日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PF] ポスター発表 PF(01-67)

2019年9月15日(日) 16:00 〜 18:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号16:00~17:00
偶数番号17:00~18:00

[PF01] 幼稚園の運動会が5歳児の発達に及ぼす影響について(1)

語彙発達の調査から

宮代こずゑ1, 石川隆行2, 坂本修子#3, 余川美智雄#4 (1.宇都宮大学, 2.宇都宮大学, 3.宇都宮大学教育学部附属幼稚園, 4.宇都宮大学教育学部附属幼稚園)

キーワード:運動会、5歳児、語彙発達

問題と目的
 多くの幼稚園で実施されているイベントの一つに運動会がある。当日だけではなくその準備段階において,子どもは多くの事柄を学んでいると考えられる。たとえば及川(2018)は幼稚園における運動会へ向けた取り組みを「幼児が友だちと役割を決めてはじまり,その日のうちに一端の終わりを迎える役割遊びのプロセスが,何日にもわたって展開していくような状況」であるとしている.また,年中児を対象とし,運動会実施前後にそれぞれ誤信念課題を実施した結果,幼児の誤信念課題成績は運動会実施後の方が高まっていることを報告している。瀬高(2008)は,運動会準備における子どもたちの行動を観察した.2週間の準備期間の中で,自ら問題(Ex. リレーの順番待ちの人たちが走者の邪魔をしないためにはどうしたら良いか)を解決するためにアイデアを出し合う姿が見られた.子どもたちは大人や周りの子どもを含めた環境と相互作用し合い,筆者の言うところの「考え,乗り越える力」を身に着けているのである.関東のA幼稚園においても,毎日の遊びや生活が運動会とつながるよう意識した保育を実施している。このような日々の活動において,子どもが他者と衝突する場面は必ず発生する。そうした経験を重ねることにより,子どもは他者に自分の気持ちをよりうまく伝えられるようになっていくと考えられる。そこで本研究では,幼稚園における5歳児クラスに焦点をあて,運動会実施前後の語彙発達について絵画語い発達検査(Picture Vocabulary Test–Revised; PVT-R; 上野・名越・小貫,2008)を用いて検討を行う。
方  法
調査対象者:関東のA幼稚園における5歳児クラス在籍者62名(男児32名)。
調査時期:運動会実施日(201X年9月29日)の前後を比較するため,運動会実施前プレテストとして9月3日から3日間,運動会実施後ポストテストとして10月3日から5日間測定。
手続き: 5歳児1名に対し実施者1名(女性)がつき,検査(約7分)を実施した。
結果および考察
 運動会実施前後で語彙がどの程度発達したかについて検討すべく,PVT-R絵画語彙発達検査の得点を比較した。プレテストよりも成績が下がっている子ども(飽きや気が散っていたなどの可能背がある)についてはデータから除外し,46名の成績について再び対応のあるt検定を実施した。その結果,プレ-ポストテスト間で成績に有意な差が見られ,ポストテストの方が成績は高かった(t(65)=6.827, p<.001;Figure 1)。
 また,上記について1回目と2回目の成績に有意な相関がみられた(r=.928, p<.001)。このことは,1回目に成績が比較的高い子どもは2回目も高く,比較的低い子どもは2回目も低いということを示唆している。すなわち,急激に成績が上がる子どもが若干名いたというより,全体的に成績が底上げされているという解釈が妥当である。
引用文献
上野一彦・名越斉子・小貫悟(2008).絵画語い発達検査 日本文化科学社.
及川智博 (2018).保育における運動会が年中児の心の理論の発達に及ぼす影響 発達研究,32, 13-26.
瀬高郁子 (2008). 5歳の誇り―あの風の谷の子どもたち コンテンツ・ファクトリー