強いられた体験が語られた。他の男性5名は,主に秩序を維持する側からの想起が見られた。障害理解教育の実践には,弱者に寄り添う視点が必須である。社会全体の秩序偏重気運には,男性的視点を警戒すべきである。