日本教育心理学会第61回総会

Presentation information

ポスター発表

[PF] ポスター発表 PF(01-67)

Sun. Sep 15, 2019 4:00 PM - 6:00 PM 3号館 1階 (カフェテリア)

在席責任時間
奇数番号16:00~17:00
偶数番号17:00~18:00

[PF14] 社会的に共有された学習調整の視点提示が授業実践型相互教授による算数グループ学習に及ぼす効果(1)

SSRL方略活用に対する自己効力感への効果

町岳 (静岡大学)

Keywords:社会的に共有された学習調整、授業実践型相互教授、算数グループ学習

問題と目的
 グループ学習において,質の高い相互作用を生み出すための教授方略の1つに,授業実践型相互教授(Reciprocal Teaching in the Classroom; 以下RTC; 町, 2015)がある。RTCは役割付与や話し合いの手順の提示により,学習に関連した深い発話が多く生み出すが(町・中谷, 2014),主体的な学び合いを更に促すためには,子供達が学びのゴールを共有し,自分達で学習を調整し合って進めていく力を高めることが必要である。近年の自己調整学習研究では,学び合いのプロセスを集団として調整する力として,社会的に共有された学習の調整(Socially Shared Regulation of Learning;以下SSRL)が注目されている(伊藤, 2015)。本研究の目的は,RTCにSSRLに基づいた学習調整の視点提示を組み合わせた教授方略の効果を検討することである。
方  法
対象と時期 都内公立小学校3年生A学級22名,B学級18名の計40名の児童を対象に,2018年10月に実施した。A学級をRTCにSSRLに基づいた学習調整の視点を提示する介入群,B学級をRTCのみの対照群とし,両群への学習効果を比較するとともに,実践後の対照群に対するフォローとして,学習調整の視点を提示する指導を行なった。
授業デザイン 3年生の算数「小数」(12時間扱い)の単元で,約15分間の集団検討場面でグループ学習を5回取り入れた。1回目のグループ学習は,RTCの枠組みによらない自由な話し合いによるものとし,第2回のグループ学習に入る前に,両群にRTCの枠組みに基づいた話し合い方の仕方を教示した。そしてその上で,第2〜5回でRTCによるグループ学習を取り入れた授業を行った。
介入群のSSRL教示 介入群では,第2回のグループ学習に入る前の教示の際に,それらに加え,SSRLに基づく学習調整の視点を提示した。具体的には,グループの学び合いを成功させるために自分のできることを,「協力」,「聞き方」,「笑顔」,「質問」,「教え方」のキーワードから考えて,自分の学び合いを振り返る視点とした。さらにグループ学習後に,振り返りカードを使って,自分たちの学習を振り返らせることとした。
SSRL方略活用に対する自己効力感の測定 SSRLの方略活用に対する自己効力感への効果を測定するために,上記のSSRLの視点に対応する「協力」,「視点取得」,「配慮行動」,「援助要請」,「援助提供」の自己効力感5因子(各3項目)からなる質問紙を作成した。5件法で,実践前後(第1・5回の授業後)の2回調査を実施し,各3項目の合計値を,それぞれの得点として採用した。
結果と考察
 SSRL方略活用に対する自己効力感5因子のα係数は,それぞれ= .79, = .76,= .82, = .85, = .89であり,十分な内的整合性が得られた。各因子得点を従属変数に,群(介入・対照)×測定時期(実践前後)の2要因分散分析を行った。その結果,「協力」,「配慮行動」,「援助要請」,「援助提供」の4因子の交互作用が有意で,単純主効果の検定の結果,これら4因子については,介入群の実践後の得点が実践前から有意に上昇することと,実践後の介入群の得点が対照群と比べて有意に高いことが示された(Table 1)。この結果は,SSRLに基づいた振り返りの視点を,意図的に授業に組み入れることで,子供達が自分たちで学び合う力をつけていくことができる可能性を示している。