[PF15] 油彩画の印象評価に「タイトル」と鑑賞環境が与える影響
疑似展示空間を用いた実験的検討
Keywords:油彩画の印象、「タイトル」、鑑賞環境
油彩画の印象評価に影響を与える外的な要素に注目し,絵画の言語的な要素であるタイトルと,絵画周辺環境の要素である絵画の鑑賞環境の2つの間に相互的な作用はあるのかを明らかにするために,実際に環境を設定して絵画鑑賞をさせた。
方 法
実験参加者 美術経験のない者40名 (男性5名,女性35名,平均年齢20.5歳) が本実験に参加した。全員が過去に美術展や美術大会の作品出展経験がなく,半年以内に美術展にも行っていなかった。
実験デザイン タイトル要因 (タイトルあり/タイトルなし,参加者間要因) と環境要因 (適切環境/不適切環境,参加者内) の2要因であった。
材料 構図や色彩があまりに奇抜でない油彩画(具象画) 3点を準備し,それぞれに適したタイトルを単語1語でつけた(Figure 1)。評価は美術作品に関する「評価性」 (1~5) と「活動性」(6~10) の2つの次元に関する5項目ずつを用いた(Table 1)。
絵画鑑賞環境 「適切環境」では,絵画を高さ140cmのイーゼルに乗せて,観賞用ソファの前に設置した。部屋の照明は電球色で,BGMを流し,不要な事物は何も配置しなかった (Figure 2)。
一方「不適切環境」ではパイプ椅子を2脚並べ,その正面に高さ140 cmのイーゼルを配置して鑑賞用絵画を乗せた.絵画の背後には高さ約2 mの事務用の棚を設置し,その中が統一感のない状態になるよう,種々雑多な空き箱を雑然と並べた.照明は蛍光灯でBGMは流さなかった。
手続き それぞれの環境で実験参加者に5分間自由に絵画を鑑賞させた後10項目の印象評定を課した。一方の環境で試行が終了した後に,他方の環境に移動して同じ試行を繰り返した。
結果と考察
タイトルと環境要因を独立変数,「評価性」と「活動性」5項目ずつの平均値をそれぞれ従属変数として分散分析を行った結果,いずれの場合もタイトル要因の主効果のみが有意であり,環境要因の主効果および両要因の交互作用は有意ではなかった(検定結果は省略)。
どちらの因子においてもタイトルと鑑賞環境との間には相互的な関係は見いだされず,タイトル単独の強力な影響が観察された。これは,絵画を観る際には,周囲の環境にあまり視線を向けず,鑑賞中の大半は絵画を観ているからであろう。このことから,より直接的で鑑賞者の理解が促進される言語情報の方が周囲の環境という外部的情報に比べて絵画評価に大きな影響を与えると考えられる。
今後は,これらの要素を詳細に調べると同時に,厳密に統制された実験室的実験の結果と比較することで,絵画タイトルと鑑賞環境が評価行動に与える影響を明らかにすることができるであろう。
方 法
実験参加者 美術経験のない者40名 (男性5名,女性35名,平均年齢20.5歳) が本実験に参加した。全員が過去に美術展や美術大会の作品出展経験がなく,半年以内に美術展にも行っていなかった。
実験デザイン タイトル要因 (タイトルあり/タイトルなし,参加者間要因) と環境要因 (適切環境/不適切環境,参加者内) の2要因であった。
材料 構図や色彩があまりに奇抜でない油彩画(具象画) 3点を準備し,それぞれに適したタイトルを単語1語でつけた(Figure 1)。評価は美術作品に関する「評価性」 (1~5) と「活動性」(6~10) の2つの次元に関する5項目ずつを用いた(Table 1)。
絵画鑑賞環境 「適切環境」では,絵画を高さ140cmのイーゼルに乗せて,観賞用ソファの前に設置した。部屋の照明は電球色で,BGMを流し,不要な事物は何も配置しなかった (Figure 2)。
一方「不適切環境」ではパイプ椅子を2脚並べ,その正面に高さ140 cmのイーゼルを配置して鑑賞用絵画を乗せた.絵画の背後には高さ約2 mの事務用の棚を設置し,その中が統一感のない状態になるよう,種々雑多な空き箱を雑然と並べた.照明は蛍光灯でBGMは流さなかった。
手続き それぞれの環境で実験参加者に5分間自由に絵画を鑑賞させた後10項目の印象評定を課した。一方の環境で試行が終了した後に,他方の環境に移動して同じ試行を繰り返した。
結果と考察
タイトルと環境要因を独立変数,「評価性」と「活動性」5項目ずつの平均値をそれぞれ従属変数として分散分析を行った結果,いずれの場合もタイトル要因の主効果のみが有意であり,環境要因の主効果および両要因の交互作用は有意ではなかった(検定結果は省略)。
どちらの因子においてもタイトルと鑑賞環境との間には相互的な関係は見いだされず,タイトル単独の強力な影響が観察された。これは,絵画を観る際には,周囲の環境にあまり視線を向けず,鑑賞中の大半は絵画を観ているからであろう。このことから,より直接的で鑑賞者の理解が促進される言語情報の方が周囲の環境という外部的情報に比べて絵画評価に大きな影響を与えると考えられる。
今後は,これらの要素を詳細に調べると同時に,厳密に統制された実験室的実験の結果と比較することで,絵画タイトルと鑑賞環境が評価行動に与える影響を明らかにすることができるであろう。