[PE64] 大学への配慮申請に至るトランスジェンダー男性の変容プロセスについて
キーワード:性別違和、配慮申請、性的マイノリティ
問題と目的
性別違和感を持つトランスジェンダーは,本人が感じているジェンダーと,周囲が認識するジェンダーが異なることで悩みが生じやすく,男女二元論的文化において様々な困難場面に直面しやすい。文部科学省(2015)では,性別違和感を持つ児童生徒に対する配慮の重要性について言及しているものの,配慮申請に至るまでの当事者の心理面については明らかにされていることは少なく,具体的にどのような心理的支援や環境調整が必要か調査している論文は少ない(西野,2014)。
そこで本研究では,性別違和感を持つトランスジェンダー当事者の中でも,望むジェンダーでの生活(Real Life Experience:RLE)を始める大学生時代におけるトランスジェンダー男性(Female to Male:FTM)が,大学側に「出生時に割り当てられた性別ではない性」に関連する取り扱いの変更(通称名使用や個別対応など)を求める配慮申請をする際,どのような変容プロセスを経ていくかを明らかにすることを目的とした。結果から,大学に在学するトランスジェンダーに対しどのような支援が必要かを心理社会的援助の観点から具体的に検討した。
方 法
協力者 過去に大学に対し性別の取り扱いに関する配慮申請をした経験のある19歳~29歳のうち,性別違和感を持つ当事者9名に実施した。
調査の手続き 事前に倫理的配慮について説明した上で,半構造化インタビューを行い,ライフヒストリーや配慮申請に関する質問を行った。
分析手法 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA:木下,2003)を用いて分析を行い,最終的にカテゴリー関係図を作成した。
結果と考察
分析結果から,22概念と9カテゴリーが生成され,結果図としてFigure 1が作成された。結果から,配慮申請の大きなきっかけとして,《ジェンダー移行を強める動機づけ》というカテゴリーと,《性別のしがらみ》というカテゴリーが生成された。結果図から,FTM当事者は,性別二分の環境により引き起こされる心理的負担というネガティブな要因と,ジェンダー移行を決意していくポジティブな要因が関連していくことで,大学におけるジェンダー移行の動機づけが強めていくことが分かった。
また,配慮申請に至るまでには複数のルートがあり,(a)《ジェンダー移行を強める動機づけ》と《性別のしがらみ》によって直接大学側に配慮申請をするルート,(b)十分に検討をした上で配慮申請をする《配慮申請の計画》を通るルート,(c)大学職員に相談をすることで配慮申請をする《信頼できる大学構成員への相談》を通る3つのルートがあることが明らかになった。こうした複数のルートがある背景には,大学側の環境要因や,それによるFTM当事者の内的要因が関係していることが示唆された。
性別違和感を持つトランスジェンダーは,本人が感じているジェンダーと,周囲が認識するジェンダーが異なることで悩みが生じやすく,男女二元論的文化において様々な困難場面に直面しやすい。文部科学省(2015)では,性別違和感を持つ児童生徒に対する配慮の重要性について言及しているものの,配慮申請に至るまでの当事者の心理面については明らかにされていることは少なく,具体的にどのような心理的支援や環境調整が必要か調査している論文は少ない(西野,2014)。
そこで本研究では,性別違和感を持つトランスジェンダー当事者の中でも,望むジェンダーでの生活(Real Life Experience:RLE)を始める大学生時代におけるトランスジェンダー男性(Female to Male:FTM)が,大学側に「出生時に割り当てられた性別ではない性」に関連する取り扱いの変更(通称名使用や個別対応など)を求める配慮申請をする際,どのような変容プロセスを経ていくかを明らかにすることを目的とした。結果から,大学に在学するトランスジェンダーに対しどのような支援が必要かを心理社会的援助の観点から具体的に検討した。
方 法
協力者 過去に大学に対し性別の取り扱いに関する配慮申請をした経験のある19歳~29歳のうち,性別違和感を持つ当事者9名に実施した。
調査の手続き 事前に倫理的配慮について説明した上で,半構造化インタビューを行い,ライフヒストリーや配慮申請に関する質問を行った。
分析手法 修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA:木下,2003)を用いて分析を行い,最終的にカテゴリー関係図を作成した。
結果と考察
分析結果から,22概念と9カテゴリーが生成され,結果図としてFigure 1が作成された。結果から,配慮申請の大きなきっかけとして,《ジェンダー移行を強める動機づけ》というカテゴリーと,《性別のしがらみ》というカテゴリーが生成された。結果図から,FTM当事者は,性別二分の環境により引き起こされる心理的負担というネガティブな要因と,ジェンダー移行を決意していくポジティブな要因が関連していくことで,大学におけるジェンダー移行の動機づけが強めていくことが分かった。
また,配慮申請に至るまでには複数のルートがあり,(a)《ジェンダー移行を強める動機づけ》と《性別のしがらみ》によって直接大学側に配慮申請をするルート,(b)十分に検討をした上で配慮申請をする《配慮申請の計画》を通るルート,(c)大学職員に相談をすることで配慮申請をする《信頼できる大学構成員への相談》を通る3つのルートがあることが明らかになった。こうした複数のルートがある背景には,大学側の環境要因や,それによるFTM当事者の内的要因が関係していることが示唆された。