[PF08] 中学生の共食感を高める要因の検討
共食人数と共食回数に着目して
Keywords:共食感、共食人数、共食回数
問題と目的
2005年に食育基本法が施行されて以来,食育が様々な場面で推し進められている。その中でも特に,子どもに対する家族との共食が重視されているが,家庭での食生活は親の労働環境や家族のライフスタイルと切り離すことのできない問題である。子育て世代である30~40歳代の男性の長時間労働の慢性化や,今後女性の社会進出が更に進むことを考えれば,家族との共食回数を容易に増やせない社会環境を念頭に置いた食育の推進方法を検討していくことが必要である。
家族との共食に関する中学生を対象とした研究では,「家族と一緒に食事をすることに対する気持ち」を「共食感」と定め,共食人数などの食生活要素が食事中の会話と共食感を媒介し,生活満足度や抑うつなどの心理的ウェルビーイングに縦断的に関連することが報告されている(江崎,2019)。この研究では,中学生の心理的ウェルビーイングを高めるためには共食感を高めることが重要であることが示唆されている。そこで本研究では,中学生の共食感を高める要因を共食人数と共食回数に着目して検証する。
方 法
調査時期・調査対象者
2014年11月に岐阜県内の中学生を対象に1週間のダイアリー調査を実施し,欠損値のない160名(女子69名,男子71名)を分析対象者とした。
調査内容
(1)1週間の朝食と夕食に関するダイアリー調査:何を,いつ,どこで,誰と,どのように
(2)共食感:足立(2010)を改変し,「家族と一緒に食事をすることは楽しい」「できるだけ家族と一緒に食事がしたい」の2項目を4件法で尋ねた。
結果と考察
1週間の食生活ダイアリー調査を実施し,朝食と夕食に関する14回分のデータを得たことから共食状況に関する実態把握を行った結果,自分以外の共食人数の平均値が1.52人,共食頻度の平均値が14回中2.31回となるなど家族全員との共食が難しい中学生の現状が示された。次に共食人数の平均値によって共食感得点に差が見られるかを検討するために,共食人数の平均値別共食感得点の比較を行った。t検定の結果,共食人数の平均値が0.5人未満の群は0.5人以上の群に比べて共食感得点が有意に低いことが示された(t = -2.89, df = 12.06, p < .05)(Figure 1)。共食人数の平均値が0.5人未満とはひとりで食べることが多いと考えられ,共食人数の平均値が0.5人以上とは家族の誰か1人以上と食べることが多いと考えられる。そこで次に,家族の誰か1人以上との共食回数について共食感得点との関連を検討するために,共食回数別共食感得点の比較を行った。t検定の結果,共食回数が0~3回の群は4~14回の群に比べて共食感得点が有意に低いことが示された(t = -3.14, df = 158, p < .01)(Figure 2)。以上の結果から,家族全員との共食が難しくても家族のうちの誰か1人であっても週に4回以上一緒に食事をすることにより,共食感が高まる可能性が示された。こうした知見は,現在進められている食育政策にも有効な示唆を与えるとともに,家庭での食生活を改善する根拠を与えることになると考えられる。
2005年に食育基本法が施行されて以来,食育が様々な場面で推し進められている。その中でも特に,子どもに対する家族との共食が重視されているが,家庭での食生活は親の労働環境や家族のライフスタイルと切り離すことのできない問題である。子育て世代である30~40歳代の男性の長時間労働の慢性化や,今後女性の社会進出が更に進むことを考えれば,家族との共食回数を容易に増やせない社会環境を念頭に置いた食育の推進方法を検討していくことが必要である。
家族との共食に関する中学生を対象とした研究では,「家族と一緒に食事をすることに対する気持ち」を「共食感」と定め,共食人数などの食生活要素が食事中の会話と共食感を媒介し,生活満足度や抑うつなどの心理的ウェルビーイングに縦断的に関連することが報告されている(江崎,2019)。この研究では,中学生の心理的ウェルビーイングを高めるためには共食感を高めることが重要であることが示唆されている。そこで本研究では,中学生の共食感を高める要因を共食人数と共食回数に着目して検証する。
方 法
調査時期・調査対象者
2014年11月に岐阜県内の中学生を対象に1週間のダイアリー調査を実施し,欠損値のない160名(女子69名,男子71名)を分析対象者とした。
調査内容
(1)1週間の朝食と夕食に関するダイアリー調査:何を,いつ,どこで,誰と,どのように
(2)共食感:足立(2010)を改変し,「家族と一緒に食事をすることは楽しい」「できるだけ家族と一緒に食事がしたい」の2項目を4件法で尋ねた。
結果と考察
1週間の食生活ダイアリー調査を実施し,朝食と夕食に関する14回分のデータを得たことから共食状況に関する実態把握を行った結果,自分以外の共食人数の平均値が1.52人,共食頻度の平均値が14回中2.31回となるなど家族全員との共食が難しい中学生の現状が示された。次に共食人数の平均値によって共食感得点に差が見られるかを検討するために,共食人数の平均値別共食感得点の比較を行った。t検定の結果,共食人数の平均値が0.5人未満の群は0.5人以上の群に比べて共食感得点が有意に低いことが示された(t = -2.89, df = 12.06, p < .05)(Figure 1)。共食人数の平均値が0.5人未満とはひとりで食べることが多いと考えられ,共食人数の平均値が0.5人以上とは家族の誰か1人以上と食べることが多いと考えられる。そこで次に,家族の誰か1人以上との共食回数について共食感得点との関連を検討するために,共食回数別共食感得点の比較を行った。t検定の結果,共食回数が0~3回の群は4~14回の群に比べて共食感得点が有意に低いことが示された(t = -3.14, df = 158, p < .01)(Figure 2)。以上の結果から,家族全員との共食が難しくても家族のうちの誰か1人であっても週に4回以上一緒に食事をすることにより,共食感が高まる可能性が示された。こうした知見は,現在進められている食育政策にも有効な示唆を与えるとともに,家庭での食生活を改善する根拠を与えることになると考えられる。