日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PF] ポスター発表 PF(01-67)

2019年9月15日(日) 16:00 〜 18:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号16:00~17:00
偶数番号17:00~18:00

[PF11] 習い事が幼児の問題行動の抑制に与える影響(3)

動機づけと問題行動の関連を習い事別に検討

油川さゆり (玉川大学)

キーワード:習い事、問題行動、動機づけ

研究の背景・目的
 近年,我が国において習い事がさかんになって いるが,その影響はほとんど明らかになっていない。油川(2017)は共分散構造分析を行い,習い事の要因が問題行動を抑制するモデルを検討した。その結果,仲間と関わる機会が多いほど,習い事への態度がポジティブになり,保護者が習い事による子どもの変化をポジティブに感じ,自己制御機能や向社会性を媒介して最終的に問題行動の抑制に繋がる,あるいは,習い事への態度がポジティブであると家庭での練習(宿題)時間に繋がり,保護者が習い事による変化をポジティブに感じ,最終的に問題行動の抑制に繋がることを示した。しかし,習い事には様々な種類があり,レッスンの目的や内容が異なるため,本研究では,同モデルについて習い事別に分析を行い,それぞれのモデルを具体的に検討することを目的とする。
方  法
対象:9都道県の保育園,認定こども園の年中・年長児624人の保護者
調査内容:2015年10月に無記名式質問紙調査を行った。調査内容は,幼児の自己制御機能尺度(大内・長尾・櫻井,2008),問題行動・向社会性を測定するStrengths and Difficulties Questionnaire (Goodman, 1997)の他,幼児が行っている習い事 (数,内容,頻度等),習い事中仲間と関わる頻度, 習い事への態度(感情,積極性),家庭で練習や宿 題等で習い事に携わる時間,保護者から見た習い 事による子どものポジティブ,ネガティブな変化 の大きさ(習い事の影響)について尋ねた。また,習い事以外に各変数に影響を与えることが予想さ れる,親の養育態度,家庭の経済状況,親の最終学歴,きょうだい数についても回答を求めた。
結果・考察
 分析には,親の最終学歴,親の養育態度,きょうだい数,所属(年中・年長)を統制した標準化されていない残差得点を用いた。習い事中に仲間 と関わる機会,習い事への態度,家庭で習い事に 携わる時間,習い事の影響,自己制御機能,向社会性,問題行動を投入し,習い事別(スイミング,体操,ピアノ,ダンス系)に共分散構造分析を用いて検討した。ここでは,最終的に得られた体操のモデルをFigure 1に示す。
 体操を習っている幼児において特徴的なことは,仲間と関わる機会,習い事への態度から習い事の影響へ有意なパスが示された。また,習い事の影響から問題行動へ直接的なネガティブなパスと,自己制御機能と向社会性を媒介する間接的なパスが示された。保護者が体操の習い事の影響をポジティブに感じているほど,幼児の問題行動の抑制に繋がっていることが明らかになった。
 家庭で体操に携わる時間から問題行動へ有意なポジティブなパスが示された。家庭で体操の練習をすることが落ち着きのなさや攻撃性に繋がる可能性があることを示した。Figure 1について,男女による多母集団同時分析を行ったところ,女子においてのみこの影響が見られることを示した。