日本教育心理学会第61回総会

講演情報

ポスター発表

[PF] ポスター発表 PF(01-67)

2019年9月15日(日) 16:00 〜 18:00 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号16:00~17:00
偶数番号17:00~18:00

[PF13] 保育者研修におけるマイクロティーチングの研究Ⅲ

保育者役の有効性の認識と効果の持続性について

金子功一1, 金子智栄子2, 植草一世#3 (1.植草学園大学, 2.文京学院大学, 3.植草学園短期大学)

キーワード:保育者研修、マイクロティーチング、有効性

問題と目的
 マイクロティーチング (MT) は,詳細な指導案を作成し,短時間に少人数を指導する実習教育であり,保育技術の育成に最も効果的であることが保育科学生を対象に実証されている (金子智栄子, 2013)。しかし,現職保育者ではその有効性が充分に検証されているとはいえない。そこで,幼稚園での園内研修において現職保育者を対象にMTを実施し,観察者の行動評定、ビデオによる行動分析により検証したところ,保育者役 (T) の保育技術が向上し,子ども役 (C) ものびのびと活動を発展させていったことが分かった (研究ⅠⅡ: 教心総会,2018)。そこで本研究Ⅲでは,Tの認識を基に有効性を検証する。また,2か月後のMT効果についても検討する。
方  法
参加者:千葉県内の私立幼稚園の教員9名,内訳は観察者2名 (副園長),Tは担任1名 (経験年数2年) と補助1名 (3年) の計2名,Cは5名 (保育者歴10年~15年)。
指導内容: 3歳児対象で,活動内容は「忍たま音頭を踊る」で,ねらいは「円になる動きを知りながら,みんなで盆踊りと夕涼み会を楽しむ」である。
研修日時:2017年7月20日午前中約2時間
研修手順:1) MT 1回目: (1) 実践 (25分):観察者はチェックリストにてTとCを行動評定。(2) 検討会 (30分):TとCのコメントをもとに観察者が内省を深める。必要に応じてビデオを再生し確認し,Tは反省点を明確にして,2回目の実践で修正する。2) MT 2回目:研修手順はMT1回目と同様。
測定尺度:1) MTの有効性: 実習未経験者用簡易型MT有効性測定尺度 (金子, 2017) の5下位尺度 <保育者としての自覚と指導技術,学習状態の認識と学習意欲,指導の難しさ,幼児理解,指導案の書き方>の20項目を用いた (4段階評定)。2) 保育者の力量: 金子 (2013) が保育者の力量形成を精査し,現代的視点から構成した6分類 <態度, 技能, 技能向上, 協働的関係, 連携, 視野の拡大> の20項目を用いた (4段階評定)。
結果と考察
 MTの有効性と保育者の力量形成について,以下に,Tが「4. 身についた」と評定した結果を示す。
1) MTの有効性
 MTの有効性において,教育技術 (保育技術,指導の流れへの理解,不参加時などへの対処,ポイントの置き方等) は5項目,学習状態のメタ認知 (保育者の資質, 保育技術, 学習知識) は3項目,学習意欲 (自己学習, 研修への意欲, 自己課題の発見) は3項目,幼児理解 (個人差の理解,子どもの発想の豊かさ) は2項目,その他 (実地指導の難しさ,形式にそった書き方等) は3項目,計16項目であった。このことからMTは,Tの幼児理解を深めて,教育技術を高め,学習意欲を向上させることが示された。
2) 保育者の力量形成
 MT実施後の保育者の力量においては,<技能>では集団把握,<技能向上>では保育の模索,<視野の拡大と深化>では保育の課題への関心,を向上させることがわかった。
3) MT実施2か月後の効果
 MTの長期的な効果を把握するため,2か月後にMT実施後の効果をTに記述してもらった。その結果,記述の内容から,(1)子どもの心情が理解できたこと,(2)特別なニーズのある子どもに限らず,全ての子どもに関わることの重要性に気づくことができたと考えられる。
 観察者の記述としては,Tは自信がついたことで,保育を楽しくのびのびとできるようになった。また,気になる子どもに対して保育者同士が連携しながら組織的に対応できていたという記述もあった。
 MTを実施することは,普段の保育における意欲や保育者間の連携も高める可能性が示された。